- 総合評価は4/5 ★★★★☆
- 最安4Eシューズ?
- 実質アキレス
- スニーカー風のスリッパ
amazonや楽天で2000円台のスポルディングの格安4Eシューズの印象はこのようなものです。
ぶかぶかのサイズ感と異常に柔らかいアッパーをどう捉えるかが評価の分かれ目です。以下で詳細を説明します。
スポルディングのスニーカーの基本情報
SPALDING、スポルディングはアメリカのスポーツ用品メーカーです。売れ筋はバスケットボールの商品です。
個人的にサッカーボールはMOLTEN、バスケットボールはSPALDINGです。え、MIKASAですか?
本家のSPALDINGは1876年から続く老舗です。アメリカプロ野球のスターだったアルバート・スポルディングさんが始めました。
のちに世界初のバスケットボールを開発します。アメリカでは総合ボールメーカーです。
スポルディング・ジャパンの公式ページにはほぼバスケットボールの商品しかありません。
バレーボールのウェアとアメフトのボールがおまけ程度にあります。つまり、スポルディングは総合スポーツアパレルではない。
しかし、amazonや楽天のおすすめにはスポルディングのシューズが出てきます。これは何でしょう? はい、ライセンス商品ですね。
ライセンス品
現代の常識ではメーカーとブランドは一致しません。服飾、アウトドア、スポーツ用品、ペットグッズ、玩具、家電などの大半はアジア製です。
シューズはインドネシア、ベトナムあたりで作られます。ポールスミスもラルフローレンも中国製です。
超高級ブランドのエルメスの靴もエルメス製ではありません。イタリアのサントーニなどが製造元です。
そのサントーニにエルメスのロゴが乗っかると、価格が数倍に跳ね上がります。いや、サントーニも高級品ですよ。
国内で有名なライセンス品は三陽商会のバーバリーです。
バーバリーは英国のハイブランドですが、日本の三陽商会に看板を貸して、あのチェック柄を爆発的に流行らせました。
ヒットの切っ掛けはたしか安室奈美恵です。
その後、バーバリーがライセンス契約を打ち切って、三陽商会を空前の経営危機に陥れました。三陽の回復の兆しはいまだに見えません。
で、バスケットボールメーカーのSPALDINGの手頃なシューズもこのライセンス品になります。
国内販売元はアキレスです。幅広い分野のゴム・プラスチック製品を取り扱いつつ、子供用短距離シューズの瞬足の開発やBROOKS RUNNINGの代理店を手掛けます。
スポルディング=アキレス
で、アキレスシューズのページに行くと、このスポルディングのシューズを発見できます。
つまり、通販の手頃なスポルディングのシューズは『スポルディングのロゴ付きのアキレスのシューズ』になります。
本国のSPALDING社はこのシューズの開発や設計に関わりません。名前を貸して、対価を貰います。これがライセンス契約です。
アキレスのページにはOUTDOORの長靴もあります。これも同様のライセンス商品でしょう。逆にBROOKSは輸入販売品です。
基本的に日本企業は基幹開発に優れて、ブランディングに劣ります。ライセンス契約というのはこれを補完する効果的な特効薬です。
でも、これに頼り過ぎると、三陽商会みたいになってしまいます。
この事情を踏まえて、スポルディング by アキレスのシューズを再チェックしましょう。実売が2200円です。
ブランドロゴ付きの売れ筋がこの価格です。ロゴなしの原価はどれほどでしょう? 1000円くらい?
使用者の身体情報
ぼくの足のデータは以下の通りです。
性別 | 男性 |
体系 | 中肉中背 |
素足サイズ | 25.5cm |
スニーカーサイズ | 26.0-26.5cm |
素足幅 | 11cm |
スニーカー幅 | 4E |
土踏まず足囲 | 26cm |
母指球足囲 | 27cm |
足型 | エジプト・ギリシャ型 |
アキレスのウェブストアには便利なJIS規格の足のサイズ・ワイズの表があります。
そのデータではサイズ25.5cm、足回り27.0cmの推奨ワイズはFとなります。が、F幅の市販シューズはほとんどありません。
一つ下の4Eが現実的なジャストサイズです。
スポルディングJIN 3620の特徴
今回のスポルティングのシューズはアキレス製ないし大量生産品のロゴ替えモデルです。
モデル名らしいモデル名はありませんが、JIN3620という型番が割り当てられます。この番号の商品はアキレスのウェブストアにはない。
アキレスのストアのスポルディングの在庫には3E~6E!のシューズが並びます。この幅広指向は国内企画品のように思えます。
とにかく本家のSPALDINGの設計ではありません。欧米のスタンダードはC~Dですからね。
アキレスのスポルディング名義のシューズの価格設定は3480~6490円です。このゾーンは専門的な競技用品のレベルではありません。
運動靴、スニーカーの価格帯です。用途は街履き、通勤通学、散歩などです。後述のようにランニングは×、ウォーキングは△です。
ぐにゃぐにゃのアッパー
スポルディング JIN3620の最大の特徴はその柔らかさです。アッパーがぐにょぐにょです。とくにヒール部分は軽い力で潰れます。
芯材や補強が全くありません。この部分は文字通りにヒール型のただの布です。サポートしませんし、ホールドしません。手応えは厚手の靴下です。
このおかげで踵は常時にふわふわ、すぽすぽします。ランニングは不可ですし、ウォーキングも快適ではない。散歩がせいぜいだ。
使用感はサンダルやスリッパに近くなります。明らかにスポーツシューズではありません。
通勤通学には使えますが、部活や体育の授業には使えません。使用範囲はかなり限定的です。
甲と爪先は超ゆったり
アッパーの形状や容量(専門用語ではラスト)はメーカー、モデル、年式、ジャンルで違います。4E幅のシューズも一様ではありません。
例えばフットサルシューズの4Eはスニーカーの3Eくらいですし、スニーカーやキャンパスシューズの生地はランシューほどに広がりません。
で、このスポルディングの4EのJIN3620は過去最高にがばがばな4Eです。甲と爪先に十分な余裕があります。むしろ、珍しくこの部分がルーズです。
甲と爪先部分にも芯がありません。ヒールの柔らかさが相まって、全体が柔軟に広がります。
感覚は紐付きの分厚い靴下です。はたまた足袋だ。26.0cmへのサイズダウンはありですね。
ヒールの柔らかさの光と闇
上述のようにこのシューズのヒールはふにゃふにゃのぐにゃぐにゃです。サポート感やホールド感はない。
歩く、走る、階段を下りるなどの動作中に踵がかぽかぽします。動いて楽しいシューズではありません。
逆にヒールを踏みつぶして、スリッパ風に使うと、別種の活路を見出せます。スニーカー風のスリッパですか。
通常のスニーカーやランニングシューズでこれをやると、芯材や補強を一瞬で台無しにしてしまいます。
が、このスポルディングのヒールはそもそもぐにゃぐにゃです。型崩れのしようがない。
また自転車ではヒールのかぱかぱが起きません。私は夏場のサイクリングシューズに使おうと思います。
原付とかオートバイとかにも良さげです。ドライビングシューズには靴底がやや肉厚でしょう。
このようにヒールの機能を最初から度外視すれば、適切な使い方を絞り込めます。
このスポルディング JIN3620は普通のシューズではない。その点、amazonの商品ページのタイトルの『ウォ-キングシューズ』はトラップですね。
インソールはハイアーチ
ヒール以外のパーツは並みです。そもそも定価が4000円、実売が2200円です。この価格の履き物に高級素材や最新テクノロジーは盛り込まれません。
インソールは平凡な安っぽいウレタン製です。アーチ部分はけっこう高め。
履き心地は普通です。と、それ以前にアッパーがぐにゃぐにゃでがばがばですから、こういう形状の工夫はほとんど無意味です。
インソールを抜いて使っても違和感を感じないし、まず歩きや走りには使えない。
サンダル風のフラットなアウトソール
アウトソールは接地感や衝撃吸収に影響します。スポーツシューズの性能には重要な部位です。
が、このスポルディングのシューズはスポーツシューズもどきです。アウトソールは重要ではありません。
形状はフラットなサンダル風です。
接地感は「たったった」という感じです。ドライなアスファルト以外ではグリップはありません。雨の日の構内やマンホールはスケート場になります。
スリッパなので軽量
このシューズのアッパーは全体的にふにゃふにゃです。芯材や補強材が全くありません。ほぼヒール付きの布スリッパです。
この芯のなさは重量に好影響を及ぼします。26.5cm、4Eの片足重量が226gです。
同サイズ、同ワイズの標準的なランニングシューズの重量が250g前後ですから、このスポルディングJIN3620は軽い部類に入ります。
まあ、実態がシューズ風のスリッパですから。
アウトソールのゴム部分の少なさも軽さの秘訣です。耐久度はそれなりでしょうが、再三の指摘のように散歩以上のシーンは想定外です。
スポルディング JIN3620 幅広シューズのまとめ
このシューズはアメリカのバスケットボールのSPALDINGの輸入品でなく、販売元のアキレスの企画品です。
見た目はスニーカーやウォーキングシューズに見えますが、実態はヒールとソール付きのスリッパです。ルーズな履き心地がそれを裏書きします。
- 価格:5
- ブランド:3
- デザイン:3
- 性能:2
- 機能:4
- 幅広甲高:5
- トータル:4 ※用途を絞るなら
ランニングやウォーキング用に買うと確実に失敗します。これはスポーツシューズではありません。
逆に用途を限定すると、軽さとルーズさを活かせます。突っかけと考えましょう。