スポーツバイクは多彩です。ざっくりと二分すれば、オンロードバイクとオフロードバイクに大別できます。さらにそれぞれに多様なカテゴリー、シーン、ジャンルがあります。
このバイクは門外漢にはただのMTBでしょう。
詳しい人にはサスペンションの種類、フレームの形状、ヘッド角、ドライブトレインの構成からAM=オールマウンテンバイクだと分かります。
AMはジャンル的にはXC=クロスカントリー(オリンピック種目)やDH=ダウンヒル(下りオンリー)みたいなごりごりの競技系バイクよりホビー寄りになります。国内ではSDA王滝がAMレースの代表です。
一方のオンロードバイクも例にたがわず、シーンごとに細分化して、多数に枝分かれします。たいていの有力ブランドは3つか4つの機材を投入します。
背景にはトップレースのステージごとのメリハリの先鋭化があります。ヒルクライムはよりきつくなり、クラシカルはよりタフになる。
石畳レースは舗装路で行われますが、体感はオフロードです。がたがたが手と肘に来ます。
おのずと選手は特化型になり、機材もそれに準じます。
本命以外の自転車ブランドやスポンサーはどこかのステージで賞を取って、実績を重ね、露出を増やさねばなりません。勝利こそはなによりの宣伝であり、ブランディングです。
ロードバイクの種類
ロードバイクの種類は大まかに5種類です。
- ノーマル
- 軽量
- エンデュランス
- エアロ
- TT
です。たいていのチームはこの5種を使い分けます。機材供給元の自転車ブランドの得意不得意は影響します。
ノーマル
各社の基本モデルがノーマルタイプのロードバイクです。今みたいに細分化する前の原型に近いモデルです。狭義の意味での『ロードレーサー』です。世間のロードのイメージがこれです。
特化型モデルが進化すると、汎用万能型が相対的に埋没します。ノーマルの長所の軽さはレースの重量規定の6.8kgの壁に阻まれす。カーボンのつぎの新素材はまだ不透明です。
しかし、ホビー向け、個人使用ではこの欠点が取っ払われます。シーンごとにバイクを変えられる人は多くありません。実業団クラスのハイアマチュアかお金持ちか自転車屋の店長ばかりです。
ノーマルタイプのスピードやコンフォートは他モデルに譲りますが、総合力に優れます。登れる、下れる、走れるバイクです。ロードのおいしいところぞんぶんに楽しめます。
軽量タイプ
軽量タイプはノーマルタイプのオプション的なモデルです。上りのレース専用の機材です。フレームセットがノーマルからさらに10%前後の軽量化を果たして、700gとか600gとかになります。
最軽量パーツで完成車を作れば、ゆうに5kgを割れます。クロスバイクの半分以下の重量です。
しかし、6.8kg以上のバイクは公式レースには出られません。プロや競技者は軽さのメリットを最大限に受けられません。なかなかビミョーなモデルです。
アマチュアやホビーユーザーは好き勝手に5kgにも4kgにもできます。機材の軽量化、数グラムの誤差に一喜一憂するのは自転車の楽しみ方ではオーソドックスなものです。
エンデュランス
Endurance、エンデュランスの直接的な意味は『耐久』です。海外ゲームではENDて略されます。これは耐久度、体力のことです。
で、ロードバイクのレースシーンのエンデュランスは舗装路のタフな走行向けのモデルを指します。さきの石畳のステージやバッドコンディションの舗装路を走るためのバイクです。
ヨーロッパでは古い時代の石畳の街道があちこちに現存します。ここをわざわざ走るレースが『クラシック』です。パリ-ルーベの石畳コースが有名です。
ふつうのロードでこれを走ろうなら、かんたんにパンクや破損や事故を引き起こしちゃいます。実際、クラシックレースのトラブルは日常茶飯事です。別名が”l’enfer du Nord” 『北の地獄』です。
なんでわざわざハイヒールで登山みたいなことをするのかは門外漢には意味不明ですが、業界の風習、伝統行事のようなものはしばしば常識の埒外にあります。
それから、欧米人はわりにドロンコやビショビショになるのを嫌いません。シクロクロス、トライアスロン、欧米では人気の競技です。
レースシーン以外でのエンデュランスバイクはロングライド向けのカイテキモデルです。タフなクラシックレースで培った耐ショック機能や振動減衰技術を疲れにくさ、乗りやすさに昇華します。
全体的にエンデュランスモデルのがノーマルよりポジションやヘッド角やジオメトリがマイルドです。ゆったりマイペースで長く乗るにベストな一台です。
また、スタンダードモデルみたいな仕様や規格のあつれきが少なめです。ステム内蔵サスペンション、ソフトテール、ディスクブレーキみたいなガジェットが積極的に搭載されます。
スペシャライズドのルーベは典型的なエンデュランスロードです。
ステム内蔵のフューチャーショック、特徴的な形状のCG-Rシートポスト、ギャップダウンしたリアステー、そして、油圧ディスクブレーキです。
究極的には振動減衰や耐ショックの技術はMTB系のものになります。結果的にガジェットもりもりのエンデュランスロードとMTB派生のオールロード系とのボーダーラインはあいまいになります。
エアロ
物体の速度を上げるのに手っ取り早い手段はなんでしょう? ひとつはパワーを上げることです。もうひとつは抵抗を減らすことです。
日常生活ではそんなふうに感じませんが、自転車やオートバイで走り出せば、とたんに空気の壁の分厚さにぶち当たります。ちょっとの逆風がなんと重くまとわりつきますか!
30km以上の速度域では空気はほんとの壁になります。これを余分に受けないことが速度アップへの近道です。
船に乗ればよく理解できます。
船は水をかき分けて進みます。自転車は空気をかき分けて進みます。棒より刀です。エアロロードは細く平たくなります。
フレームのでこぼこを減らして、平たく細く刀のようなプレート状に近づけます。細いパイプをひらべったくすると、強度を損ねますから、形状をワイドにして、剛性を出します。結果、このようなイカツいビジュアルになります。
古参のロードレーサーファンはこのエアロ形状を好ましく思いません。「マンボウ」て小学生レベのひどいあだ名がまことしやかに囁かれます。
しかし、スタンダードモデルが規定や素材の制限で実質的に頭打ちです。軽さを進化させられないなら、ほかの項目にポイントを振り分けねばなりません。
じゃあ、ガジェットのエンデュランスと形状のエアロは妥当な進化です。個人的にエアロロードのSFチックな見た目はぜんぜんOKです。
マンボウ? じゃあ、TTモデルやトライアスロンモデルはバトルアックスですよ。
TT、トライアスロン
TTはタイムトライアルの頭文字です。平坦コースの専用機材です。登らない、下らない、ひたすらに走る。
TTモデルの特徴はエアロです。エアロロードのエアロはこのTTモデルのダウングレードに過ぎません。エアロラとエアロガなみの差があります。
ロードレースと別の規定を持つトライアスロンの自転車ゾーンではさらに特殊なスペシャルワンが登場します。