国内のスポーツバイクの王座はクロスバイクです。販売店の売り上げ実績はつねにナンバー3に入ります。ライフ x スポーツの使えて走れるチャリンコです。
「ロードとMTBのハイブリッド!」というキャッチコピーは末弟のグラベル・オールロード系にうばわれましたが、元祖雑種亜流スポーツバイクはたくましく生き続けます。
なあ?
クロスバイクが根付いたわけ
クロスバイクは完全に日本の生活に根付きました。亜流・雑種的な中途半端さが国内の都心部のタイトな交通事情とマッチします。
また、日本の路面はすみずみまでアスファルトコーティングです。そして、イオンやコンビニやチャリ屋があちこちにある。
こんなスポットは無敵です。
本格レーサーやタフなオールロードに頼らずとも、クロスバイクや小径車でよゆうでロングライドできます。
で、ロードバイクです。これはドロップハンドルのレーシーなスポーティな中長距離用の自転車です。本質的にはスポーツ用品、競技用機材です。ライフ=日用品ではありません。
これが国内の自転車ブームのトレンドをながらく牽引しますが、スタミナ切れの気配がいよいよ顕在化します。自転車用語では「逃げが決まらなかった」です。
ロードレーサーが根付かなかったわけ
2019年11月に日本国内でさまざまな自転車イベントがありました。オールスターのさいたまクリテリウム、市民レースのツールド沖縄などです。
自転車業界の動向、いきおい、やる気を端的にあらわすのは展示会です。で、今回の2019年のサイクルモード幕張は例年より小規模化して、コンパクトになりました。撮影禁止看板やシマノブースの臭さが話題を独占しました。
ブース数、展示ブランド、客足、いずれが減少です。3月の万博のサイクルモードの目玉は試乗ですが、幕張の試乗コースはおまけみたいなものです。実質、展示会です。※2020年3月のサイクルモードはコロナで中止になりました。
開催がさいたまクリテリウムの直後になりますから、プロ選手や有名人のトークショーははなやかです。
でも、一見さんのライトユーザーはそんなに熱心に耳をかたむけません。アラシロ・ユキヤより団長安田の方がぜんぜんおなじみでしょう。てか、クロちゃんのがユキヤより・・・・
国内最大のサイクルモードの縮小は国内のスポーツバイクのいきおいの縮小です。スポーツバイクのいきおいの縮小はロードバイクのいきおいの縮小です。
はたして、ロードは日本に根付いたか? スポーツバイクは市民権を得たか?
メーカーはハイテク・電動推し
主要な自転車関連メーカーやブランドは本場の欧米のトレンドを積極的に打ち出します。海外の自転車ショーの主役はEbikeです。
アナログバイクの立場はこの新世代のギアに急速に侵食されます。自転車産業はハイテクの時代に突入しました。
コアなZwiftユーザーには自転車はVRの端末でしかなくなります。
大手メーカーやブランドはもうアナログを推しません。ハイテク、電動、無線の激推しです。国内のアナログバイクの愛好者は手のひら返しで見捨てられかねません。
この点、大手はほんとにわりとドライで冷淡です。ユーザーの声=中小販売店 < 業界のトレンドです。
きついのが流行らない
「オールラウンダーの軽量型レーサーが普及して、ロードバイクの競技人口が増え、ロードレースの人気が盛り上がり、みんながハッピーになる!」
旧来のロードレースのファンの理想はこんなところです。しかし、この世はとかくままなりません。上記のような夢は「サンタクロースは実在する!」級のファンタジーです。
実際問題、カリカリのレーサーは普及せず、亜流のエンデュランス系やエアロ系が台頭し、ホビーレーサーやゆるポタ勢が増えて、ロードレースはマイナー競技の域を出ません。
ローディ≠レーサーの公式が成立しなかった。大方のロード乗りはグルメ、観光、ストレス解消のためにチャリに乗ります。
このご時世にはきついのは流行りません。スポーツは流行りません。部活は流行りません。
ゆるいのは流行ります。レジャーは流行ります。サークルは流行ります。
「初心者で集まって、フォトジェニックな風景を写メして、パンを食べに行こうず!」
「チャリでデイキャンプに来た!」
こういうのは大人気御礼です。で、この常識的なサイクリングにロードバイクの必要性はとくにありません。ふつうのチャリで云っても、日帰りでゆっくり往復できます。
結局、ロードは所属のクラスタ、「ロード乗りであること」を示すエンブレムのようなものです。一般人は性能を出し切れない。
ホビーとスポーツのあいだには強大な壁があります。ロードバイクは気軽じゃない。本質が競技用機材ですから。
サドルの硬さ
スポーツバイクの最初の関門はよりシンプルなものです。サドルの硬さは過去に億千万の入門者を挫折のどんぞこに叩き落しましたし、これからも叩き落し続けましょう。
解決策は以下のようなものです。
- 慣れ
- パッド
- フィッティング
- ポジション
- 減量
が、これは理屈にすぎません。女子には通じない。「そうそう、サドルほんまカッチカチやんな~」て同調しないと、女子のハートをつかめません。
女子が求めるのは理屈でなく、同意です。で、女子に受けないと、ポピュラーにはなりえません。
「おれもかなわんから、やわらかいサドルを探しに行こか~、ついでにスタバでお茶しよか~」
て誘いましょう。くれぐれ「じきに慣れる」とゆわない。関係が破綻します。
また、男子には硬いサドルはより物理的なしんこくな問題をしばしばもたらします。尻ダメージはしんこくですが、玉ダメージはもっとしんこくです。
文章は冗談ぽくなっちゃいますけど、カチカチサドルはロードの普及の最大の壁です、まじで。
ピチピチウェア
オフロードのサイクリングウェアはだぼっとします。アーバンやツーリング系はおしゃれです。
オンロードのウェアはピチピチです。で、蛍光色です。
この手のウェアは女子には壊滅的に不人気です。ウェアの中では最低クラスだ。大方の日本人は体系コンプレックスです。貴重な女子ユーザーがここではやばや脱落します。
男子的目線、スポーツマン的目線にさえピチピチウェアはきついものです。頭によぎるのはモジモジくん、変態仮面、エガちゃん、ショッカー戦闘員etcetc…
で、短足胴長のモンゴリアンダイナマイトボディーがあらわになります。蛍光色のぴちっとしたおじさんです。笑わないで! これがフォーマルなんですよ~。
気分はまんなか、実態は左端です。Raphaを着ても、Castelliを着ても、Assosを着ても、この現実をくつがえせません。もう高橋陽一先生にキャラデザを頼むしか!
ぼくはパンピーの道を踏み外せず、蛍光色のおじさんにはついぞなれず、ふつうのスポーツウェアかアウトドアギアで間に合わせます。
そして、このサイクリングウェアが異常に割高です。しかも、サイズの基準が欧米だ。シューズのサイズ展開のとぼしさは幅広甲高さんには致命的です。
コスト
スキーの衰退の理由はコストです。ゴルフの衰退の理由はコストです。MTBの衰退の理由はコストです。
はて、ロードバイクのコスパはどうでしょう? かんばしいものではありません。
メーカー物のクロスバイクの下限が5万、ロードやMTBの下限が10万です。PBや無印は3割安ですが、半額にはならない。
で、車体を特価の7万でエントリーロードを買っても、備品を揃えないと、かいてきには走れません。
- 据え置きの空気入れ
- 携帯空気入れ
- パンク修理セット
- 交換チューブ
+1万円です。8万の初期投資はスポーツ的にはけっこうなものです。ウィンタースポーツ、ゴルフ級、スポーツフィッシングクラスです。
ランディングコストもそこそこ行きます。消耗品の交換の目安は1年です。自分でできないなら、店に頼みます。オーバーホールは1.5万~です。
輸送コストは引っ越しクラスです。自転車便サービスは1万~ですね。
イベント、レースの手数料は3000円~です。あいにくとスポーツイベントの参加費はもれなく右肩上がりです。
で、ロードを買って、秋春のシーズンにイベント1回、輪行1回、あーだこーだで消耗品を交換する・・・あら、もう10万円だわ~、やだ~。
カップル、夫婦ではコストは倍々ゲームです。おなじ金額でディズニーとUSJと温泉をはしごできます。
それでも、旧来のアナログロードはこれで済みました。現代のハイテクロードはこれで済みません。
やれサイコンだ、パワーメーターだ、スマトレだ、フィッティングだ、サプリだ、保険だでコストがもりもり増えます。
オフライン時代にはゲームソフトを買えばもりもり遊べました。いまやDLCや販売後アップデなしには本編すらまともにプレーできません。
ロードはまるでスクエニのJPRGのようです。
スター不在
スポーツのもりあがりにはスターが不可欠です。はたまた、マンガの連載です。サッカー、バスケ、バレー、テニスはそれでメジャーになりました。
漫画の弱虫ペダルはがんばります。いまや週刊少年チャンピオンの代表作です。
一方の現実の日本人自転車競技者はどうでしょう? ロードレーサーのトップ選手は新城さんと別府さんです。ツールドフランスの当落線上です。
で、この二人はスターでしょうか? ジャンル内のトッププレーヤーではありますが、スターではありません。世間はかれらを知らない。
好き嫌いははっきり分かれますが、ケイスケ・ホンダやショウヘイ・オオタニはスターです。大坂なおみ、錦織K、はにゅゆず、室伏アレクサンダー、スターです。
知名度の点ではユキヤやフミユキは競輪界のレジェンドの中野浩一や日本自転車競技連盟の会長の橋本聖子にすらおよびません。
ちなみに世間的に世界一有名な現役の自転車乗りはクリス・フルームやペーター・サガンやレイチェル・アサートンやニノ・シューターでなく、ダニー・マカスキルです。
で、この日本人のトップ競技者二人はとくにイケメンじゃない。ふつメンです。ちまたの女子の目線は釘付けになりません。アイドルにはならない。
バレーの元日本代表の益子直美のだんなさんはプロのロードレーサーです。さて、名前がぱっと出てきますか? 正解は山本雅道です。シエルヴォ奈良に在籍します。
弱虫ペダルの連載中にイケメン若手日本人選手がツールで一勝できれば、ロードバイクに浮上のきっかけが生まれます・・・生まれるよね?!
そして、弱虫ペダルさえがMTB編に突入してしまった!
車道走行がむりゲー
国内は自動車至上主義です。クルマさまがなければ、二ホンが成立しません。主要産業が、売り物が、看板商品がザ・自動車です。
日本全国津々浦々のアスファルトの舗装路はたっかい自動車関連の諸税のおかげです。地方ではしばしば交通量ゼロのさびしい道がサーキットのようにピカピカです。
で、国内の道路は自動車の、自動車による、自動車のための道路です。オートバイ、自転車、歩行者は二の次です。ランナー、バイカー、ローディは異端です。
そして、自動運転が本格化すれば、手動運転が悪になります。天下の行動はクルマさま、AIさまのものです。ニンゲンの居場所はない。手動運転禁止法案が可決されましたー。
ところどころで車道の左側はタイトなアウェーと化します。
ぼくはオートバイ乗りの友だちとたまにサイクリングに行きます。で、単車乗りさえが自転車の車道走行にはビビッて、「トラック怖い」ておっしゃります。
女子やホビーユーザーには手放しでこれを強要できません。で、回避策で歩道に乗り入れると、ロードのつよみを完全に消されます。逆に細タイヤがあだです。
で、解決策は
- 慣れ
です。とうぜんのごとくこれはNGな回答です。「そうそう、クルマ怖いよね~」が正解です。
そして、女子のほほえましいインプレは他人事でありません。その人がだれかのよめさんや彼女になれば、だんなや彼氏や子供へのOKサインが出づらくなります。
とはいえ、おなじような交通事情のイギリスは超自転車強国です。なんでこんなに差が出るか?
閉鎖的な風土
国内の輪界は保守的で閉鎖的でアナログです。ロードバイク乗りはとくにそうです。フォーマルさ、アカデミックさ、形式、伝統、身内、なわばりを重視します。
ローカルな古参のチームは前時代的な昭和部活風味をいろこくのこしますし、一部の有名チームさえがカルト的なふんいきをただよわせます。
表面的には「初心者ウェルカム!」と言いながら、裏では新参者を冷遇したり、部活の後輩のようにあごで使ったりします。
はて、バージョン違いのチームジャージがそんなに必要ですか? ユニはパーティ券でしょうか? え、あなたのおさがりの中古ホイールを買わんと行けないの?!
このような旧世紀の部活ノリ、スポ根は流行りません。大多数が求めるのはゆるい同好会かサークルのノリです。競技志向のピリピリギスギスしたチームやクラブはノーセンキューです。
とくに日頃のストレス解消で来る人には組織ぽいものは絶対にだめです。
- 上下関係
- がまん
- 強制
- ノルマ
- 目標
- しがらみ
はい、ブラック部活です。
競技系のチーム内の人間関係はわりにこじれます。実際、アマチュアスポーツの内情はドロドロではありませんか。
「チームのために!」はことさらに受けません。「知らんがな」て思って、身を引きます。ホビーユーザーにスポーツは厳禁です。
マナー
町中の一般のホビーライダーのマナーはそんなに悪くありません。むしろ、自転車利用者の中では良心的な存在です。
一方、レース会場、試合会場のベテラン、ハイアマ、コアユーザーのふんいきは一見さんにはビターです。怒号、野次、大声が普通だ。
やはり、レース、スピード、勝負事の特性で人格のラフな部分は出てきます。業界内ではそれが常識でしょう。
しかし、これは世間のパンピーにはぜんぜん受けません。40代以下の人には怒鳴り声がもうむりです。生理的に受け付けない。
「そこどけ!」
「前開けろ!」
子供には見せられません。
コロナで世界が変わった
そして、最後にコロナがやってきました。グループライドは三密の幾つかに当て嵌まってしまいますし、郊外へのソロライドさえが後ろ指を差されます。実際問題、コロナより自粛警察がやっかいだ。ウィルスよりニンゲンが脅威です。
スポーツ、アウトドア、道楽は難しい時代です。インドアトレーナー? Zwift? ああいうのを楽しめるのは一部の自転車乗りだけです。自転車乗り向けの商材だ。一般人はじきに飽きる。というか、たかだかトレーナーに何万も払わない。
とまあ、いろいろ並べますと、マイナスなところしか見受けられません。根付かないのはあたりまえです。
いちばんハッピーになったのは中古屋、ヤフオク、メルカリでしょう。現行モデルや高年式にピカピカの自転車が毎日のようにどさどさ出てきます。
でも、けっこうじゃありませんか。ツーリングブーム以来に本流のドロップハンドルのロードレーサーが日の目を見ました。バブルのようにのちのちまで語られましょう。
ちなみにアマゾンなどの通販ストアの妙に安い『ロードバイク』はスポーツ用品でなく、そういう名前の日用品です。
ワールドサイクルやワイズロードは自転車専門店ですから、ここのロードバイクはれっきとしたスポーツ用品です。
実際問題、ワイズの通販ストアのロードの新品定価の最安は99550円のNESTOのロードです。やはり、10万が相場だ。