電動キックボードのおすすめモデル 買ってはいけない商品の特徴

ついに電動キックボードの時代が到来しました。

歩道爆走電動キックボード
歩道爆走電動キックボード

フォーマルなサイクリストは「それは自転車ではない」とごねますが、これは原動機付『自転車』ですし、二輪=”bike”です。

「チャリ活の味変」という言葉を着想した偉大な詩人は私です。

ぼくの感覚では自転車の範疇ないし延長です。実際、ヤマハの電動アシストフルサスペンションマウンテンバイクとこの電動キックボードの二択でしばらく迷いました。

で、諸々の自転車活動の経験から電動キックボードの性能や特徴や方向性が何となく分かりました。個人的におすすめのモデルは重いやつです。

用途別の電動キックボードのおすすめモデル

「どんな自転車がおすすめですか?」

「ロードバイクとマウンテンバイクのどちらがおすすめですか?」

「やっぱり、電動アシストがおすすめですか?」

自転車乗りを困らせる質問の列強です。バイアスを掛けず、ポジショントークを行わないなら、まともな自転車乗りは「目的による」と答えます。

人におすすめを聞くときの注意点

MTBやロードバイクのような自転車はスポーツ用品で競技用機材です。折り畳み自転車やママチャリは移動手段です。

近所への買い出しにフルサスはオーバースペックですし、レースにママチャリはイレギュラーですし、繁華街の散策にロードはミスマッチですし、北海道一周2500kmにミニベロは論外です

2022年8月羅臼にて
2022年8月羅臼にて

「どんな自転車がおすすめですか?」は「どんな靴がおすすめですか?」や「どんな調味料がおすすめですか?」と同意です。

では、あなたは「塩」との答えを得て、ケーキの生地に塩をぶち込みますか?

電動キックボードの選択肢は少ない

「どんな電動キックボードがおすすめですか?」

フォーマルなボーダーは答えに窮しましょうが、幸いそんな人は多くありません。電動キックボードのプロ選手や競技レースがないから。

そして、公道へ合法的に乗り出せる電動キックボードないし電動モビリティは自転車ほどに雑多で豊富ではありません。ぱっと思いつくメーカーはセグウェイくらいです。

2023年7月1日の法改正以降に適応する特定小型原付モデルはなおさらです。今のところ、手堅いメーカーものの市販品は5つくらいです。おまけに品薄、在庫切れ、出荷遅れです。

ぼくは9月末からキックボードを検討し始めて、ヤフオクやメルカリを定期的にチェックしましたが、1週間で2台の出品だけ確認しました。その1台がこのYADEA KS1 PRO JPです。

中古品を買うときの注意

オークションや中古で商品のサンプルの画像しか掲載しないストアや出品者は完全に地雷です。

とくにヤフオクには数台の電動アシストと電動キックボードの詐欺案件が常態化します。1円スタート、送料実費(98000円)みたいなやつです。

現物の写真、内容物の一式の記載、配送方法の入力なしの通販は全くおすすめでありません。個人間取引では出品の理由や経緯の記載も大事です。実際、ぼくは出品時にはそれを欠かしません。

あと、通販の電動キックボードにはもれなく最大レベルの段ボールがおまけで付いて来ます。45リットルのゴミ袋x3がパンパンです。

ヤフオクの中古の電動キックボード
ヤフオクの中古の電動キックボード

それから、新車の店頭購入では不要ですが、中古の個人売買ではナンバープレート及び自賠責の手続きのための廃車届や譲渡証明書の有無の確認が必要です。

スマート家電の問題点

さらに個別の事例が発生しました。アプリと車体の同期エラーです。当初、ぼくのYADEAのアプリのアカウントが台数制限エラーで弾かれました。

  • アカウント作成〇
  • ログイン〇
  • QRコードで車体と同期×
  • Bluetoothで車体と同期×

電動キックボードの本体とアプリの同期がうまく行きません。非同期の状態では走行は可能ですが、電子ロックのON/OFFや回生ブレーキの設定が不可です。

4kmで10%減
4kmで10%減

同期エラーの理由は前の持ち主さんがアカウントの解除を忘れたためです。この例からYADEAのキックボードの制限は1台/1人のようです。

この凡ミスはスマート家電あるあるで、日常的にあり得ます。特段の大事ではありません。中にはスマホの個人データを消さずにフリマで出品するおおらかな人もいるくらいですし。

ぼくはQRコードの画像をGoogleストレージに置いて、共有アドレスを取引連絡で教えて、「これを読み取って解除してね」とお願いして、難を逃れました。

重くて強いやつか軽くて弱いやつか

電動モビリティの機械的な性能は旧来の内燃機関の乗り物に肉薄します。いつの間にかテスラの時価総額はトヨタの3倍です。

電動スクーター、電動モペットは昔からあります。とかく爆音を重視する二輪の風潮にはこの静かなスマートモビリティはあまりマッチしませんが。

昨今の電動キックボードは性能的には電動スクーターと互角です。一種モデルや二種モデルは新参の特定小型より豊富です。

メーカーはこの機械的な性能をセーブして、道路交通法の縛りの中で商品を展開します。最新の特定小型原付の時速はMAX20km、出力はMAX600Wまでです。

この縛りと車体のサイズの規定からキックボード型の『ガワ』やパーツ類はテンプレ化します。構造のシンプルさのせいが個性が削ぐ。

この状況はお手軽スペックのスマホのコモディティー化に通じます。CPUやメモリは各メーカでほぼ共通、違いは色とデザインとネーミング、はて、明確な違いは何?

むりくりに違いを出すと、バルミューダの二の舞になります。ごりごりに尖りすぎた60万のセグウェイ第一世代は全く売れなかった。

YADEAのKSシリーズは型番の通りにもう第6世代です。ぽっと出の一発屋の決戦兵器ではありません。むしろ、枯れた技術です。ガンダムではなくて、ジムやザクだ。

電動キックボード
電動キックボード
  • 板:アルミ
  • 車輪:10インチミニバイク用
  • ブレーキ:自転車用機械式ディスクブレーキ
  • サイズ:縦100cm強、幅20cm前後
  • 機構:ハンドルステム折り畳みタイプ

電動キックボードのテンプレートはだいたいこの通りです。カタログの横幅の50cmはハンドル幅であって、ボード幅ではありません。ボード幅はだいたい20cm前後です。

ボード、車輪、ハンドル、保安部品、ナンバープレートでは明確な違いは出ません。で、この『違い』は『重さ』を意味します。

重さはバッテリーとモーター

典型的な電動キックボードからバッテリーとモーターを外して、ガワだけを残すとしましょう。おそらく上記の様式では重さは7~8kgくらいです。

ということで、モデルの重量差はモーターとバッテリーの仕業です。重いモデルの方がパワフルなモーターと大容量のバッテリーを搭載します。

電動キックボードの後輪モーター
電動キックボードの後輪モーター

代表的な特定小型原付キックボードの重いモデルと軽いモデルの重量の比較です。

  • YADEA KS6 PRO JPの重量=22kg
  • RICHBIT ES1 Proの重量=13.8kg

8.2kgの差はあれど、寸法はほぼ同じです。アルミのボードを半分にしても、カーボンにバージョンアップしても、絶対に8.2kgもダイエットできません。

それぞれの最大航続距離と出力です。

  • YADEA KS6 PRO=最大60km、定格500W
  • RICHBIT ES1 PRO=最大25km、定格250W

軽いES1のスタミナとパワーは重いKS6の半分です。重量差=モーターとバッテリーの差がもろに影響します。

8.2kgはライト級とスーパーフェザー級の体重差とほぼ同等です。五階級違いは試合になりません。

車体全体の重さ比率は1.6倍です。63kg vs 100kgはやっぱり試合になりません。

で、速度は法律で制限されます。速さは同じです。時速20kmは250Wより弱いモーターでも可能です。

他方、走行距離、加速、登坂能力の差は歴然と広がります。

250Wのモーターには川沿いの土手クラスの上りが重荷です。そのせいかES1の公式ページには登坂能力の記載がありません。

KS6のページには『登坂能力15%』の記載がちゃんとあります。阪神間の坂道も六甲おろしの逆風も余裕でした。そして、スタートダッシュがキレキレです。

軽いES1の登坂能力の未記載は「平地で楽しくちょい乗りしてください~」という本音の現れでしょう。

反対に同じ会社が販売するCOSWHEEL MIRAI T Liteの公式ページには『業界最高峰の登坂能力 原付モデルと同等の500w強力モーター』の文字が踊ります。※原文のママ

500Wの登坂性能と回生ブレーキの実力は? →電動キックボードの登坂性能をロードバイクと比較してみる

で、やっぱり、MIRAI T Liteの重さは22kgです。この性能が19kg台になるのはカーボンフレーム、カーボンパーツのプレミアムモデルでしょう。お値段は+10万円でしょうが。

また、軽量タイプの電動キックボードは軽くなりますが、小さくなりません。取り回しの苦労は20kgオーバーのものと一緒です。→電動キックボードを買うときの注意点と問題点

自転車の代替には重いモデルがおすすめ

バッテリー100%消耗の大阪-神戸の50kmライドで重い方の電動キックボードの使用感は完全に分かりました。本格モデルがシティサイクルやおばちゃんの電動ママチャリと五分五分です。

軽い方の特定小型の電動キックボードの体験は電動アシスト自転車未満となります。最悪、上り坂はエスカレーター風味です。とにかく250Wですからねえ。

カタログ数値からの予測ですが、スタートダッシュと上り坂で充実感が激減するのは確定的です。

さらにどちらも平地で最高速度に達すれば、移動手段として非常に安定しますが、楽しさはそんなにありません。ちょっと頑張る歩道の自転車にギリ競り負けます。

電動キックボードのおいしいところを味わうならば、重い方を選びましょう。軽い方はほんとの近場のちょい乗りor遊び用です。

以上の理由からぼくのおすすめは重い方の電動キックボードです。