ピカピカの新しいニューバイクYADEA KS6 PRO JPがこの秋からぼくの自転車編成に加わりました。
二輪=”bike”です。つまり、電動キックボードも広義にはれっきとしたバイクです。この呼び方は間違いではない。これが三輪や四輪に見えます?
まあ、オートバイ乗りと自転車乗りはキックボードを『バイク』と呼ぶことにもやもやしますが。あの方々のバイク観は非常に保守的です。
で、この新鋭バイクの平地の走行距離の実際の性能は阪神間バッテリー100%使い切りロングライドや日頃の普段使いで判明しました。
10kmの実走タイムが約45分、バッテリー消耗の燃費が平均550m/1%、ほぼ平坦な大阪府都市部のようなエリアでは電池100%で55kmの走行が可能です。
電動ガジェットのカタログスペックの鯖読みは恒例ですが、このYADEAのキックボードの走行性能はおおむねメーカーの公称の通りです。
では、お次の課題は何でしょう? はい、上りの実力テストですね。この特定小型原付キックボードで峠に挑みます。それがバイク乗りのサガです。
電動キックボードの登坂能力
日本では電動キックボードのような小型のスマートモビリティは原付に属します。代表選手かつ先駆者はセグウェイです。
この電動モビリティの第一世代の登場から20年の歳月が経ち、特定小型原動機付自転車という新ジャンルが2023年7月1日に解禁されました。
免許 | 速度 | 出力(モーター) | 排気量(エンジン) | |
特定小型原付 | 不要 | 20km | 600W | – |
原付一種 | 必要 | 30km | 600W | ~50cc |
原付二種 | 必要 | 60km | 1000W | 51~125cc |
ぼくのYADEA KS6 PRO JPはその新ジャンルの第一世代です。前モデルのKS5は旧来の原付一種ですが、最新型は特定小型原付です。
最大時速の差はありますが、モーターの上限はともに600Wです。うちのキックボードは定格500Wで、重いパワフルなモデルです。
スタートから数秒間の加速度はほぼ電動スクーターです。立ち上がりの10mは街中の乗り物で最速です。
ただし、スピードが時速20kmに達すると、時速30kmの原付一種や時速24kmの電動アシスト、実質速度無制限の速い人力自転車に抜かれます。
あと、原付一種と同様に特定小型原付はソロ専用です。板を大きく広くしても、車輪を三つや四つに増やしても、彼女や子供を乗せられません。ニケツ禁止。
ぼくは個人的に重い方をおすすめします。→電動キックボードのおすすめモデル 買ってはいけない商品の特徴
YADEA KS6 PRO JPの登坂性能は15°
YADEA KS6 PRO JPのカタログスペックの登坂能力は15°(25%くらい)です。
この角度は分度器界では大した数値ではありませんが、人間界では絶望的なゲキサカです。
人力自転車でこの坂を上ると相当な体力を消耗しますし、電動キックボードでは電池を盛大に消費します。半端な出力のものでは登坂自体が怪しくなります。
実際、軽量なRICHBIT ES1のカタログや公式ページには登坂能力の表示やPRがありません。「察して」というメーカーの配慮でしょう。
ES1の定格250Wのモーターは平地でちょっと遊ぶのには適しても、クイックな発進やきつい上りには適しません。
街中でこの15°級の傾斜は橋桁や横断歩道のスロープ、ホムセンとかの屋上駐車場への上り、川の土手の法面などで、たいてい『自転車は押して通行してください』の注意書きを伴います。
公道のゲキサカの目印はコンクリ舗装と円形の滑り止め加工です。自転車乗りは愛憎をこめて、これを『ドーナッツ』と呼びます。いや、むしろ、たこやきやない?
ところで、原付一種が悲鳴を上げるこの酷道308号線は今回の試走コースから外れました。遠すぎ、きつすぎ、溝深すぎで電動キックボードにはムリゲーです。※とくに下りが危険です。
清滝峠へ自走&ヒルクライム
うちから最寄りの峠は箕面の勝尾寺か池田の五月山です。どちらも自転車の名所です。ぼくもマウンテンバイクでよく走りに行きます。
ところが、箕面も五月山も終日オートバイ禁止です。電動キックボードの扱いがどうなるかは定かでありませんが、現地でダメ出しされるのはご勘弁です。
走行距離チャレンジで西の神戸方面に走ったので、東の奈良方面へ――大阪府の四条畷市に向かいました。
阪奈の境界にあるのが清滝峠です。生駒山系の峠の中では割と緩い上りです。初級=清滝峠、中級=十三峠、上級=暗峠奈良川、超級=暗峠大阪側というのが自転車界の認識です。
清滝峠も数年前まで二輪走行禁止でしたが、2020年に長年の規制が解除されました。
電動vs清滝峠
清滝峠ヒルクライムのデータです。数値はGoogleマップ自転車ルートによります。
上の写真の場所はヒルクライムのスタートの中野ランプ北より少し手前の四條畷市立総合体育館サン・アリーナ25の前です。この辺から上りがじわじわ始まります。
距離は3.6kmと出ますが、Googleマップではふもとの自転車ルートや歩行者ルートが直で出ず、北側に二度ほど迂回します。迂回なしの直の実走距離は約3.3kmです。
3.3/220=平均6.6%の上りです。道中に登坂能力の限界の15°のドーナッツセクションはありません。
ルートの序盤の国道163号の脇の長いアッパーストレートです。ここでフルスロットルの走行速度が13~15kmまで落ちます。
清滝天満宮のあたりで道が緩やかになり、R163から離れて、ぐねぐねのカーブになります。所々で速度が落ちますが、おおむね時速15km以上をキープします。
自転車のヒルクライムの一般的なゴールはバス停の先の逢阪の信号です。毎度、ぼくはそこから50m先のお地蔵さんまで行きます。
左がお地蔵さん、右が茶色いお地蔵さんです。
電動キックボードの清滝峠のタイム
今回、下から上までGoProで動画を撮ったので、スタートからゴールをきっちりした時間を切り出せました。
中野ランプ北から逢阪信号までのタイムは途中の信号ひっかかりなしで13:05でした。
3.3/13:05=平均時速15km
原チャリには抜かれますが、人チャリには抜かれません。優勝は電動キックボードです。ぼくの清滝峠の圧倒的KOMだ!
上り坂のバッテリー消耗
上りの速度は満足です。気掛かりはバッテリーの消耗です。
スタート直前で56%、ゴール直後で32%です。つまり、バッテリー消耗は24%となります。すなわち、電池1%強で上り10mと考えられます。
これは平地の4倍速の減りです。上りの燃費の悪さは伊達ではない。人力ヒルクライムのしんどさの原因が知れます。
ちなみにこの数値はキックボード重量22kg+服装荷物込みの乗り手重量71kg=93kgの結果です。軽い人や女子はもっとバッテリー消費を抑えられます。
下りで再チャージ
清滝峠の下りはふもとまでフリーフォールです。キックボードみたいな小さい車輪のバイクのダウンヒルは非常にスリリングです。
しかし、この長い下りは峠攻めのタイムアタックのチャンスではありません。もう一つの電動らしい機能を試すチャンスです。
YADEAのブレーキはドラム式+機械式ディスクブレーキ+電動ブレーキのハイブリッドです。電動ブレーキは電源オフ時に機能しないので、このようなハイブリッドが採用されます。
このおかげで回生ブレーキの機能があります。しかし、街中の短い下り坂ではこの実力がはっきりしません。下りオンリー3000mの快速ダウンヒルはこの性能検査には最適です。
回生ブレーキをアプリから『弱』にして、普通に上から下まで走りました。
32→35%です。上りの消耗の1割オーバーが下りで再チャージされました。これはぼくの予想より優秀です。
バッテリー3%は平地では1.5kmのスタミナです。帰路の最終盤の安心感に貢献します。電動モビリティの電池切れはとにかく絶望ですから。
この日のバッテリー消耗の目安です。
- 出発前 82% 0km
- 中野ランプ北上り前 56% 17.5km
- 清滝峠ピーク 32% 21km
- 中野ランプ北下り後 35% 24.5km
- 帰宅後 6% 42km
42000m/76+3=531m/1%の燃費でした。行きは追い風すいすい、帰りは無風です。
電動キックボードで峠のヒルクライムまとめ
- 二輪走行禁止の峠はだめっぽい? ※未確認
- 300mくらいの峠越えは余裕
- ヒルクライムは中級の自転車乗りくらいの速さ
- 上り10mで電池1%
- 下りで回生ブレーキがけっこう効く
これでこのYADEA KS6 PRO JPの性能テストはほぼ完全です。