スポーツバイクのベストシーズンはアウトドアのベストシーズンと一致します。BBQ、釣り、登山、サイクリング、そして、王道のキャンプです。
このキャンプとサイクリングを一挙に楽しめる方法があります。それがバイクパッキングです。海外ではすでにメジャーな自転車スタイルです。
日本のバイクパッキング熱はまだまだ微温的です。現在のスポーツバイクブームの牽引役はロードレーサーです。ヒルクライムとロングライドが人気です。
しかし、速く走ること、長く走りことばかりが自転車の楽しみ方ではありません。チャリンコのふところはそんなにせまくない。
『走行距離』や『巡航速度』や『獲得標高』は純粋な数値です。ゆえになにかのふとした拍子に無味乾燥な記号になりえます。そのとき、スポーツは終わり、ホビーが始まります。
このように日本のバイクパッキングは中級者やコアユーザーのあいだでじわじわと広がりを見せます。海外の爆発的なブームには及びませんが、かくじつに右肩上がりの軌道を描きます。
バイクパッキング=軽装の短期自転車ツーリング
バイクパッキングは自転車業界の新しいキーワードです。2010年ごろに欧米で誕生して、この10年未満の短期間で世界のバイクシーンを席巻します。
このトレンディーなニュージャンルの実態は『短期自転車ツーリング』です。古参の自転車愛好家はここで首をかしげます、「昔からあるけど?」て。
実際問題、日本のスポーツ自転車のブームのさきがけはツーリングスタイルです。バイクのジャンルは「ランドナー」です。フランス語に由来します。
このあと、高速型のスポリティーフ、長期旅行型のグレートジャーニー、キャリア付きマウンテンバイクなどなどが時代とともに現れます。
オールロードとウルトラライト
で、このジャンルの最新イマドキスタイリッシュがグラベルバイク、アドベンチャーバイク、ぞくにオールロード系の自転車です。

TREK CHECKPOINT
最近のモデルはおおむねキャリア用ダボ穴あり、ワイドクリアランス、ディスクブレーキ、スルーアクスルのドロップハンドルバイクです。
これと超軽量のウルトラライト系のアウトドアギアを組み合わせれば、古風な『短期ツーリング』をイマドキの『バイクパッキング』に変換できます。
しかしながら、こんな定義は目安にすぎません。『ランドナーのツーリング』はやや保守的な観念に捕らわれますが、バイクパッキングは圧倒的に自由です。

友ヶ島の道
紫のマットと赤い寝袋はふつうのキャンプ用ですが、ベージュのテントがソロ用のウルトラライト系です。じゃあ、このスタイルはよゆうでバイクパッキングです。
パッキングのかなめ、バッグ類
フォーマルなバイクパッキングのかなめは無数のバッグ類です。ある意味、こちらがもう一人の主役です。
旧来のツーリング用のバッグ類は荷台やキャリアを必要とします。大容量のパニアバッグが典型です。どこそこ一周のたのもしいおともです。

cannondale タンデム
でも、旧来のスポーツバイクにはキャリアや荷台の取り付け穴は存在しません。ロードやMTBは競技用です。
オールロードの原種的立場にあるシクロクロスのバイクも競技用機材です。太いタイヤ、ディスクブレーキなどはグラベルに通じますが、荷物の積載は専門外です。
カーボンフレームはなおさらです。キャリアや荷台との相性が最悪です。必然的に旧来のツーリングバッグの取り付けが一筋縄じゃなくなります。
バイクパッキング用のバッグ類は基本的にアタッチメント式です。台座なし、ダボ穴なしで車体の各部に取り付けられます。
そして、旧来のツーリング用のバッグより圧倒的にスタイリッシュで軽量でコンパクトです。ファッション性の高さは持ち味のひとつです。
バッグの種類
さきほどのTREKの最新モデルに再登場を願いましょう。フル装備の本気のオールロードです。

バイクパッキングのバッグ例
- 大型サドルバッグ
- トップチューブバッグA
- トップチューブバッグB
- フレームバッグ
- フロントバッグ
- フォークサイドバッグ
です。ごらんのようにフレームのすきまを最大限に活用します。バッグがパニアのようにでぼっとはみだしません。これがスタイリッシュさのひけつです。
荷物の分け方のポイントは軽いものを末端部に、重いものを中心部に入れることです。シートや着替えは1や5に、ポールや工具、調理器具などは2、3、4にと。
そして、バッグを取り外せば、本来の走行性能を気軽に取り戻せます。キャンプを設営して、荷物を置いてしまえば、冒険にでかけられます。

ダンジョン
一泊キャンプの装備
バッグをかんたんに着脱できる=組み合わせを気軽に変えられる、です。すなわち、用途や目的から逆算して、パッキングのパターンを細かく最適化できます。
大容量のパニアやサイドバッグは対照的です。すべてを大きなふくろのなかにガボガボのみこみます。ゆえに組み合わせの妙、パターンの楽しみ、差し引きのだいごみはありません。
ちょっとしたお買い物にでっかいボストンバッグを持っていくのはスタイリッシュではありません。ショルダーバッグやクラッチバッグが正解です。
では、はじめての一泊キャンプを想定して、必要なものをピックアップしましょう。初夏、ソロ、野営、自炊ではなしを進めます。
寝袋
野外宿泊の最重要アイテムが寝袋です。テントやシートマットではありません。寝袋がマストです。
ウルトラライト系のテントはおうおうにペラペラです。雨風をしのげますが、底冷えを防げません。野外の冷え込みを舐めない。
3シーズン用のものを買えば、真冬や高山以外の外泊には対応できます。屋根付きのあずまやみたいなものは出先の公園やキャンプ場にあっても、ふかふかの寝袋はついぞありません。
マット
つぎがマットです。底冷えを防ぎ、寝心地をよくします。コンクリートの地面も砂地の地面も夜間には冷たくなります。
日中が25度であれば、夜間は15度、地表は10度まで下がります。地面とじかに触れあうのは真夏以外には禁物です。
テント
最後がテントです。雨風をしのぎ、虫の侵入をふせぎ、プライベートな空間を作り出し、フォトジェニックな風景を演出します。

バイクパッキングのイメージ
ベストシーズンの週末、連休、休祝日のキャンプ場や祝初施設は混みます。プライベート空間を作れないと、人様の視線のプレッシャーやこまかな物音にさらされます。
調理器具
自炊をするなら、調理器具を携帯しましょう。バーナー、クッカー、はしが三種の神器です。
ラーメンを煮て、挽きたてコーヒーを飲もうとすると、こうゆう装備にならざるをえません。

調理器具とバーナーとGW
これは日帰りのやっつけ京都ラーツーの調理器具一式です。コーヒーミルもポットもおなべもふつうの台所用です。しかし、バーナーとガスだけはウルトラライトだ!
アウトドア用のクッカーセットを買えば、ぜんぜんコンパクトにできます。
ぼくは目移りして決められません、ははは。
食材は現地調達です。生ものの持ち出しはちょっと不安です。結局、道中のトイレ休憩やおやつタイムでどこかのスーパーや商店へ寄りますし。

キャンプ食材購入
はい、一泊キャンプにキャベツ半玉は完全に余ります。生野菜はわりにかさばる! ひとつ賢くなりました。でも、みかんは翌日に自走の帰路で絶好のエイドになりました。

みかんはエイドにぴったり
あとは常識的な一泊旅行の必須品です。かんたんな着替え、タオル、はみがき、お金、スマホ、予備バッテリーとかです。
目的から逆算しよう
これらをうまくパッケージすれば、大型サドルバッグ+フロントバッグorフレームバッグで行けます。リュックを担げるなら、さらに減らせます。
逆に上の悪いラーツー例のように荷物をもりもりにしても、距離を短くするとか、日帰りにするとかすれば、疲労度と満足度の釣り合いを取れます。
用途と目的から逆算して、ベターなバッグの組み合わせを考えて、楽しくスタイリッシュにライドする、それがイマドキ自転車ツーリング=バイクパッキングです。
少し前までこの手のウルトラライトギアや自転車用のパッキングバッグはブランドものばかりでしたが、この2、3年でノーブランドの安価なものがアマゾンや楽天に定着しました。
テント1万、バッグ5千円が相場です。モンベル! スノーピーク! アピデュラ! オルトリーブ! てネームバリューにこだわらなければ、これらを十分に活用できます。
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