リム、ハブ、ニップル、そして、スポーク・・・自転車のホイールの4大元素です。
高いホイール、安いホイール、じみなホイール、クールなホイール、いずれがこの部位からなります。
上級者向け?ホイール調整
ホイールを『手組』するときにはこの四つの個別のパーツを組み合わせます。パターンは無限大です。
対義語の『完組』はパッケージで出荷されます。フランスのマビック社などはタイヤさえをバンドルして、そのシステムないしスタイルを売ります。
2000年代初期までロードバイクのホイールはこの牧歌的な手組でしたが、メーカーの優秀な完組ホイールの大攻勢におしやられて、すっかりマイナーなアイテムに降格しました。
いまや自分でホイールを組める人は上級者やつわもののほまれを得ます。スポーク交換、振れ取りさえが雲の上のはなしです。
しかし、ホイールは生ものです。はでにぶっこわれなくとも、使用と経年で着実にへたります。定期健診の目安は1年です。
悪夢の小径ホイールBAN事件
ぼくはたいていのことをDIYしますが、この聖域にはやすやすと踏み込みません。少々の不具合には目をつぶります。趣味のチャリですし、マイペースですし。
そして、数年前の悪夢が勇み足をおしとどめます。ミニベロのホイールのスポークを何の気なしに間引きして、サドルによいしょとまたがったら、一切合切をバッラバラにしてしまいました。
これがなきミニベロホイールの形見の写真です。わっかタイプのぶんちんですね。
フロントホイールがぱん!と鳴る
このおそろしいXデーから幾星霜のある日の朝、ぼくは100円ローソンにあさごはんのおにぎりを買いに行って、店の前に自転車を停めました。
と、やにわに「パン!」て乾いた物音がフロントホイールのあたりから聞こえました。ぱっと見は変わりません。タイヤの空気はまんたんです。なにが鳴った?
で、おかいものを済ませて、すこし走り出して、前輪の異常に気づきます。タイヤがめちゃめちゃ振れて、リムがブレーキパッドにこすれる。
帰宅後にテンションをチェックします。一本だけがゆるゆるです。が、はためには破損が見当たりません。インナーニップルがどうかなったか?
ニップル、割れる
ところで、このホイールはカーボンチューブラーです。接着はリムセメントです。タイヤをべりべりはがさないと、内装ニップルにアプローチできません。めんどくささが加速します。
すずしい週末の朝を見計らって、糊付けチューブラーをばりばりします。TUの使い勝手はほんとに最悪です。
穴にフラッシュを焚きます。
あらー、闇の中にきれいなクラックがみえました。こんしんのスタプラのいかりの一撃でひびわれたDIOのような割れっぷりです。
で、スポークをぐらぐらさせると・・・
はい、スポークがすっぽぬけました。これがかの有名なヌポークです。さいわい超高級な500円/1本のDT AERO LITEの楕円スポークはぶじです。
で、インターナルニップルがリム内でカラカラします。リム穴にへばりついたセメントのふちにひっかかって、なかなか出てきません。
結局、タイヤを完全にとっぱらって、全方位ガラガラ抽選会をやって、やっと引きずり出せました。
たてにまっぷたつです。大切断かまき割りダイナミックのような割れ方です。形状は六角形の筒状ですね。ENVEかPillerのインナーニップルぽいです。
ENVE nippleで検索すると、”ENVE wheel nipple corrosion” 『ENVEホイールのニップルの腐食』て結果をごろごろ拝見できます。じゃあ、こっちだあ? バルブエクステンダーがENVEですし。
ニップルのひび割れ方は金属疲労のような腐食のようなふんいきです。素材は白サビからアルミっぽく見えます。て、ダメージはこの一個だけじゃないよ~。
中華のおまけとニップル回しで応急処置
が、見て見ぬふりを決め込んで、そのばしのぎの応急処置でごまかしましょう。くしくも中華カーボン二号が内蔵ニップルタイプです。
で、これの予備のスポークとニップルがホイールのおまけでついてきました。スポークの長さは合いませんが、ニップルはOKでしょう。
このおまけスポークのニップルは四角形です。ノギスの実測は3.28mmです。じゃあ、おそらく3.2mmのスクエアタイプのインナーニップルです。
これらをチェックして、ひっぺがしたタイヤを予備ホイールにセットして、自転車ショップへ向かいます。
はい、ウエパーでパークツールのインナーニップル回しを買いました。六角タイプとスクエアタイプの兼用です。
実測3.28mmのニップルは入るか?
OKでした。3.2mmがDTとWheel Smithで3.3mmがそれ以外のヨーロッパニップルです。PillarのやつはDTライクです。てか、OEMだあ? Pillar 1420とDT Aeroliteはくりそつですし。
ブレードスポークはねじれる
ブレードタイプ、きしめん型、タリアテッレ形状のひらべったいスポークは空気抵抗の軽減に効果的です・・・方向をまちがわなければ。
で、これを縦に取り付けても、抑えながら増し締めしないと、正しい向きをキープできません。スポークはかんたんにねじれます。
ぼくはネジザウルスでやっちゃいました。これはおすすめじゃありません。スポークが傷つきます。『ブレードスポークホルダー』て専門工具がちゃんとあります。
10分でやるホイールの振れ取り
今回の補修は一個のスポークニップルのみです。スポークテンションを元通りにすれば、そこそこ走れましょう。ほかのニップルの状態は一抹の不安ですけども、ははは。
今のところ、うちには振れ取り台がありません。ママチャリのフォークが目に留まりました。
ホイールの振れ取りはかんたんです。ホイールを回して、リムの振れを見て、ニップルを緩め&締めします。
横振れ、縦振れ
横にぐにゃぐにゃするのが横振れ、縦にでこぼこするのが縦振れです。「振れが出る」てのはリムがどちらかにかたよることです。
今回の症状はけんちょな横振れです。これの応急処置が目標です。制限時間は10分です。
しろうとの振れ取りにはゴール地点がありません。道具不足が拍車をかけます。目安をもうけないと、えんえんやるはめになります。じゃあ、時間でくぎるのがけんめいです。10分です。
振れ取りの基本はバランスです。一本だけにこだわっても、振れを取り切れません。1本+両隣のセットで調整します。
ニップルの締めとリムの寄り
動きはこうなります。
リムの内側視点のニップルの締めは左回りになります。うちのようなインターナルニップルタイプは反対の外側視点になりますが、ニップルのねじ方向は当然のごとくおんなじです。
で、1のニップルが赤方向にしまると、スポークが青方向にちぢんで、リムが黄色方向に寄ります。一回のしめは30度ずつぐらいです。ぐるぐるごりごりは禁物です。
スポークの張りやニップルの締め代には限度があります。そんなときには両隣の2や3をゆるめて、それぞれのテンションを下げます。おのずとリムは黄色方向によります。
局所的な横振れは10分で取れます。縦振れ・センター出しをするなら、+10分を許容できますが、応急処置ではかりかりに調整しきれません。とにかく、初心者は時間で区切りましょう。
で、調整不足のでこぼこホイールに乗って、あきらかな違和感をかんじれば、つぎのメンテでよけいに気を入れますし、ぜんぜん感じられなければ、そのまま乗り続けられます。
振れの影響を感じられない人がこまかな振れ取りするのは無意味です。
とはいえ、ぼくもそろそろ振れ取り台を買いますか~、MTBホイールのためにスルーアクスル対応のやつを。