走行中のチェーン落ちは自転車乗りの通過儀礼です。このトラブルはロードやMTBに限りません。チャリンコ全般で日常的に起こります。
むしろ、野ざらしノーメンテのママチャリはチェーン落ちの常習犯です。だるだるのチャリで通学中にチェーン落ちをやらかすと、一限目にもれなく遅刻します。
これを回避できるはブリジストンアルベルトみたいなベルトドライブやシャフトドライブばかりです。
チェーン落ちの種類
チェーン落ち、チェーン外れは主に4項目です。フロントの外or内、リアの外or内です。
フロントはクランクのチェーンリングの上で起こり、リアはスプロケットカセットのコグの上で生じます。
番外的にまれに起こるのがディレイラーのプーリーからのチェーン外れです。これの頻度は多くありません。
主犯は変速範囲のリミットオーバー
自転車の外装変速システムはアナログなものです。メカのバネのテンションを張ったり緩めたりして、チェーンを意図的にderail=脱輪させます。
凶悪なリア x 内のチェーン落ち
リア内のチェーン落ちはやっかいです。カセットとハブの隙間にチェーンが挟まると、ちょっとやそっとで抜けません。最悪、スプロケ外しの作業が必要になります。
一度、ぼくは出先でこれをやってしまって、えらい目にあいました。カセットとハブがチェーンを完全に噛むと、リアホイールが空回りしなくなります。
結局、担いで家まで5kmをてけてけ歩きました。
絶対にトラブりたくなければ、あえてローのリミットを狭くして、大内のギアを使わないという手があります。
ぼくは上述の悲劇に懲りて、ロー側のリミットをやや甘めに設定します。
忘れたころのリア x 外
リア外のチェーン落ちは比較的にフレンドリーです。クイックリリースやスルーアクスルを外せば、出先で対処できます。
これの原因もアジャスタボルトの調整不足です。トップ側のリミットを調整しましょう。
ほんとの原因は調整過多?
このようにチェーン落ちの原因はアジャスタボルト、ディレイラーの調整不足です。いや、実際のところは調整過多でしょう。
アジャスタボトル、アーム調整ボトルの正しい関係性はなかなか頭に入りません。
「どっちがトップで、どっちがローだっけ? (ぐりぐり)」
「右回しで外寄せ? いや、内寄せ? (ぐりぐり)」
こんなふうに無意識のぐりぐりが後を絶ちません。なぜかシロートは調べる前に回しちゃいます。
固定ねじのように「ぐりぐり」すると、一発で台無しにしちゃいます。回しすぎ。調整の最小単位は「ぐり」、いや、「ぐr」くらいです。
ハンガーやガイドやリングのゆがみ
メカの上限と下限がきちっと枠内に収まれば、ディレイラーはその範囲でしか動かず、チェーンは道を踏み外しません。
アジャスタの範囲はガードレール、インデックスは車道の車線のようなものです。ガイドプーリーは手旗信号のおまわりさんだ。
でも、道路自体がなにかのトラブルで湾曲・陥没・損壊すると、ガードレールも車線も自動車もめちゃくちゃになります。基礎がへたれば、建屋がゆがみます。
土台のガイド、ハンガー、リングの不具合はしばしばチェーン落ちの原因になります。ことさらにディレイラーハンガーとメカのケージの曲がりはちょくちょく発生します。
基本的にハンガーの強度はフレームよりしょぼくなります。最悪、ここがへにょっと変形・破損して、フレームエンドへのダメージを防ぎます。
ですから、ハンガーはわざわざ別付のパーツです。剛性の点ではソリッドに溶接するほうが有利です。それをしないのはフレーム保護のためです。
土台のハンガーが変形すると、付属のメカは正しい位置を保てません。上限下限がずれれば、チェーン落ちが起こります。対策は力技のハンガー戻しか、交換です。
王道のフロントのチェーン落ち
うちのバイクはフロントシングルですから、リアのトラブルが先になってしまいました。が、ちまたのチェーン落ちの大半はフロントのものです。
これの原因はリアと同様です。メカの上限下限の調整不足ないし調整過多です。フロントディレイラーの水先案内ガイドは金属プレートになります。ぞくにフロントメカの「ハネ」です。まんまのガードレールです。
2xや3xの禁止事項のひとつがチェーンのたすき掛けです。アウター x ローやインナー x トップみたいにチェーンが極端に斜めになる掛け方はNGです。
変速のアップダウンでチェーンのテンションが激変して、トルクのポイントから斜めにかっとびます。ガードレールの金属プレートがこれを抑えきれなければ、チェーンは崖下=アーム側orBB側へと脱落します。
上り坂で立ちこぎしながら変速すると、「がギャギャン!!」て異常な異音と嫌な手ごたえを感じましょう。チェーンにはそのような強い負荷がかかります。弦の弓のようなものです。リンクがギアの歯から外れると、チェーンが落ちます。
フロントのチェーン落ちの直し方
チェーン落ちの直し方をさらっと紹介しましょう。フロント版です。チェーンが走行中にぱーんと外れました。あちゃー!
あたりを見回す
そそくさと手を付ける前にあたりを見回しましょう。なにがしかの紙切れ、ふくろ、ぼろ布的なものは突然のトラブルですごく役立ちます。
はい、ガムテが見つかりました。
どろどろのオイルで手を汚すと、マッハでモチベを削がれます。あげくにグリップ、バーテープが汚れます。さわやかなサイクリングがおじゃんです。
そこらの道端のゴミは不衛生ですけども、でろでろのチェーンより清潔でクリーンです。拾うことを恐れない。そのゴミをきちんとごみ箱に捨てれば、エコロジーさえ実現できます。あめいじんぐ!
完全主義者は軍手や薄手のビニル手袋、ちっさいラジオペンチをツールボックスやフレームバッグに忍ばせましょう。
ディレイラーのガイドを出す
こんなふうにチェーンが外れると、リアディレイラーは付属バネの力でヤドカリみたいに縮こまります。掛けなおすときにはこれを引っ張り出します。
SRAMのケージにはべんりなロックボタンがあります。ガイドを伸ばして、これを押すと、ケージを固定できます。
SHIMANO系のメカはこうなりません。ガイドを押しながらチェーンを掛けなおします。ぼろ布的なものを二個に分けて、汚れを回避しましょう。
チェーンを掛けて、クランクを回す
チェーンをリングに掛けて、クランクを回します、回転方向にそっと。逆回転や乱暴回転はNGです。純回転でそっとやさしくチェーンをリングに乗せます。
トラブルが続くなら、メンテが必要です。メカ、ハンガー、チェーンの順に疑いましょう。フロント落ちの最後の切り札はキャッチャーです。