ノリモノはハキモノに相通じます。ママチャリやシティサイクルは日ごろの足、サンダルやツッカケのようなものです。
かたや、ロードバイクやマウンテンバイクは本質的にはスポーツ用品です。競技用のシューズ。それぞれに用途や得意分野があります。
空気圧は靴ひも
サッカー、野球、マラソン、テニスなどの前には専用のシューズを履いて、靴紐を結びます。きつすぎ、ゆるすぎは禁物です。おしゃれもスポーツも足元からです。
靴のかかとをガシガシ踏んで、靴紐をぴろぴろにひるがえしながら、まともにスポーツできましょうか?
ロードバイクやMTBの靴に当たるのがタイヤ、靴紐に当たるのが空気圧です。
『空気圧=靴ひも』と認識すれば、毎度毎度のタイヤチェック&空気入れを不自然に思わなくなります。
ロードバイクの空気の入れ方
自転車の空気入れの口金=バルブの形状は3種類です。英式、仏式、米式です。
一般的なママチャリや軽快車のバルブは英式です。おおむね英式=非スポーツバイク、仏式=スポーツバイクの公式が成立します。
例外的に長期旅行用のツーリングバイクの一部は米式です。オートバイやクルマのバルブが米式です。
ガソリンスタンドのエアコンプレッサーが米式です。旅先の緊急時には米式が有用です。
日本の伝統的自転車競技の競輪のタイヤのバルブは特殊英式です。競輪の機材は特殊です。一般のスポーツバイクユーザーには無縁の代物です。
で、スタンダードなスポーツバイクのロードバイクの空気の入れ方は仏式バルブの取り扱いの仕方となります。
しかし、世間一般ではこのフレンチタイプがマイナーです。ママチャリの英式、自動車の米式の方がちまたではメジャーです。自転車以外の場面では仏式バルブは見当たりません。
スポーツバイクの取り扱いが習慣化すると、身近な英式や米式の取り扱いがおっくうになります。
仏式バルブ用空気入れを用意する
仏式バルブはスポーツバイク界ではメジャーですが、世間一般ではマイナーです。市販の家庭用の空気入れや駐輪場のコンプレッサーはだいたい英式/米式です。
家庭用空気入れは仏式バルブには対応しません。ママチャリ、軽快車、オートバイ、自動車用です。
一応、仏式アダプターで空気を入れられますが、高圧まで上げるのに一苦労します。ポンプヘッドのソケットの固定力が足りません。
すなおにスポーツバイク用のフロアポンプを買いましょう。3000円で米英仏兼用の空気圧メーター付きの空気入れをゲットできます。
空気圧の見方と推奨値
空気入れのメーターです。2つの数字が見えます。
上の画像で0-200がpsi、0-14がbarです。psiがアメリカ系、barが欧州系の空気圧の単位です。1bar=14.5psi、100psi=6.89barです。
推奨空気圧はタイヤのサイドや商品のパッケージに記載されます。
ジャンル別の空気圧の目安です。
- ロードバイク 6-8bar
- クロスバイク 5-6bar
- オールロード 3-6bar
- ママチャリ 3-4bar
- MTB 1-3bar
- ファットバイク 0.5-1bar
が、これはあくまで目安です。推奨空気圧は車種に寄らず、タイヤに依存します。→自転車のタイヤの空気圧 ママチャリ ロード MTBなどの車種は無関係
ふつうのロードバイクの基準値は7barです。軽い人はここから減らして、重い人は増やします。体重+服装=70kg=7bar、60kg=6barです、ざっくりと。
チューブレスはより低圧です。
バルブを上にする
以上の要点をふまえて、ようやく作業に入れます。ホイールを回転させて、バルブの位置を上にします。
なぜか? 屈むのは億劫です。屈んで立ち上がるのはさらに億劫です。
あと、下バルブで空気を入れると、シーラント(タイヤの気密性アップ、パンク防止の液体)の逆流や粘着を起こしかねません。
「空気入れには上バルブ!」をおまじないにしましょう。
キャップを外して、ねじをゆるめる
市販のタイヤやチューブのバルブのヘッドにはプラスチックのキャップが付きます。パーツの破損、携行時のチューブひっかき、ライダーやメカニックのケガの予防のためです。
むきだしのヘッドはまあまあの鋭さです。
で、ヘッドを左回しでゆるませて、バルブを解放します。
うらはらにヘッドをゆるめないと、バルブを解放できませんから、どんなにポンプをシュコシュコしても、空気をなかに送り込めません。
で、この状態で中ピンを押さえると、「ぷしゅー!」と空気を抜けます。
高圧のロードタイヤは数秒で抜け切ります。微調整に長押しは禁物です。マウスの1クリックのタイミングで-0.1barくらいですね。
たまに空気を抜いて、タイヤやホイールをいたわりましょう。
ポンプヘッドチェック
スポーツバイク用のポンプヘッドです。
これがフリーの状態です。右の銀色のレバーがロックです。
ポンプヘッドのなかにはパッキンがあります。ここにバルブヘッドがズボッとはまります。
これは別の携帯ポンプのヘッドの中身です。
このパッキンが痛むと、固定が弱くなって、空気もれが起こります。ポンプの使い勝手に違和感を覚えたら、ここをチェックしましょう。
ポンプヘッドをロックする
フリーのポンプヘッドとフリーのバルブヘッドをドッキングさせます。このとき、どっちかがロック状態であれば、合体は成功しません。
とくにロックしたポンプヘッドをバルブヘッドにむりやりタイトにねじこむと、パッキンを一気に痛めてしまいます。
このポンプヘッドのパッキンは黄信号ですね。
ちなみにポンプヘッドのレバーのフリー/ロックはまちまちです。うちの二台は共にレバー折り畳み=フリーです。家庭用の足踏み式空気入れのヘッドのロックは逆でした。
で、フリーとフリーをランデブーさせて、ポンプヘッドのレバーを起こして、がっちりロックオンします。
この固定力こそがふつうの安い空気入れとまともな高圧フロアポンプの決定的な差です。
シュコシュコする
この下準備を工程を経て、ついにシュコシュコできます。ばくぜんとしたイメージのなかの『空気入れ』は手順の終盤のほんの一場面にすぎません。
ロードバイクのタイヤの推奨空気圧は高圧ですが、エアーの内容量はささいなものです。一回のピストンでメーターがどんと上がります。
5barごろからピストンがあからさまに固くなります。体重をしっかりかけて、シュコシュコしましょう。十数回で細タイヤはパンパンになります。
オフロード系の太いタイヤの推奨値は低圧ですが、空気の容量がべらぼうです。1barまで上げるのがたいへんです。
ポンプヘッドを外す
めあての空気圧までシュコシュコしたら、ポンプヘッドを外します。やはり、ここで手順をまちがい、気を抜くと、バルブやパッキンや指を痛めてしまいます。
正しい手順です。
- レバーをフリーにする
- ポンプヘッドにバルブ側から親指を当てる
- ポンプヘッドを親指で押す
いくつかのポイントがあります。1の工程では指をレバーに挟まないようにしましょう。レバーはわりと勢いよく「バツッ!」て戻ります。
ぼくは何度かこれをやって、人差し指の第一関節をたびたび打撲しました。最初、この痛みの理由が分からなかった。なんで空気入れのたびにこんなに指が痛くなるぅ? て。
こんな指の配置は最悪です。
また、パッキンや固定が弱くなると、ロック開放のとたんにポンプヘッドが「バシュッ!!」と内圧でふきとびます。
2、3はひとつのポイントに集約されます。指や手が内圧ジェットアタックに巻き込まれます。
空気入れ初心者はこれに気付かず、硬い金属レバーに指を挟んで「ぎゃっ!」となり、ポンプヘッドのアタックを受けて「げはっ!」となります。まさにぼくがそうでした。
親指で押して外せば、不用意なダメージを回避できます。
最後にバルブヘッドを締めて、キャップを付けます。
以上がロードバイクの空気入れの一連の流れです。