世界三大自転車パーツ屋は自転車乗りには常識問題です。
- イタリアのヴェネトのカンパニョーロ
- アメリカのシカゴのスラム
- ニホンのサカイのシマノ
これが3大変速機メーカです。ザ・寡占市場です。オンロード系自転車ではシマノ、オフロード系自転車ではスラムが標準です。実質の二強体制だ。
カンパニョーロは電動変速や12速変速を先取りしますが、価格の割高さからシェアを伸ばせません。悪い意味の『古豪』の呼び名が似合います。
スラム or シマノ?
日本国内では2010年代前半のロードブームの影響でスポーツバイクのトレンドはロード風味をキープします。しかし、一頃の弱ペダ女子はどこへ行った?
海外ではアナログバイクはじりひんです。オフロード、オンロードは横ばいor微減です。新興ジャンルのオールロードばかりが元気です。
これらを抑えて飛躍的成長を遂げるのがE-bikeです。スポーツ型の電動アシスト自転車です。ヨーロッパは空前のE-bikeブームです。
人気はフルサスペンションのごっついE-MTBです。海外の展示会やショーの主役はこいつです。
このジャンルでは従来のアナログコンポーネントの主導権争いは微温的です。この分野では電動アシストユニットの規格争奪戦が激熱です。
極論、シマノのライバルはすでにスラムやカンパではありません。ダイワやがまかつでもない。BOSCHやPanasonicやYAMAHAです。
そして、GIANTの影が忍び寄る・・・
フロント変速のシマノ、1xのスラム
旧来の自転車パーツのはなしに戻りましょう。シマノとスラムにはそれぞれの得意分野があります。
シマノは本質的にはベアリング屋さん、周りもの屋さんです。日本製の鋼の球は旗艦商品のハブやリールに不可欠です。
さらにもうひとつのおはこがあります。フロント変速です。
これは他社の追随を許しません。ことさらにスタンダードなロードバイクやクロスバイクではフロント変速は安定の地位をキープします。
まあ、クロスバイクのフロント3枚は時代錯誤の無用の長物ですが、ははは。
で、後発のスラムはこのフロント変速屋さんとまともに戦わず、コペルニクス的発想で状況を打破します。
「えーい! どうもがいてもシマノに勝てんから、ひとおもいにフロント変速を失くしてまえ! おりゃー!」
きっかけはデザイナーのそんなやけくその思い付きでしょうか。
結果、これが大成功して、MTBの勢力図を塗り替えて、オールロードやアーバンを取り込み、フロントマルチの牙城のロードバイクをも脅かします。
ナローワイドリング、12速変速、BOOST規格などはスラム発の規格です。MTBのイニシアチブは完全にシカゴにあります。
同社の12速のEAGLEシリーズは2016年にローンチして、ミドルグレード、入門用、廉価版と拡大します。
2019年7月時点の最安モデルは新型のSX EGALEです。シマノのDEOREグレードの12速みたいなものでしょう。ちなみにDEOREは10速です。
EAGLEの登場の2年後の2018年にシマノは初の12速コンポを出します。XTR M9100シリーズです。
新型フリーボディ、新型ハブ、新型クランクをひっさげて、ひさびさに自転車ファンをざわつかせました。
とくにダイレクトマウント化したXTRクランクのビジュアルは数年来のヒットです。
「どうした、シマノ?!」
「シマノになにがあった?」
「シマノらしくないw」
て、なぜか上から目線の反応がSNS上に広がります、ははは。
第二世代11速シリーズのビジュアルは全般的に不評ですが、第一世代12速シリーズの滑り出しは好感触です。2019年の次期デュラエースの期待が高まります。
しかしながら、事前の期待を裏切るように本社工場の炎上(物理)や初期ハブの不具合でXTRの初期出荷がごりごりに遅れます。年内に入手できた人はわずかでしょう。
そして、XTRは国内生産の日本製の最高級グレードです。価格がでーんと跳ね上がります。XTRの大多数の本命ではありません。
一般的なシマノファンの現実的選択肢はセカンドグレードのXTです。これは2019年の6月に発表されました。いつもの新作発表のパターンです。
しかし、ここで非常事態が起こります。XTより下の3rdのグレードのSLXが同時に発表されました! ええ?!
旧式のSLX M7000のデビューが2016年です。シマノサイクルでは4年後の2020年がモデルチェンジ時期になります。
シマノの法則が乱れました。ついでにグラベルコンポのGRXが鳴り物入りで登場しました。新ジャンルの創設は2016年のアーバンコンポのMETREA以来の出来事です。
で、機材マニアのぼくはこの話題性に釣られて、SLXを衝動買いました。すこし前にSUNRACEの12速セットを買ったのに!
いや、げんにこいつのレバーの調子がいまいちでして・・・むだづかいでじゃないよ! これは必要な出費だよ!
ひさびさシマノコンポを購入
ぼくの本格自転車デビューは折り畳み自転車です。ルイガノのJEDIてモデルです。
これはすでに改良後の姿です。フロントギアは一枚です。そう、ぼくはこのときからスラム派です from 2016.
初期のコンポはSRAMではありません。SHIMANO DEOREの9速でした。フロント変速はN/Aです。標準的な折り畳みのギアです。
のちにXTの10速を買って、フロントの多段化を試みまして、台座の取り付けやリングの干渉にざせつします。
そこであれこれ調べて、SRAMの1xシステムやナローワイドリングて未知のワードに辿り着きます。
末路がこうです。
ザ・異様です。自己満度は2x11sのデュラエースの比ではありません。そもそも小径車はMTBやロードより金食い虫です。ザ・道楽。高級グレード搭載は珍しいもんじゃない。
そんなこんなでぼく的にはシマノの水よりスラムの水の方が性に合いまして、SRAM大好きおじさんが爆誕しました。
そのXT以降の変速機の経緯です。
- SRAM NX
- SRAM GX
- SRAM GXイーグル12秒
- Campagnolo Athena +パワー
- サンレース12秒
期間はざっと三年です。メインはSRAM系です。おのずとメインバイクはMTBになります。
こちらはピュアSRAM機です。あ、チェーンだけはのちにKMC X12になりました。シフター、ディレイラー、クランク、カセットはSRAMです。
で、メイン機のセットをMIXにするのはびみょうなところです。用途がラフですし。今回のSLXはサブバイク用です。
以前にハードテイルのKONA HONZOをツーリング仕様に仕上げましたが、SUNRACEのレバーを速攻で壊してしまいました。
シマノ? いや、SUNRACEです。赤いメモリもラピッドファイヤ風のレバーも他人の空似です。
12速チェーン、ディレイラー、シフター
今回の購入物は3点セットです。チェーン、シフター、ディレイラーです。青い箱が目に沁みます。
ちなみにスラムの箱は赤色です。対抗心がむきだしです、ははは。
シマノのてこいれ? SLX前倒し
XTとSLXはボリュームゾーンです。3rdの一年前倒しは結構な決断でしょう。最悪の場合、2ndのXTと潰しあっちゃいますし。
ついでに来年のMTBコンポの目玉がなくなりました。もしか、XTRかXTのDi2だあ? いや、万が一のSAINTとZEEの新型が来るか?!
て、まあ、機材マニアはせっかちな皮算用で鬼を笑わせますが、そろそろ手元の現物に着手しましょう。
ショッピングの具体的な内容です。
購入パーツ
- Shimano SLX M7100 SGS リアディレイラー
- Shimano SLX M7100 シフター
- Shimano SLX 12速チェーン
購入先
- ワールドサイクル楽天店
金額
- 12588円(税込)
- ポイント消化で-8000円
発送日数
- オーダーから5日
買い物上手ですね。新型はメーカー取り寄せでしょうが、在庫確認と発送はわりと迅速でした。ワールドサイクルはシマノと同じく堺にあるからか?
シマノ製品の国内価格はほぼ横並びです。希望小売から18~23%割引が実質定価です。これは発売直後から後々まで変動しません。
海外通販のセールは1年後には国内価格を下回りますが、今年の初めから欧州系の大手ストアのシマノ製品の日本向け出荷が凍結されました。
てことで、2019年現在のシマノの最安値は国内定価です。
ざんねんプーリー、ごっついシャドー
うちには三つの12速ドライブがあります。こんな機会はめったとありません。比較がはかどります。
グレードと価格はにたりよったりです。最古参はGX EAGLE、最新鋭はSLX 12sです。SUNRACE 12速は春ごろに出ました。まあ、新型は新型です。
これより安いのはSRAM SX EAGLEです。中華サイトで3点セットが1万ほどです。変速数でどや顔できる時代ではありません。
重量計測です。
SLX RD-M7100 1×12 SGSの実測が315gです。ちなみにGX EAGLEが300g、SUNRACEが285gです。SUNRACEがトップにかがやきました!
SLXシフターはインナーケーブル込みで145g、チェーンが300gです。おもさはふつうです。
SLXディレイラーの近影です。
質感はふつう、デザインはふつうです。ぼくの想像よりシャドーのアウター受けがボリューミーです。このせいで重さがかさむ。
いちばんのがっかりポイントはプーリーです。ベアリングなしの安っぽいやつです。
上位のXTやXTRのプーリーはベアリング入りです。3rd以下はコストダウンで安ぽくなります。
ちなみに我がSRAM GXはミドルグレードでありながら、ナローワイドのビッグプーリーとシールドベアリングを標準搭載します。
そして、伝家の宝刀のケージロックが整備派にはサイコーです。この有無で整備のしやすさが月とすっぽんです。
結果的にSRAM GX EAGLEの総合力がきわだちます。12速ベストセラーはだてではない。NXやSXはすこし重くなりますし。
うわさどおりに硬いクイックリンク
12速チェーンの繋ぎには旧来のシマノコネクトピンを使わず、ミッシングリンク型のシマノクイックリンクを使います。
12速用のコネクトピンはカタログにありません。ディーラマニュアルにも「クイックリンクを使うように」て記述があります。
11速チェーンからすでにコネクトピンの問題は明らかでしたが、もっと細い12速チェーンではそれがより明白になります。
この細いリンクに再圧入ピンをどまんなかに収めるのがたいへんです。
で、コネクトピンはオワコンになりました。ところが、シマノのクイックリンクの評判はいまいちです。
初代は壊れまくって、クレームの嵐を受けました。おかげでシマノは一時的にコネクトピンに逆戻りしました。
現行モデルは二代目です。が、過去のトラウマを引きずったか、最初の取り付けがやたらとハードです。かっちかち!
ミッシングリンクツールを使っても繋げません。結果的にペダルに体重をかけて、かきーんとやりました。まちがいなくミッシングリンク系では最強の硬さです。
チェーン長は現物合わせ
ところで、シマノ製品の整備はひさびさです。じゃあ、公式のディーラーマニュアルがたよりです。M7100、M8100、M9100系のマニュアルは共通です。
ハードテイルとフルサスペンションのチェーン長は異なります。
- ハードテイル:前後大ギアにチェーンをかけて、4~5リンク+クイックリンクを足す。
- フルサス:同条件で5~6リンク+クリックリンクを足す。
KONA HONZOはハードテイルです。しかし、楕円リングの変形度を考慮して、長めに取ります。はじめに6リンク+クイックリンクでかけました。
じゃあ、チェーンがゆるゆるです。
ここからちょくちょく切り詰めて、最終的に-4リンクしました。やはり、現物合わせがジャスティスです。
スラムのカセットと合わせる
さて、ここが今回の記事の主題です。12速のライバル同士のコラボだ。
MTBファンには気がかりなところでしょう。スラムの12速カセットとシマノの変速機の組み合わせです。
まあ、カセットとドライブのMIXはそんなにむちゃなごた混ぜではない。シフトSRAM x ディレイラーカンパとかはぐちゃぐちゃになりますが、ははは。
あと、SUNRACE 12速メカ+SRAM 11速シフターもパーフェクトな動きにはなりません。インデックスのうごきがちがいますから。中段があやふやになります。
今回、シマノのディーラーマニュアルに従って、変速調整をしました。結果は95点くらいです。
実際問題、リアの変速の優劣はほとんどありません。変速のぬるぬるさの時代は平成までです。
ほんとにまじで特別な感想を持てません。ふつうの12速変速機です。SRAMからの乗り換えの動機にはならない。てか、旧来のシマノファンは11速で構わない?
シマノ12速化には新型フリーボディとハブがネックです。これは次期ロード12速の不安の種でもあります。買い替え需要は予想より進まないぞー。
しかし、このご時世にフルシマノにするのはよほどの熱心なシマノファンばかりでしょう。フルスラムのが圧倒的におすすめです。GX EAGLEのコスパがひかります。
で、つぎがこのシマノとスラムのMIXですね。運用面とパーツの入手のしやすさがカギです。またまたハブの出荷が出遅れますが、ははは。
個人的なおすすめ構成です。
- SRAM XDカセット
- KMC 12速チェーン
- シマノシフター・ディレイラー
あ、SRAMのチェーンだけはびみょうです。KMCのがグッドです。
で、最後がフルシマノです。ハブとカセットの新旧互換性、クイックリンクの硬さが足をひっぱります。そして、整備ではSRAMのケージロックの偉大さが身に沁みます。
SLXディイラーの純正プーリーはざんねんですから、ディレイラーのみをXTにアップグレードするのはありですね。