ロードバイクのアイコンはドロップハンドルです。では、MTBのシンボルはなんでしょうか?
はい、サスペンションです。これはリアサスペンションないしショックスです。
未知なるサスペンション
もちろん、サスなしのオフロードバイクもあります。事実、ぼくはサスなしのMTBをながらくのりつづけました。
サスなしバイクの通称はだいたいこんなです。
- リアサスなし=ハードテイル
- フロントサスなし=リジッド
- リアもフロントもなし=フルリジッドハードテイル
うえのKONA HONZOは3つ目のフルリジッドハードテイルです。サスペンションはありません。機材側のクッションはタイヤのみです。あとは乗り手の負担です。
ライドを機材にたよれませんから、おのずとフィジカル・テクニックの飛躍的な向上を見込めます。反面、人機への負担はでっかくなります。
フレームは一年半でこのざまです。
そして、ぼくは毎度のように手や指にダメージを受けます。ウィリーやジャンプの練習もハードです。着地の衝撃が手首にもろに来る。リアルに腱鞘炎の不安がでてきました。
レバーをうかつにいじらない
で、ついにリアのショックス付きペンションのフレームを購入しました。
劇的な進化です。フロントフォークをサスペンションフォークにすれば、あこがれのフルサスMTBをわがものとできます。
しかし、この本格MTBの高級サスペンションはただの振動吸収装置じゃありません。フレームがレーシングモデルです。ショックスも相応のものです。
なにかいろんなレバーやダイヤルがあっちこっちにあります。
経験上、これをてきとうにグリグリすると、リカバリーに苦戦します。ああ、KSのやすいエアサスの思い出がよみがえる。
ミニベロの改造用に買って、うかつに空気バルブを触ってしまい、使用前からエアーを空っぽにしてしまいました。
これにこりて未知のアイテムをいじるときには予習を欠かしません。しかも、相手がもっともややこしいサスペンションだ。
しっかりYoutubeと公式と海外情報で情報をしいれました。ずぶのしろうとがはじめてのリアサスの設定にチャレンジします。
はじめてのリアサスの設定
このフレームはVitus Sommet CRX 2018です。Vitusはフランス発の自転車ブランドで、北アイルランドの自転車通販サイトChain Reaction Cyclesの専用レーベルです。
で、リアサスはフレームの付属品です。一方のフロントのサスペンションフォークは別売りの単品パーツです。フレームセットには入りません。
良いショックスが手に入った
Sommet CRXはENDUROモデルのレーシンググレードです。このリアサスペンションはRockshox社のSuper Deluxe RC3です。4-5万の高級サスです。
スプリングは空気式です。RockShoxのじまんの”DebonAir”です。下位に”Solo Air”てものがあります。
より激しいジャンルのDHやFRのリアサスはエア+コイルです。車体もさらにいかつくごつくなります。
こういうバイクはシーンを選びます。でっかいピックアップトラックの荷台やゴンドラに積んで、山の上まで行って、だーって降りる・・・て遊び方が正統派です。自走や登りには向きません。
このSuper Deluxeはジャンル的には下り系のモデル用のサスペンションです。ショックスのピストンのところに数値があります。
外筒の325psiはこの空気タンクの限界空気圧です。もちろん、これは耐久の目安です。限界いっぱいまでパツパツにはしません。
中筒の%値は沈みこみのストロークの目印です。後述のサグ出しにやくだちます。
下のところの”62.5mm”は限界ストローク値です。サスはここまで動きます。
この限界ストローク値とサスのながさでおおよその車体の傾向が知れます。ゆるいクロスカントリーやトレイルはみじかめ、はげしいDHやFRはながめです。
ちなみに前段のKONA HONZOはトレイル用です。クロカン、トレイルにはフルサスとハードテイルが混在します。フルリジッドフォークはぼくのこのみです。
VITUS SOMMETはAM/ENDUROタイプです。万能型のモデルです。が、2018モデルはオフロードのレーシングシーンのトレンドを汲んで、下り系に近づきます。
で、このRockshoxのサスや車体の後部も必然的に下り系に寄ります。すてきないかつさです。
コンプレッションとリバウンド
ところで、フルサスMTBを組み立てるに至って、ようやくこのなぞのシステムのことを本格的に調べ始めます。やはり、尻に火がつかないと、勉強がはかどりません、ははは。
サスペンションの最初の難点は専門用具のおおさです。未知の単語があとからあとから出てきます。DUとレデューサーしか分からん。
自転車のサスの三大用語です。
- コンプレッション
- リバウンド
- サグ
これはかくじつにテストに出ます。ホイールのリム、スポーク、ニップルのようなメジャー用語です。
コンプレッションは衝撃を和らげるシステムです。動作的にはサスペンションの沈み、縮みです。コンプレッション調整=衝撃緩和、沈み込み(速度の)調整です。
リバウンドは沈んで縮んだサスペンションをもとに戻すシステムです。動作的にはサスペンションの伸びです。これは語調からなんとなく分かります。
て、ここではじめて気づきます。コンプレッション=沈み込みとリバウンド=元戻しは別系統の機構です。一個のバネや空気管が沈んで伸びるてゆう単純なシステムじゃない!
これはやっすいクロスバイクのやっすいばねばねコイルサスです。
左の筒と右の筒のスプリングとアダプターの形状がびみょうにちがいます。こんな安いサスフォークさえがコンプレッションとリバウンドの二系統の機構を持ちます。
しろうと考えではサス=バネです。びよんびよん。縮みも伸びも一緒くただ。ほんとのサスペンションはそうじゃない。縮みと伸び、コンプレッションとリバウンドは別物です。
このことが分かって、コンプレッションとリバウンドの区別がすっきりしました。そして、クロスバイクのサスをてきとうにバラした手間が報われました。記録写真はむだになりませんねえ。
サグをさぐる
おつぎがサグです。MTB乗りは最初にサグをさぐります。言葉遊びではありません。サグ出しはだいじなセッティングです。
で、この『サグ』てのは『へんな負荷をかけずにナチュラルに自転車に乗ったときのサスペンションの沈み込みの量』です。%やcmであらわされます。
最近のサスにはインジケーターが付きます。さっきのRockshoxのピストンの部分を振り返りましょう。
20-40%の記載があります。DebonAirサスのメーカー推奨は30%±5%です。62.5*0.3=18.75mmです。
サグの探り方はかんたんです。最初にOリングを中筒の上部にするって配置します。あかいのがそうです。
ところで、このSuper Deluxeにはコンプレッションのモードチェンジシステムがあります。
ちっこいタンクの上にレバーがあります。モードはFIRM、MID、MINの3つです。
“MIN”でサス機能をフルに使えます。下りやジャンプやトリックではレバーをここに入れます。
反対側の”FIRM”にレバーを切り替えると、サス機能を疑似的にカットできます。ぞくにロックアウトです。上り、フラットな場面で使います。
MIDはその中間です。トレイルやグラベルに。やっっっすい廉価サスにはこんな機能はありません。
このやっっっっっすいエアサス風の中身はエラストマーです。ゴムサス。パシフィックサイクルのサス付きミニベロのリアにはもれなくこれが付きます。
で、サグの調整にはロックアウトを解放して、コンプレッション機能をフルにします。このSuper DeluxeではレバーをMINにします。
で、今度こそフラットなところでナチュラルに乗ります。
Oリングがここまで下がります。出荷状態のサスで23%のサグが出ました。DabonAirサスのRockshoxの推奨が30%です。このサスの空気圧はぼくの体重にはやや高めです。
サグを増やすにはショックスを柔らかくします。エアを抜く。バルブは米式です。中ピンを押すと、空気を解放できます。
適正値が出ました・・・うそです。手でリングを下げました。なぜなら、手元にサスペンション用のメーター付きの空気入れがありません。
フロントフォークの入手が急務
そもそも正確なサグ出しにはフロントとリアのサスペンションのバランスが必須です。このセミサスバイクでは理想的な調整は不可です。
とりあえず、サグの出し方とかんたんな設定方法のおさらいはOKです。コンプレッションとリバウンドが別物だって肌で理解できたのが収穫でしたね。
こんなふうにものの仕組みを手探りでちょっとずつものにできるのは大人の趣味のだいごみでありましょう。