ぼくの足は『幅広甲高』です。シューズ選びは至難です。とくにスポーツ専用シューズのwidth=横幅の展開の少なさは幅広甲高泣かせだ。
しかし、ランニングシューズ、ウォーキングシューズには3Eや4Eがあります。海外ブランドのアジアンフィット、日本人向けモデルも少なくない。
え、素直にミズノかアシックスを履け? その二社の商品は街中や路上で被るから・・・
てことで、今回のシューズはNBです。ミズノとアシックスを回避し、海外ブランドの手頃な幅広シューズを探すと、NB=ニューバランスに行きつきます。このボストンのスニーカー屋の商品は老若男女に大人気です。
以下では学生時代に陸上部だった知人O氏の協力を仰いで、軽量高速ランニングシューズのNB HANZOのレビューを紹介します。
NB HANZO基本情報
最初にNB HANZOの基本情報を解説します。
- コンセプト:長距離ランナー向け
- 販売開始時期:2017年
- 特徴:シューズ職人三村仁司氏監修の日本発モデル
- 価格帯:5000-15000円
- 備考:現行モデルは二世代目
HANZOの前身はアメリカで開発されたトラック競技用のSilent Hunterというモデルで、これが靴職人三村氏の協力でリビルドされて、忍者ぽい『ハンゾー』という名前を貰いました。もちろん、元ネタは服部半蔵です。
ハンゾーの販売開始は2017年ですから、NBのシューズの中では新しいモデルです。日本人の靴職人が監修に入るように国内発のモデルです。が、凡庸な国内限定モデルでなく、日本→海外の販売戦略を持つモデルのようです。NB UKモデルみたなものでしょうか?
グレード
HANZOシリーズは末尾のアルファベット一文字で細かく分類されます。
- S=スペシャルモデル
- R=レーシングモデル
- C=チャレンジモデル
- U=初心者モデル 旧1040シリーズ
- T=トレーニングモデル
- J=ジュニアモデル
上位のSとRが監修モデル、CとUとTはその下位互換です。が、TモデルとSモデルの価格差はそんなにありません。Tが10000円、Sが16000円です。カーボンプレート入りのNB FuelCellやNike Vaporは2-3万ですし。
デザイン
海外モデルのシューズやウェアは日本人のセンスにはしばしば派手め、明るめ、奇抜めに見えますが、HANZOのカラーバリエーションは大人しめです。ショッキングピンクに黄色の網目模様! みたいなのはない。ユニセックス&シンプルなデザインです。
価格
希望小売価格は8000~15000円、実売価格は5000~10000円です。3000円台の廉価モデルはありません。つまり、汎用の運動靴ではない。基本的に練習用、競技用のランニングシューズです。
用途
NB HANZOの公式ページには『フルマラソン完走』や『SUB 2.5』などのキャッチコピーがあります。長距離用ランニングシューズです。前身のSirent Hunterはトラックコート用のスパイクシューズですが、HANZOは公道用のフラットシューズです。
これは上位モデルのHANZO Rのソールです。三角形のパターンが特徴的です。
sizeとwidth
NB HANZOのサイズは23.5~29cmです。個人的に重要なwidth=幅はDと2Eです。Dがアメリカンスニーカーの標準、2Eがやや広めの日本人標準というところです。ぼくのベストサイズの4Eはなかった! まあ、ぼくにはトレイルラン用のMT410がありますから。
NB HANZOの使用レビュー by 元陸上部員
さて、ここからO氏のレビューをシューズの実機と共に紹介します。各部の消耗度から使い込み度が分かります。
ちなみにこの実物はNB HANZO S V1です。ロゴのデザインやカラー、ミッドソールの形状がV2と異なりますが、コンセプトは変わりません。高速軽量フラットシューズです。
アッパーは柔らかめ
ハンゾーのアッパーはメッシュ系の合成繊維でサイドからトゥまで柔らかめです。上のように経年でアッパーがくたびれると、形がすこし崩れます。その分、足へのフィット感は上々です。
アッパーのサイドビューです。
Nロゴは控えめ、靴底の厚みは普通です。
ヒールは硬め
HANZOのアッパーはワンピース構造でなく、前、中、後ろの3ピース構造です。で、前の部分の柔らかさと裏腹にヒールのカップ部分の補強材はけっこう硬めです。実際、ここだけは全く型崩れしません。
多分、この補強がないと、下地の軽さと柔らかさのせいで形がすぐに潰れます。
インソール
HANZOのインソールはスタンダードなものです。公式ページの説明にはこの部分の特別なPRはありません。
そして、このインソールは糊付けで外れません。まあ、力づくでべりっと剥がせば外せますけど。洗濯やインソール交換の際には注意しましょう。
アウターソールとミッドソール
上記のようにHANZO Sのアウターソールは小さな三角形パターンです。
アウターソールのPRは公式ページに豊富にあります。ここがNB HANZOの売りの一つです。”DYNA RIDE”というテクノロジーです。グリップ感はかなり強めです。ウェットの土以外では大抵の状況でしっかり地面を掴んでくれます。
ミッドソールはV2で大きくアップデートされました。V1のミッドは2ピースでしたが、V2は1ピースになりました。テクノロジー名は”REV LITE”です。これが『滑らかな接地感』を生み出します。衝撃吸収アップ? でも、このV1の衝撃吸収も優秀ですよ。
フィット感
柔らかいアッパー素材のおかげでフィット感は上々です。足の形を自然にカバーします。良い意味で履き心地はスニーカー風です。ナチュラル。
逆に硬いヒールはコーナーでややタイトになって、若干のストレスが踵に発生します。新品のシューズではこれが顕著です。が、実走で素材がこなれたら、痛みは消えました。手でヒールを揉みほぐすのもありです。やりすぎは禁物。
重量は超軽量!
HANZOの上位モデルは超軽量です。この26cmサイズのHANZO Sの実測重量はジャスト170gです。
26.5cmのNIKE ZOOM PEGASUS SW=230g
26.5cmのNB MT410=280g
NIKE ZOOM PEGASUSは10000円クラスのランニングシューズで、そこそこ軽量なモデルです。HANO Sはそれより60gも軽量です。
NM MT410はランシュー寄りのトレランシューズです。これ一足よりHANZO S片足x3個の方が軽量です。
※実際、ぼくも近所のスポーツ店に行って、HANZO RとSを手に取って、その軽さに驚きました。C、U、Tは普通です。
HANZO S 20km/週6で走ってみた
ぼくは定期的にランニングをします。一回の走行距離は20km、頻度は週6日です。つまり、月間走行距離は約500kmになります。数値がやや一般的ではありませんが、そこは元陸上部ですから。
耐久度は普通
この頻度で4ヶ月走ったのが一連のUSED HANZOの写真です。最初にアウターソウルの部分がすり減って、ツルツルになっていきます。
500kmx4ヶ月=2000kmです。ランニングシューズの交換時期の目安が1000~2000kmですから、このHANZOはとくに短命ではありません。
衝撃吸収がすごい!
HANZOの最大の驚きは軽さではありません。その衝撃吸収性です。接地時の足へのダメージがほかの運動靴や安いランニンシューズとは別物です。アウターソールとミッドソールのおかげでしょう。
個人的なHANZO Sの各部のステータスです。メーカーがどのパーツに力を入れたか? ※デザイン等を省く
- アウターソール 5
- ミッドソール 5
- インソール 3
- アッパー 4
- ヒール 3
ミッドソールとアウトソールには”REVO LITE”や”DYNA RIDE”のようなそれっぽいテクノロジー名が付きます。明らかにここが売りです。で、それが宣伝用のキャッチコピーに留まらず、接地感や衝撃吸収にきちんと現れます。
はい、良いシューズです。
HANZOのデメリット
HANZOのデメリットはないか? 大きな不満はありません。ストレスフルなシューズで月500kmも走れませんし。
細かい不満点は3つです。
- 軽すぎる
- 初期のヒールの硬さ
- インソールが外れない
HANZOの上位モデルは170gしかありません。軽すぎる。ゆえに普段の走り方では足が流れてしまい、アウターソールのバネの部分が効果的に働きません。
足を早く動かすより踏み込む力を強く大きくする方がスピードアップには貢献します。つまり、HANZO SやHANZO Rはピッチ走法よりストローク走法向きです。
ヒールの硬さは前述の通りです。
インソールは外れません。カスタムインソールやお気に入りのインソールを愛用する人にはデメリットです。あと、インソールだけ外して漬け置き洗い出来ないのはきれい好きには短所です。シューズの丸洗いはけっこうめんどうですからね。
不満点はそんなものです。
NB HANZOのまとめと総合評価
NB HANZOは日本発の高速軽量フラットレーシングシューズです。SとRは靴職人の監修入りです。こちらがHONZOの本領です。下位のC、U、Tはより万人向けになって、特徴を失います。おすすめはSかRです。
機能面の売りはアウターソールとミッドソールです。グリップ力と衝撃吸収が優秀です。柔らかいアッパーは足を選びません。ただし、初期のヒールは硬めです。インソールは普通です。
NB HANZOの総合評価は5段階の5です。