Specializedはアメリカ御三家の一つです。アメリカ最大手のTREK、ライバルのCannondaleを差し置いて、北米人気ナンバーワンの自転車ブランドです。
ここは昔から自社工場を持ちません。設計・企画、オーガナイザー屋さんです。台湾の大手自転車メーカーのメリダが株式の大半を持ちます。実質、スペシャラ=メリダ製です。
スペシャライズドの得意分野は全部です。オンロード、オフロード、エックス系、いずれがトップレベルの実績を持ちつつ、大人気を博します。
- Tarmac
- Venge
- Roubaix
- Demo 8
- StumpJumper
ほら、名車ばっかりです、ははは。クロスバイクやエントリーロードがやや手薄ですかね。でも、そのカテゴリはメリダブランドのお仕事です。
最近、メリダのロードはサイクルロードや郊外の国道でよくいます。乗り手はだいたい若い人です。小売店と問屋も一蓮托生で販売と宣伝に力を入れます。ブランドの知名度は確実に上がりましたね。
で、スペシャライズドのロードレーサーはTARMACです。これを駆るのがペーター・サガンです。スロバキア出身の自転車選手です。『悲しみよこんにちは』の女流作家とは無関係です。あっちのサガンはペンネームだし。
このペーター・サガンはロード界では異色です。ジュニアのシクロクロスの、そして、ジュニアのMTBクロスカントリーの世界選手権と欧州選手権の覇者です。
すね毛を反らないとか、そもそもロン毛だとか、なにかとトリックスター的な働きをします。保守コンサバアカデミックなロードレース界では異端児です。ぼく的にはツボです。
2016年のサガンの在籍チームはTinkoffでした。ここからボーラ・アルゴンに移籍します。
「サガンがArgon 18に乗るかあ? イメージが違うっす!」
とゆう懸念の矢先にボーラ・アルゴンがボーラ・ハンスグローエになります。そして、使用機材がArgon 18からSpecializedになります。一安心。
で、このサガンがSpecializedのDvergeの新作のプレPV動画を監修しました。
サガンがでっかい車をドーナッツ走行させます。もくもくスモーク。そのルーフにはスペシャラのバイクがぽつんとあります。
タイトルはDiverge x Saganです。
ドロハンにドロッパー?
Diverge、ディヴァージュはスペシャライズドのグラベル・アドベンチャーバイクです。グラベル・アドベンチャー系の定義はあいまいですが、
- ドロップハンドル
- 油圧ディスクブレーキ
- エンデュランスジオメトリ
- ロードプラスタイヤ
などが共通項です。用途はレースでなく、アドベンチャー、ツーリング=冒険、旅行です。イマドキのスポーツバイクです。いや、ホビーバイク、ホビバイです。
ジャンル的にはクロスバイクの系統です。機材的にはシクロクロスの発展進化形です。シクロバイクはトレーニング用、競技用ですが、アドやグラベルはホビーです。
日常から冒険へ、舗装路からちょっとしたオフロードへ。外国の街や道は部分的です。都市からすこし離れると、荒野や草地や森林や山岳や砂漠や出くわします。
全国津々浦々にきれいな舗装が行きわたる、てのは例外です。島国のイギリスと日本くらいです。莫大な予算と適度に狭い領土の条件が揃わないと、オールコートアスファルトはむりです。
くしくもこの二国の自転車走行はKEEP LEFTです。その昔、日本がイギリスの制度をあれこれ真似ましたからね。
で、大陸系の自転車乗りはタフなライドを求められます。実際、日本のチャリダー事情は世界一のぬるま湯でしょう。道はぴかぴか、自販機はもりもり、コンビニは無限、治安は良好です。
スマホのおかげでロングライドはさらにマイルドになります。自転車とスマホはヒジョーに好相性です。機材の進化、インフラの整備、それよりなによりスマホの普及が自転車ブームの功労者です。
で、なにかとハードな海外サイクリングではきゃしゃなピュアロードレーサーよりタフネスなX系のオールロードが人気です。
クラシカルなキャリパーのリムブレーキは雨、泥、急な下り坂には無力ですし、23-28mmのスタンダードな高圧スリッククリンチャータイヤは砂利や舗装路の不良に不利です。
こういう古風な石畳の古道はセミファットの低圧3インチタイヤにもまあまあのタフネスです。フロントサスが恋しいところです、ははは。
リアはわりに楽勝です。が、フロントのショックは手首に来ます。グリップをやわらかく握ると、ハンドリングのコントロールを危うくしちゃいますし。
最初の写真のスペシャラのルーベコンプは対ショック用の秘策を持ちます。フューチャーショックです。ステム内蔵のサスペンションシステムです。
MTBのサスフォークみたいに10cm~のトラベル(沈み代)はありません。こいつのトラベルは20mm、2cmです。
たったの2cmですが、これはばかになりません。2cmの段差はドロハンバイクにはでかいものですよ。指一本分の段差です。一つ二つはまだしもですが、石畳はこれの連続です。
2015年ごろからロードバイクのタイヤのトレンドは23cから25cになりました。リムはC15からC17になります。
人気ベスト1ホイールのカンパニョーロのゾンダが去年の2017モデルでC17化しました。これはロード界のトレンドの変化です。23mmタイヤは役目を終えました。
タイヤのワイド化はオフロードではさらに顕著です。ファットバイクのタイヤボリュームの恩恵がノーマルなMTBの分野に波及しまして、ちょい細のファットタイヤ、セミファットがぐいぐい来ます。
タイヤのボリュームアップは重量アップに直結します。このCONSを解消するのがチューブレステクノロジーです。
チューブレス専用リム x チューブレス専用タイヤ x シーラントでチューブドタイヤより軽量化・高性能化できます。
この特濃牛乳みたいなのが魔法の薬液シーラントです。粘着性の繊維質がピンホールや細かい隙間を密封します。
イレギュラー的にクリンチャータイヤやクリンチャーリムのチューブレス化も可能です。
これはノットチューブレスタイヤのSchwalbe G-one SPEED 29 2.35です。グッドシーリング!
チューブドをチューブレスにすると、重量を軽くできるし、転がり抵抗を減らせるし、パンクの頻度を減らせます。
シーラントはもともとパンク防止剤です。ちょっとやそっとのピンホールや傷はシーラントのパワーですぐに埋まります。
そして、タイヤはチューブみたいに極端に膨張しません。空気の抜けはゆっくりです。仮にシーラントを入れないで、空気を入れても、数kmから走れちゃいます。
一方のゴムチューブは一種の風船です。PUNK! は瞬間的です。プシュー! 数秒が限度です。
オフロード分野では昔からチューブレスが主流でしたが、ハイブリッド系のタイヤもぞくぞくチューブレス化します。年々、タイヤは太く柔らかくなります。
最新のトレンドではロードプラスのタイヤがぼちぼち出始めました。650Cのホイール x 40mmのチューブレスタイヤです。
ホイールが小さくなって、タイヤが太くなります。内訳は変わりますが、タイヤの大外の外周は従来の700cホイールとクリンチャータイヤのイーブンパーです。
タイヤが太くなると、乗り心地が格段に向上します。マイルド悪路のエンデュランス、ちょっと冒険ツーリングではスピードよりコンフォートが最重要です。
で、これが昨今のグラベル・アドバイクの流れでしたが、Divergeはさらにもう一つの画期的アイテムを付け加えます。それがドロッパーシートポストです。
オフロードではとうにメジャーなアイテムです。事務イスみたいに上下するシートポストです。開発者は台湾KindShockの社長さんです。
本来の開発意図は『レンタルサイクル用の自転車のシートポストを利用者ごとに高さ調整する手間を解消するため』です。じつに実用的なアイディアです。
が、これがあれよあれよと本来の用途から外れて、オフロードの世界ですごく重宝されはじめます。
平地や緩い下りでペダルを漕ぐ場面ではシートポストのポジションが役立ちます。が、ダウンヒルや低速の場面ではサドルは邪魔です。腰を落として、足付きをよくします。
こんなところでハイポジションの高サドルにしたら、前のめりにひっくり返りますで。
あと、街中のごちゃごちゃしたところでこの低サドルが意外と有効です。バレリーナみたいなつま先立ち、ガードレールキャッチ、ポールゲットから解放されます。
このドロッパーの発明以前のオフロードユーザーは上りや自走ではシートポストを高くして、くだりのスタート前にサドルを下げて、下りのゴールでシートポストを高くして~みたいなことを強いられました。
いまやリモートのレバーでサドルの調整はワンタッチです。基本は有線の機械式です。ワイヤーはMTBのシフターケーブルと共通です。一部に無線モデルがあります。
系統ではサスペンション屋のドロッパーとCNC金属加工屋のドロッパーがあります。いずれが人気商品です。うちのTHOMSON ELITEは金属加工屋のドロッパーです。
このトラベルは無限です。ベストの位置でぴったりにサドルを調整できます。たとえば、サンダル→スニーカーみたいにソールの厚みが変わっても、即座に微調整が可能です。いろいろ楽チンです。
ドロッパーポストをドロハンに装着するのは相当なマニアでしょう。ところが、今回のSpecialized Divergeはドロッパーポストを採用します。市販のメジャーな完成車では初ではないかえ?
さきほどの動画をもう一度見てみましょう。
冒頭の0:07のところが第1チェックポイントです。左のブラケットの近辺にへんなレバーがあります。形状からなにかのリモート系のレバーです。
第2チェックポイントは0:43の付近です。一瞬、車体の近影があきらかになります。そのとき、シートポストの形状がこうです。
この筒のなかに筒がある形状=トラベルアジャストシステム=ドロッパーです。土台のポストは単純な丸型でなく、エアロ形状です。
形状からトラベル量は10cm以下でしょう。上の円筒型のところだけがトラベル部分です。外装ケーブル類は見えません。Diverge専用設計のステルスドロッパーシートポストでしょうね。
じゃあ、ドロッパーディスクロードの誕生だア!
来年か再来年にはルーベに乗っけて~。ディスクブレーキ、ドロッパーシートポスト、ロードプラスが一気に進め~。
そして、トップレースでディスクロードを最初に駆るのはペーター・サガンでしょうね~。フルームやキャベンディッシュではさまになりません。フォルツァ・ペーター!
これでシートポストがただのサスペンションシートポストであれば、期待感がすこし盛り下がりますけど、ははは。
しかし、ほんまにスペシャラはいろいろ純正でキワモノを出しますねー。