自転車は汚れます。きれいに乗ろうが、晴れた日の舗装路ばかりを走ろうが、屋外の汚れを吸い寄せて、あげくに汚れます。ハキモノとおなじです。
で、靴と同じように定期的にクリーニングやメンテナンスを行うと、気分を一新できますし、製品の寿命を延ばせますし、こまかい車体トラブルを早期に発見できます。いいことずくめです。
おりよく年末と寒い季節が差し迫ります。オンロードはオフシーズン、オフロードはオンシーズンです。活動の前と後はクリーニングやメンテナンスのベストタイミングです。
では、あちこち乗り回したKONAのバイクを洗車しましょう。
ベランダで洗車せざるを得ない!
ロードバイクやクロスバイク、アーバン、コミューター、折り畳み、ミニベロ、マイルドなオールロードは都市部とマッチします。
全国の自転車ストアの分布から都市部の自転車活用度の高さはあきらかです。東京、横浜、大阪、京都、神戸、名古屋、福岡とかに集中します。
当然、都市部の住宅事情は地方より悪くなります。狭め、高めです。一軒家よりマンションです。つまり、ガレージや洗い場は公共の部分になります。洗い場の確保が一苦労です。
ご近所さんの好奇の目にさらされながら、公共の場というアウェー戦でチャリをばしゃばしゃ洗うのはまあまあのハードモードです。
そんな都会派の心の桃源郷がベランダです。内気な現代人もこの固有結界のなかにおれば、最大限の実力を発揮できます。ザ・ホームですから。
この意を汲んで、ベランダで自転車を洗車しましょう。
水洗いはありかなしか?
ところで、さっきからあたりまえのように『洗車』というキーワードが出てきますが、自転車の洗車は水なしクリーニングを含みます。
自転車の回転駆動系のパーツに水分はNGです。ベアリングの鋼球はふつうにサビます。ネジボルト類のサビは性能に影響しませんが、ベアリングの球のサビは回転に悪影響を与えます。
このことから水気厳禁ルールはロードバイク乗りの間でまあまあの支持を得ます。おそらくこれはジーパン、革靴を洗わない派の人とかぶります。
洗いは容易、干しは至難
実際のところ、きれいに洗うのは簡単です。問題はうまく干すことです。革靴の洗いは一時間、干しは三日です。
自転車も同じです。フレーム内の水気はなかなか抜けきりません。
そんなわけで水なしの乾拭きは合理的な『洗車』です。
自転車ベランダ洗車スタート
自転車のお掃除セットを用意しましょう。水道なしバージョンです。
左上から、
- バケツ・洗面器
- ブラシ
- きりふき
- 中性洗剤 JOY
- きりふき
- はけ
- 布
- タオル
です。専用のクリーナーはありません。家庭用の市販品ばかりです。洗剤はザ・最強中性洗剤のJOYです。汚れものにはJOYがいちばんです。
ベランダにチャリを持ち出します。
はい、スペースは消えました。作業領域は極小です。マンション系のベランダのはこんなものでしょう。窓全開で室内にケツを下ろします。
汚れをチェックする
リアホイールを外しました。汚れがまるわかりです。
砂埃はオールロード系のさだめです。
BB裏です。
おお、すばらしい泥汚れです! ドライコンディションの舗装路走行ではこんなに汚れません。雨上がりのマッディダートを走破した証です。
はけで砂埃を落とす
いよいよクリーニングに移りましょう。でも、はなからゴシゴシジャバジャバしません。クリーニングの最初の行程は砂払いです。
泥であれ、砂であれ、埃であれ、付着した汚れの正体は鉱物の粒子です。主成分は石英とかのガラス質です。これは塗装のコーティングやカーボンをかんたんに傷つけます。
コートや革靴のブラッシングもこの鉱物粒子を落とすための方法です。ブラッシングの頻度で毛足や皮革の繊維の痛みに差が出ます。
はい、OK牧場です。フレーム全体をこんなふうにブラシ掛けして、余分な砂埃を払い落とします。この時点でタオルで乾拭きすると、大方に力を入れすぎます。はけでやりましょう。
洗剤をぶっかける
霧吹きに洗剤とぬるま湯を入れて、ぶしゅぶしゅ吹っ掛けます。多めに吹っ掛けましょう。液だれを気にしない。ベランダはわりとすぐに乾きます。
ところで、汚れの両巨頭は油汚れと泥汚れです。油汚れ=界面活性剤、泥汚れ=アルカリ剤です。わかりやすい動画があります。
まず、アルカリ剤が泥のなかのプラスイオンを取り出します。で、残ったマイナスイオン同士が反発しあって分解します。
界面活性剤は油を包み込んで、結合や付着を弱くします。で、最終的に水で流れやすくなります。
フレーム表面の泥汚れは服のしみみたいに深く浸透しません。ぱーっと洗剤をかければ、浮かせられます。
ベランダ洗車では最後の流しの作業が乾拭きになります。汚れをの移り先が水かタオルかの差です。
きれいになりました。
悩ましいプーリーの油汚れ
こんなふうにフレームの外側のクリーニングはイージーモードです。水なし、ベランダ、手弁当で鼻歌交じりにこなせます。
しかし、駆動系の掃除はやすやすと進みません。いちばんの問題児はプーリーです。
金属粒子、砂埃、グリス、オイルのハイブリッドです。汚物の究極系が粘土状にべとべと引っ付きます。
中性洗剤と少量の水でこれを分解するのはむりです。タオルでネチャネチャをそぎ落す恰好になります。
そして、この一片が地面に落ちようなら、ましてや足裏にくっつこうなら、ベランダ全体、部屋全体に黒い斑点が繁殖します。最悪!
プーリーを本格的にクリーニングするなら、新聞紙をしいて、パツクリやディグリーザーでしましょう。ぼくはタオルぶきで済ませます。きれいな時間はせいぜい数日です。
チェーンとスプロケットの汚れもおなじです。水か薬が必要です。ドライクリーニングでは割が合いません。
一応、洗剤をやって、ブラシでごしごししますけど、しつこい汚れと手間暇に心をくじかれます。
ついでに駆動系の汚れを落とすと、必然的にオイル入れを強いられます。クリーニングがメンテナンスになります。1時間が確定です。
駆動系を本気で掃除するなら、分解洗浄を避けられません。オーバーホールは最強クラスのしんどさです。
ベランダ洗車の所感
水なしベランダ洗車ではフレームのドライクリーニングのみをおすすめします。30分でさわやかな気分になれます。
洗車後のベランダです。きれいなもんです。きりふきみたいな少量の水は証拠を残しません。
左の血痕みたいなやつが何気になぞです。革小物用の染料だったか、顔料だったか・・・血じゃないよ!