オンロードバイクのブレーキの主流はリムブレーキのキャリパーブレーキ、オフロードバイクのブレーキはそれはハブブレーキのディスクブレーキです。
昨今、スポーツバイク全般のディスクブレーキ化が急速に進みます。
そんなトレンドの移り変わりのまっただなかに新手がぽつんと生まれました。ダイレクトマウントブレーキです。
最終形態ダイレクトマウント
古典的なロードバイクやシティサイクルやママチャリの前輪はキャリパーブレーキです。
キャリパー以前の一般車のブレーキはロッドブレーキです。スチールのワイヤーでなく鉄のシャフトでブレーキシューを動かします。
効きは最悪です。レバーの重さが握力グリップ並みです。シャフトの可動の手応えは『ぎょりぎょり!』て無骨なものです。ビールを積んで坂を下るのはドキドキものです。
で、これからシングルピボットのキャリパーを経て、現行のダブルピボットのキャリパーブレーキに至ります。
アームの軸が二つ、留め金が一つです。フォークやフレームのセンターホールにはめて使います。
穴なしのフレームにはテキトーに金具をかませて、むりくり固定します。はたまた、ドリルで穴をうがつか。
はい、男気の一点どめです。この穴にはねじ山がありません。裏のナットがカギです。このちっこい縁の下の黒子がいなければ、キャリパーブレーキの固定はままなりません。
一見に固定力が不安になりますが、キャリパーブレーキの搭載車は過酷な状況で使われません。横からの衝撃を度外視できます。
反対にオフロードバイクは転倒、落車、滑走、放り投げを日常的にこなします。最強リムブレーキのVブレーキが長らく愛用されました。
本格的なMTBは完全にディスクブレーキになりましたが、Vブレーキはクロスバイク、ミニベロ、折り畳み自転車で生き続けます。安価で丈夫で強力です。
左右のアームが別々、マウントが二つに増えます。挟んで止める機構がよく分かります。
キャリパーxVブレーキ
で、今日の主役のダイレクトマウントです。これはダブルピボットのキャリパーと二点止めのVブレーキのハイブリッドみたいなブレーキです。
大きな六角ボルトがアームから見えます。これが固定ネジです。単純な計算で固定力が一点止めの2倍になります。
そして、フレームやフォーク側の台座のホールにはねじ山があります。
縁の下のナットは不要です。ブレーキを車体に直に固定します。ゆえのダイレクトマウントブレーキです。
ピボット、クイックリリース、ワイヤー受けの機構はキャリパーブレーキを継承します。まさにリムブレーキの混血児です。
互換性は×
こんなふうにダイレクトマウントブレーキはキャリパーブレーキとVブレーキの特徴を受け継ぎます。リムブレーキ界の最新鋭ハイブリッドです。
しかし、規格は独自設計です。ほかのリムブレーキとの互換性はありません。Vブレーキ用の台座にポン付けで固定できたら、むだに遊べたのに~。
あ、このねじ山に入るアダプターを作れば行ける? アームの長さがちがうか? 中華サイトで探してみましょう。
国内では奇特な販売店がこんなアダプターを出します。ピストフレーム用のダイレクトマウントアダプターです。
エアロフレーム用のリムブレーキ
ダイレクトマウントブレーキの可否はフレームによります。メインはエアロロードです。
これのブレーキはダイレクトマウントです。フォークとフレームもダイレクトマウント専用です。そのほかのブレーキは付きません。
試乗の手応えは上々です。キャリパーブレーキよりかちっとして、きびきび効きます。ミニVブレーキのフィーリングによく似ます。
さらにVブレーキの一世代前のUブレーキにそっくりです。互換性のなさまで共通します、ははは。
ダイレクトマウントの利点
ダイレクトマウントの利点は剛性です。キャリパーよりコンパクトにしても、十分なブレーキ力を出せます。
で、小型化すれば、重量、空力のアドバンテージを得られます。フレームやフォークの影に隠せば、空気抵抗を下げられます。
そして、同じタッチでかちっと止まれます。しっかり止まれればこそ、速度を上げられます。スピード型のエアロロードにぴったりです。
そして、エアロロードは計量モデルやオールラウンダーより高剛性です。ステーやフォークがダイレクトマウントのブレーキ力に負けません。
ダイレクトマウントの欠点
ダイレクトマウントの欠点は盛りだくさんです。先のように互換性のなさがあります。そして、BB下、フォーク裏のマウントタイプのメンテナンス性はかんばしくありません。
TREK MADONEの純正のパカパカ窓ダイレクトマウントの整備性の悪さはとみに有名です。インテグレーテッドデザインの闇の部分です。
最大のネックはリムブレーキであることです。ブレーキ時にパッドがリムを挟みます。摩耗と疲労は確実に起こります。
この構造上の性質のためにリムブレーキ用のホイールのブレーキ面は高耐久に作られます。おのずと重量がかさみます。で、結果的にディスクホイール用のリムより重くなります。
一方、ハブの重さは逆転します。リムブレーキ用のハブのがぜんぜん軽量です。で、メーカーのカタログ値ではDBモデルがのきなみ重くなります。ディスクローターでさらに倍増だ。
4大完組ホイールメーカーはリムの単体の重量の公表には消極的です。てか、ハブやリムの単品売りが急速に廃れます。新リムをするのはマビックくらいですか。
はやりのカーボンクリンチャーホイールではリムブレーキの弱点がなおさらに表面化します。カーボンの弱点は熱と圧です。摩擦熱がリムの耐久度を超えれば、変形や破損が起こります。
そして、軽量なラテックスチューブにも高熱がNGです。軽量のロープロカーボンホイールとSOYOでヒルクライムしようなら、下りにヒヤヒヤしなければなりません。
ホイールやチューブを心配しながらこわごわブレーキする、ってのは本末転倒でしょう。しかも、ゆるい長時間のブレーキングはほとほと逆効果です。気遣いが裏目に出ます。
ダイレクトマウントはおすすめ?
純粋な機能は好感触です。ぼくはねっからのディスクブレーキ派ですけど、リムブレーキのロードを買えと言われれば、ダイレクトマウントブレーキを検討します。
ライトユーザーや自分でいじらない人には互換性のなさ、整備性の悪さが不安要素になりましょう。カボクリとラテックスとの相性の悪さは・・・慣れと覚悟でなんとかなる?
全般的にキャリパーとDBをつなぐ補完的製品の匂いがほんわりと漂います。ミニVブレーキがありますしね。
それでも、アカデミックなカンパニョーロとディスクブレーキ指向のSRAMからプロダクトが出ました。この期に3大メーカー揃い踏みです。
KCNC CB11を買ってみた
別の機会にダイレクトマウントブレーキをロードバイクを組みました。シマノを避け、カンパを外し、TEKTROで思い悩み、最終的にKCNCをチョイスします。
いかついCNCの超軽量のダイレクトマウントです。日本語のレビューは見当たりません。ブレーキパッドはSWISS STOPのアルミ用です。
まあ、一般人は普通にディスクロードを買いましょう。