2021年末よりぼくの愛車がVITUSのカーボンのフルサスからNAGIバイクのクロモリのハードテイルとなりました。
細身のフレームにごつい下り系のタイヤが非常にクールですね。上記の状態で重量は13.5kgくらいです。フルサスカーボンより少し軽くなりました。
ぼくの個人的な感覚ではツーリングやロングライドに最強の自転車はハードテイルのMTBです。2代前のカーボンハードテイルのKONA HONZO改は良く走った。
これは10kg以下でした。乗り心地がクロスバイクやロードバイクよりゆったりどっしりです。快適で快速。
今回のNAGIバイクのIINANは下り系のクロモリハードテイルで、フルカーボンのKONA HONZOより舗装路や上りには不利ですが、軽量ホイールでツーリング号に化けます。
STANS ZTR CREST MK3 29er アルミリムにWTB EXPLOSURE 30cをチューブレスで換装しました。
重量は上記の状態で約12.2kgです。が、足回りはほぼロード系ですから、同重量のクロスバイクや鉄下駄ロードよりするする進みます。
今回、こいつで2022年年始に紀伊半島一周サイクリングに行きました。
ルートは反時計回りで、大阪-和歌山-串本-熊野-志摩-伊勢-奈良-大阪の総走行距離670km、獲得標高5200mの長丁場です。
結果的に3泊4日でトラブルなく回れました。旅のガイド的なものを別記事でまとめるとして、ここでは日跨ぎのロングライドの準備や要点を紹介します。
ロングライドの準備や要点
自転車のロングライドの目安は100kmです。120km説、150km説、200km説などが乱立しますが、切りの良さと常識的観点からぼくは100kmと定めます。
ロングライド100kmを完走するのに特別な技術や体力や自転車は不要です。ママチャリ、電動アシスト、クロスバイク、ロードバイク、ミニベロ、MTBでぜんぜんOKです。
ロードバイクはツーリングには△
長距離サイクリング=ロードバイクの構図が漠然と浮かび上がりますが、これは間違いです。
日帰りのサイクリングにはロードバイクはベターですが、これ以上の超長距離(長時間)や日跨ぎツーリングには微妙です。
ロードバイクは中長距離をすぱっと速く走るための自転車です。だらだらゆったり走るツーリングにはややミスマッチです。
具体的には前傾姿勢の足腰首の負担と視野の狭さが問題です。
これはスペシャライズドのアレースプリントのフラットバーないしライザーバーカスタムです。
ブロンプトンみたいなハンドルを付けて、前傾をかなり和らげましたが、長距離ではけっこう疲れました。やはり、ロードはロードです。
ロード系では一定距離を速く走れても、楽に走れません。3泊4日のサイクリング旅行のお供にはできない。
- ロードの快適化
- MTBの快速化
ぼくの経験では後者の方が理想のツーリング号に近づきます。あと、クロスバイクの高性能化はだいたい交換用ホイールの調達で詰まります。
シートポスト
マウンテンバイクにあって、ロードバイクにないもの・・・「サスペンション!」は模範的回答です。
実際、サスペンションは長距離ツーリングにはほぼ不要です。日本国内では郊外の路面さえが100%でアスファルトです。
たまに旧街道へ入ると、ノイジーな路面に出会いますが。
とはいえ、道はコンクリ舗装で、おおむね平らです。サスの出番はない。むしろ、街中の歩道の段差の方がサスペンションフレンドリーです。
『マウンテンバイクにあって、ロードバイクにないもの』の上級者向けの回答はドロッパーシートポストです。
手元のレバーで事務椅子みたいに上下可変するシートポストです。もはや、MTBの標準装備ですね。
元々、この機構はレンタサイクルの使用者ごとのサドル高の調整の手間を省くために開発されました by 台湾Kind Shockの創業者のおっちゃん。
ロードバイクではサドルポジションを変えないのが常識です。マウンテンバイクではサドルポジションを変えるのが常識です。
で、ツーリングではこの可変機構が非常に効きます。使い方の例です。
- 信号待ちでサドルをベタ下げして、上半身の緊張を和らげる
- 平地でベタ上げして、前傾で漕ぐ
- 下りで少し下げて、重心を落として、視野を稼ぐ
- 適時にサドル位置を変えて、腰や尻のストレスを減らす
ロードバイクのドロップハンドルはマルチグリップだと良く言われます。いろいろな握り方が可能で、疲れが掛からないと。
近い意味でマウンテンバイクのドロッパーシートポストはマルチポジションです。いろいろな座り方が可能で、疲れが掛かりません。
この使い方は用途的には亜流ですが、上記の開発秘話的には本流です。街乗りでフル活用するのはそんなに奇策ではありません。
実際、自走派のマウンテンバイク乗りは体力を温存するために道中のオンロードでこのような使い方をします。
「じゃあ、ロードにドロッパーは?」
個人的には大いにありです。適合サイズのドロッパーシートポストの調達が難ですが。シクロクロスやグラベル用の27.2mmのものを流用するのが現実的ですね。
必然的にエアロタイプのフレームは脱落します。
こんな形のドロッパーはない!
視野の確保の過小評価
ツーリングはスポーツやレースではありません。速さやタイムは二の次です。快適さ、疲れにくさ、ストレスのなさ、不安のなさが大事です。
ロードバイクでは初日はけっこうですが、2日目、3日目あたりがきつくなります。疲れが溜まると、注意力が散漫になる。
薄闇に視野の狭さは命取りだ。
穴、段差、車止め、ポールに渡した鎖、黄昏時にヤバい四天王です。「チェックイン! チェックイン!」と焦るとさらに見失います。
ロードバイクの前傾姿勢と速度域でこの罠に掛かると、パンクないしホイールの破損、さらに前方でんぐり返り、手首or鎖骨ポキンに見舞われかねません。
ぼくがツーリングやロングライドにロードバイクをおすすめしない理由も視野の悪さのせいです。
個人的には日中、100km以内、知った道以外で使おうと思いません。正直、それ以上のコンディションでは不安と怖さしか感じない。
これは自転車乗り的にはぬるく見えましょうが、世間的にはこの感覚の方が正常でしょう。
この理由から前傾のロードバイクよりアップライトなクロスバイクの方がツーリング=長時間走行に向きます。
サドル命
ツーリングやロングライドは長距離で長時間です。ぼくも紀伊半島一周では朝から晩までサドルの上にいました。
- 1日目:11時間30分 190km
- 2日目:9時間 150km
- 3日目:10時間 160km
- 4日目:10時間 170km
1日目が最難関に見えますが、3日目がこの旅のピークです。伊勢志摩国立公園のアップダウン無限地獄が・・・
逆に1日目は大阪、和歌山、有田、御坊、白浜のほぼ平坦な南下ルートで、追い風5mのフォローで意外にイージーでした。
大阪から和歌山は既知のコースですしね。KONAで友が島とか行ったなあ。
で、この行程では連日の8時間騎乗はほぼ確定です。臀部のストレスが尋常ではありません。
そして、スポーツバイクのサドルはケツにはタイトです。ママチャリのふかふかサドルのようなクッション性はありません。
今回、ソフトなサドルを事前に用意できなかったので、即席のスペシャルなサドルカバーを装着しました。
はい、ニット帽+ダウンベストのフードです。見た目は最悪ですが、効果は抜群です。
実際、直前までこれを付けるか付けないかでギリギリまで悩んで、日程を考慮して、最終的に取り付けました。
結果的にこれが正解でした。素のサドルは明らかに尻肉と股間にハードです。穴空きですらない。
サイクリングのロングライドの成否はサドルの快適性に掛かります。いや、サドルに跨り続けるのに耐えられるか寄ります。快適さという概念はそもそもない。
ダウンもニットも体重で圧縮されますが、素のサドルより尻へのストレスを緩和してくれます。
もう一つの懸念の擦れダメージは今回のツーリングでは皆無でした。ええ、ぼくはいつものようにジーパンでしたけど。
尻より腿の張りが深刻です。伊勢志摩国立公園の無限アップダウンが・・・
自転車ロングライド=長時間のサドル騎乗です。自重の尻ストレスの不愉快さは他に類を見ません。とにかく筋肉痛や打撲の痛みではない。不愉快な圧迫感。
擦れはより直接的な痛みです。股ずれのケツバージョン。いや、ケツバージョンも股ずれの一環でしょうか?
尻のトラブルの解決策は立ち漕ぎです。しかし、応急処置でしかありません。しかも、爪先とか膝とか腿に余分な負担を掛けます。
とにかく今回のツーリングのMVPはこのサドルカバーです。理想は柔らかいサドルですが、ジェル入りのやつは破れると地獄です。
ぼくはウレタンを買ってきて、適当なカバーを自作してみようかと思います。
楽な日程
自転車は広義にはアウトドアです。アウトドアの基本は自力救済です。自分でどうにかこうにか帰れることが肝心だ。
とすると、予定をカツカツに詰めるスポーツスタイルはナンセンスです。1トラブルでリタイアしてしまうような旅程は論外ですね。
体力の8割くらいで組むのが正解です。で、今回のぼくの3泊4日の670kmは明らかにオーバーワークです。
- 150km x 4日 = 600km
- 170km x 3日 = 500km
ここらが自転車乗りには妥当でしょう。一般人にはこの半分が適切です。
一回であまりカツカツにどばーっと走ると次に行きたくなくなります。少し物足りなさを覚えるくらいが長続きのコツです。
ロングライド優先順位
自力で帰還 > 日程 > サドル > 視野 > 車種
ぼくは年末の強風に自作のダイニーマ輪行袋を飛ばされて、自走以外の帰還方法なしで回りましたが、みなさんはちゃんと輪行袋を持参して、もしものときに備えましょう。
帰れればまた出かけられます。