電動キックボードのオーナー、自転車乗り、チャリ魔改造職人、短足ゴリラと多数の顔を持つのがこのB4Cです。
私はYouTubeのために自撮りを始めて、あらためて顔のデカさ足の短さに絶句しました。正直、この体形はスポーツバイクには向きません。
しかしながら、自転車は楽しみの一つですし、眼鏡と同じく体の一部です。趣味と実益を兼ねる。乗り物全般が昔からダメですから。
電動キックボードは自転車か?
日本では電動キックボードは原動機付自転車です。『自転車』の名を持ちますが、軽車両とは認定されず、『原付バイク』と区分されます。
「それは自転車ではない」
フォーマルなサイクリストはこう述べます。ええ、自転車界は非常に閉鎖的で保守的で脳筋的です。
しかし、ぼくの感覚では電動キックボードは自転車の仲間です。自転車趣味を壊しません。
自転車乗りは自転車を「バイク」と称しますが、オートバイ乗りはそれにもやもやします。
「チャリをバイクてw」
では、ぼくはキックボードを「バイク」と称して、両者の背中をもやもやざわざわさせましょう。
「キックボードをバイクてww」
バイク=二輪ですが? キックボードは二つの車輪で走りますけど? そちらの勝手な思い込みがナンセンスではありませんか?
と、秋の夜長にキックボードの精霊の導きによりて、『チャリ活の味変』という粋な句がふと浮かびました。ほんとにこの『バイク』はマンネリ気味の自転車活動の良いスパイスです。
原付未満自転車以上
電動キックボードを含む小型の電動モビリティの大枠はいわゆる『原チャ』です。え、『原チャリ』ですか? うちの周りでは聞かないなあ。
原付は速度と出力でさらに3つに分かれます。
最大速度 | 最大出力(モーター) | 排気量(エンジン) | |
特定小型原付 | 20km | 600W | – |
原付一種 | 30km | 600W | ~50cc |
原付二種 | 60km | 1000W | 51~125cc |
原付の大半はおなじみの原付一種です。二種はレアな珍獣で、たまに峠とかに出没します。
特定小型原付はぴかぴかの新鋭です。2023年7月1日に鳴り物入りに解禁されて、公道に解き放たれました。うちの愛機のYADEA KS6 PRO JPはこの特定小型原付モデルです。
最大時速は20kmですが、出力は定格500Wです。立ち上がりの加速は電動スクーターと同等ないしやや有利です。
安全装置のロックを外す最初の人力キックのおかげでスタートダッシュは原チャに勝ります。車体の軽さも加速に有利だ。まさに10mはおれのターン!
その後、何秒間かリードして、時速20kmに達すると、原付や電動アシストに次々と追い抜かれ、最後に人力自転車とデッドヒートを繰り広げて、つぎの信号で仲良く引っ掛かります。
大阪-神戸の電動キックボードの電池消耗チャレンジの旅の正味の走行時間はほんとにいつものゆったりサイクリングペースです。
タイムパフォーマンスはそう変わりませんが、肉体の疲労度は全く違います。50kmライドで最も疲れるのは親指です。
電動キックボードは運動にならない?
フォーマルな自転車乗りはしんどさを美化して、らくちんさを蔑視します。かつて栄華を極めた昭和スポ根的価値観はやわではありません。
電動アシスト自転車やフル電動キックボードはこの思想とは相いれません。でも、なぜか電動ギアやサイクルコンピューターはスルーされます。それは変速や計測を楽にするものではないと?
スポーツタイプの電動アシスト自転車が運動にならないという一時の風説は絶滅しましたが、電動キックボードはまだまだチート扱いです。親指しか使わんやん。
たしかに自転車よりらくちんです。しかし、原付一種よりらくちんではありません。
二輪は一定の速度で安定しますが、低速ではふらふらします。時速30kmより時速5kmの方がテクニカルだ。
自転車のスタンディングはMTBの基礎技術です。低速域のコントロールをしっかり習得しないと、山中でまともに遊べません。
で、低速でバランスを取ることは体幹を鍛える良い方法です。電動キックボードのライドではこの機会が頻繁に訪れます。
例えば、ぼくのYADEAのキックボードの後輪モーターは時速3km以上で起動します。それ以下では安全装置が働いて、トリガーが反応しません。
結果、人力キック、けんけん乗りの機会が多く発生します。これはもも裏のハムストリングには良い刺激です。
ぼくが性能試験的にチャレンジしたバッテリー100%使い切り、実走53kmライドの疲労度は自転車のサイクリングの半分くらいです。
汗は出ませんし、心肺は疲れませんが、運動効果はそこそこあります。そもそも立ちっぱなしで吹きっさらしですし。
反面、キックボードで完全に楽をしようと思うと、原付の便利さには勝てません。まあ、サドルシート付の二輪には尻のストレスという別の負荷がありますけど。
また、キックボードの乗車姿勢はスポーツタイプの自転車やオートバイよりナチュラルです。『腰を置いて、前傾を取る』のは人体には非常に不自然です。
肩凝り、尻の衣擦れ、痔はキックボードの直立不動には無縁です。
直立不動? いや、おれはグーフィーだぜ! キャー、すてきだわー!
と、ライドしながら足の置き方をいろいろ試しましたが、横並びかちょい前後に落ち着きました。
通勤通学にはほぼ最強
自転車の通勤通学、チャリ通はダイエットに最適です。ぼくが人生の中で最も痩せたのは高校時代に片道8kmの通学路をママチャリで通った時代でした。
2020年以降のコロナの中で満員電車やインドアイベントが地獄のように忌避されて、ソーシャルディスタンスライクな自転車やアウトドアが見直されました。
結果、自転車製品やキャンプグッズがめちゃくちゃ売れて、シマノやスノーピークの売り上げがえらいことになりました。今やどちらも反動で絶不調ですが。
チャリ通は良い運動になります。つまり、けっこうな不可です。最近の夏の炎天下にはただの外出さえが危ぶまれますから、チャリ通は7~9月にはオーバーワークです。
そして、走行時間は体調と気分で変動します。一時限目がタルい数学であれば、足は自然と遅くなり、チャイムから約二十分後が始業になります。たしか二十五分の出席が単位OKになったので。
他方、電動キックボードは体調や気分の影響を受けません。逆風も上り坂も混雑もスルーして、おそろしい安定度で進みます。最初の1kmのペースで到着時間が分かります。
おかげで寝坊の遅れを気合で取り戻すとか、急な腹痛に最寄りのトイレまで必死のパッチで全力疾走するとか、慣れで走行タイムを縮めるとかできません。
チャリ通の秘奥義の『信号のタイミングを見極めて、赤信号をぎりぎりパスする鬼漕ぎ』も不可です。実際、これで数分は変わりますし。
電動キックボードの変動は速度や時間に来ず、バッテリーの消耗度にのみ現れます。気合と体力、さじ加減といい塩梅でタイムを調整できないのはこの乗り物の弱点です。
あと、身体が温まりませんから、冬のライドは極寒です。当然のごとく積雪は最大の敵です。
速くも遅くもない
「遅くするのはOKでしょう?」
ところが、遅くするのも意外と難です。
自転車で10km以下でたらたら走るのはそう大変ではありませんが、電動キックボードで低速走行するのはかなりストレスフルです。
理由は乗車姿勢のためです。キックボードにはサドルやシートがありません。支点は自転車やオートバイの手と足と尻の3点バランスでなく、手と足の2点バランスです。
で、この状態で水平を保ちながら、まっすぐに低速で走ろうとすると、意外と体幹を使います。軽いスタンディングだ。
とくに特定小型原付の歩行者モードの時速6kmでたらたら走るのは精神的にも肉体的にも難です。低速走行は電動キックボードのおいしいところではない。
結果、一定距離の走行時間のばらつきはほぼ出ません。誰がどう乗っても、速くも遅くも走れない。30分は30分です。
フルマラソンを1時間59分40秒で走り切るエリウド・キプチョゲの方が特定小型原付の電動キックボードより速く通勤通学できます。
それから、キックボードの置き場の問題があります。原付用の駐輪場があるか? そもそも原付通いが許可されるか?
「自転車のラックに1台分の空きはあるけど、原付のスペースには空きはありません」
こういう事態も往々にあり得ます。→電動キックボードを買うときの注意点と問題点 性能より100倍大事な3つのこと
あと、自転車は条件次第で3人乗りまでOKですが、特定小型の電動キックボードは1人用です。原付=にけつ不可です。