一般的な自転車のサイズ表記は『インチ』です。官民ともにメートル法を採用する日本ではマイナーな単位です。1inch=2.54cm=0.85寸です。
このインチのサイズ表記は自転車のどの部分の寸法でしょう?
はい、タイヤのサイズです。26インチの自転車=26インチタイヤの自転車です。
車体、フレームのサイズはこうではありません。スポーツバイクではinchやcmが併用されますし、一般車では単純にS、M、Lが使われます。
安価なものは1サイズです。26インチがS、27インチがM、28インチがLです。サイズはホイール依存になります。
そして、スポーツバイクや本格自転車のタイヤのサイズ表記には第三の単位が出現します。アルファベットのABCです。
表記の不統一はだいたい英仏の仕業
自転車の誕生は19世紀の欧州です。草創期からイギリスとフランスが母国の座を競って、主導権争いを繰り広げます。
長さや重さの単位さえが例外ではありません。インチとポンド vs メートルとグラムです。多勢は決しますが、超大国のアメリカがヤードポンド法をこよなく愛好します。
英式と米式と仏式
自転車のインチ表記は英国由来のものです。三番目の自転車の母国のアメリカもこれに準じます。マウンテンバイクの表記はインチ系です。26とか27.5とか29とか。
しかしながら、単位の宿命で『おなじ26inchが米と英でちょっと違う』という怪奇現象は日常茶飯事です。
タイヤ幅込み表記の小数点の26×1.5は米系MTB表記、分数の26 x 1 3/8は英系実用車表記です。別物です。
HE、WOみたいな用語がからむと、事態がさらに複雑化します。
で、700Cはフランス系の表記です。三桁数字の700が分類甲で、アルファベット一文字のCが分類乙です。
C < B < Aの順に外径が大きくなります。つまり、700Cは700系ホイールの最小です。
で、分類乙の700の一個下のサイズは699でなく、650になります。650Cが26インチ、650Bが27.5インチです。
650Cの26インチはマウンテンバイクの26インチとは別物です。
そして、650Bの27.5インチのホイールはマウンテンバイクの27.5インチと一致しますが、ママチャリの27インチより小ぶりです。
さらに「メートル法のフランス式表記の700はホイールの大枠のサイズかタイヤの外径だよなあ。700mmかな?」という当然の予想も裏切られます。
700Cのホイールの実測もタイヤの実寸は700mmでありません。リムの大きさは622mmで、タイヤサイズは・・・タイヤサイズによります。
はい、もう訳が分かりません。英米仏のせいです。清きジャパニーズは明日から尺貫法を使いましょう。壱尺は参十糎なり~。
27インチや700cはジャンルや商品名
自転車のサイズ表記は実際の正味のサイズを表しません。『26インチ』や『700C』は大まかな由来やジャンルや商品名でしかない。ただの記号です。
青信号はげんみつには緑信号です。100円ショップの実態は110円ショップです。たまに200円、300円の商品があるし。もうふつうの雑貨屋じゃないか!
有効なサイズ表記はインチやCではありません。ETRTOです。700CのETRTOは622です。この622はリムの有効サイズの622mmをきちんと表します。
互換はない
ママチャリやシティサイクルのサイズ表記は26インチや27インチ、英式実用車系です。この表記=ジャンルのタイヤはスポーツ用ではありません。
ロードバイクやクロスバイクのサイズ表記は700Cや650C、仏式スポーツバイク系です。このジャンルのタイヤはバラエティに富みます。高速型、耐久型などなどです。
各々のホイールの大きさが別物ですから、一方のタイヤはもう一方のリムに付きません。互換性はない。
が、自転車はアメイジングなアナログ・ノリモノです。なにかの拍子に別ジャンルの現物合わせのMIXちゃんぽんクロスオーバーが成功することはしばしばあります。
これは29インチMTBホイールに700Cロードタイヤの組み合わせです。
しかし、むりやりちゃんぽんは本来の用途と互換性からかけ離れます。100%の機能や性能は出ません。でも、90%くらいはふつうに出ます。自転車のおもしろいところです。
ママチャリタイヤは日用品
ママチャリ、実用自転車のタイヤには高速モデル、高性能タイプはありません。タイヤメーカーはここにトップモデルを投入しない。
実用系のタイヤの市販品は補修用か高耐久タイプに限られます。軽量高速タイプはありません。
タイヤ交換だけで実用車の高速軽量化はむりゲーです。ホイール交換が必須です。手軽なカスタムは夢のまた夢です。
まあ、本能に従い、ばかばかしさを極めて、コストを度外視しつつ、世間の目を超越すれば、こんなことをたやすくできます。