先日、フル電動キックボードを買って、長年の人力サイクリストから卒業しました、管理人のB4Cです。
上図の茶色の短足のおっさんに操られる漆黒のマシーンこそが時速20kmで爆走できる特定小型原動機付自転車です。
この新区分の誕生で原付ライダーと自転車乗りは涙目です。え、このご時世にまだガソリンと人力ですか?!
これで自転車の使用頻度は減ります。らくちんは正義。
ただし、ぼくのチャリ活のメインはマウンテンバイクです。自転車の最も面白い部分の醍醐味は削がれません。
対照的に影響をもろに受けるのはフラットバーロードやDAHON DOVEです。用途がこの電動キックボードと完全にります
この際、DAHONは完全輪行用、ロードは・・・オブジェ?
以前の記事で特定小型原付の基本とこの電動キックボードのファーストインプレを書きました。→特定小型原付の電動キックボードの使用感レビュー
このデビューから数日が経ち、様々な注意点や問題点が出てきました。後述のように駐輪が穴です。以下にそれをまとめます。
電動キックボードは原付です
eBikeは”electric bike”の略で、狭義には『スポーツモデルの電動アシスト自転車』で、広義には『電動二輪』です。
サイクリストの意見は分かれますが、ぼくの判断は「電動キックボードも”eBike”だぞ」です。ということで、電動マウンテンと同じくぼくの心の中のカートにキープされます。
たまたまド本命のヤマハの電動フルサスの2023年モデルを一手違いで買い損ねた翌日にこのYADEAの電動キックボードをヤフオクで見つけました。
ぽちり。
定価198000円が即決138000円(送料込み)+ヘルメットのおまけです。非常に良いお買い物でした。
コンディションは一か月40kmの実走のみです。出品の経緯は『駐輪場の都合で維持が難しくなったため』ということです。
この一文から次のような疑問が浮かび上がります。
自転車置き場に駐輪できます?
特定小型原動機付自転車は文字通りに『原付』の新顔です。人力キックボードやスケボーのような『遊具』でもなく、自転車や人力車のような『軽車両』でもない。
ナンバープレートと自賠責は必要です。→電動キックボードのナンバープレートの取り方と自賠責の加入方法 取得場所や必要書類を実例で解説します
さて、問題です。この新ジャンルの乗り物を適切に駐輪できる場所はどこでしょうか? 自転車置き場? バイクラック? 空きスペース?
これは答えの一例、電動モビリティのレンタル大手のLUUPの駐輪場の様子です。ラックなしの平置きですね。
ただし、LUUPの電動キックボードの全てが原付ではありません。原付一種、特定小型、そして、小型特殊自動車(ミニカー)モデルが混在します。
LUUPのミニカーモデルのヘルメット不要は特定小型原付の要件によらず、シェアリング事業の実証実験の特例措置に基づきます。
とにかく、電動キックボードの置き場はラックなしのフラットスペースです。あの小さな車輪は自転車用ラックにマッチしません。
そもそもタイヤがレーンに入らない、ロックが車輪に通らない。
そこは原付エリアですか?
平置きの駐輪スペースも一筋縄ではありません。一部の施設では自転車置き場とオートバイ置き場がきっちり分かれます。
ぼくも近所の図書館で自転車をバイクエリアに置いたら、警備員に「そこに停めないで」と注意されました。
もしや、出品者さんはこの類に引っ掛かった? 自宅や出先の共用の駐輪場が自転車専用ラックだったとか? 原付の空きスペースがそもそもなかったとか?
うーん、ありうる。
同じ理屈でショッピングセンターや公共施設の電動キックボードを含む原付タイプの電動モビリティの適切な駐輪エリアは『原付のところ』になります。軽車両でなくて原付ですから。
まあ、ノーマルな管理人や警備品はそんな試験問題みたいな細かいことを逐一に咎めませんが。現場のお巡りさんの知識や対応さえがまだあやふやです。
特定小型原付の解禁は2023年7月です。現時点では全員がにわかの域を出ません。このぼくさえが市内で17番目の特定小型マイスターぽいです。
それ故に駐輪場でこの存在は目立ちます。目の敵にして過度に厳しく対処する隣人や管理人や大家はいそう。同じ原付乗りは自賠責シールで気付きそう。
原付乗り「大家さん、あの自転車置き場のキックボード、原付でっせ、自転車とちゃいまっせ」
大家「なんやとー、許さんぞー」
うーん、ありうる。
マンションや会社や学校の共用エリアにキックボードを置こうと検討中の方は駐輪場の区分に注意しましょう。『原付』を長く置けるか? これは割と盲点です。
幸いぼくは自宅の軒先と玄関を確保できます。しかし、こんなものを屋外に置くと、学生か酔漢のいたずらの的になりかねません。
で、屋内保管が妥当ですが、ここでもう一つの問題が生じます。
玄関で充電できます?
うちのYADEA KS6 PROのバッテリーは内蔵型です。車体から外れません。
バッテリーのセルフ着脱は無理な分解改造とみなされて、メーカー保証を失います。プレステのシール剥がしと同じ大罪です。
無茶なロングライドを強行して、遠方で電池切れを起こすと、帰還に苦労します。車体をスタバに持ち込んで、満タンまで粘る? はい、炎上。
このKS6 PROは特定小型の電動キックボードの中では本格派、長さ120cm、幅52cm、重量22kgのデカ物です。サイズ感と重さは40型液晶テレビとどっこいです。
これより手軽なモデル、COSWHEEL社のRICHBIT ES1 PROは13.8kgと比較的に軽量です。しかし、縦横高さのサイズ感は変わりません、小回りも同等です。
で、縦幅1m、横幅50cm、重量10kgオーバーの物体は日本の平均的な住居には余ります。MTBやロードみたいにばらけないし、折り畳みみたいにコンパクトにならない。
ぼくは開封と動画撮影のためにこいつを玄関から3階まで運びましたが、上腕が一瞬でビキビキの筋肉痛になりました。
住居の入り口かそれに近い位置にコンセントがないと、充電の度にこの筋トレが課せられます。おっさんでベリーハードですから、女子にはムリゲーでしょう。
この充電の問題は電動キックボード、バッテリー内蔵型の電動アシスト自転車、電動スクーターや電動自動車に共通します。
解決策は延長コード、ポータブル電源、コンセント増設などです。
幸いうちの玄関にはコンセントがあります。土間が一気に手狭になりますが、充電が捗ります。
キックボードは靴棚になることが証明されました、はい。
靴のサイズから横幅が分かりますね? で、前輪はこれ以上に曲がりません。つまり、横幅30cmの空きスペースはマストです。
カタログスペックと実際の使用感の比較
YADEA KS6 PROは特定小型原付の中では本格派です。20kgオーバーは伊達ではありません。カタログスペックは以下の通りです。
モデル名 | YADEA KS6 PRO JP |
価格 | 198000円 |
取扱店 | ヨドバシ、ビックなど |
出力 | 定格 500W |
時速 | 20km/6km |
最大航行距離 | 60km |
重量 | 22kg |
展開サイズ | 1192 x 520 x 1258mm |
バッテリー | リチウムイオン 電池(付属)36V 15.6AH |
より手軽なRICHBIT ES1 PROの仕様です。
モデル名 | RICHBIT ES1 PRO |
価格 | 69800円 |
取扱店 | JP Stars Online(公式) ビックカメラなど |
出力 | 定格 250W |
時速 | 20km/6km |
最大航行距離 | 25km |
重量 | 13.8kg |
展開サイズ | 1080 x 530 x 1140mm |
バッテリー | リチウムイオン 電池(付属)36V 7.0AH |
『ガワ』のサイズ感や形状はほぼ同じですが、重量差は8.2kgに及びます。そのせいかES1 PROのモーターとバッテリーの性能はKS6 PROの半分しかありません。
正味、250Wの出力では上り坂とスタートダッシュがへなへなです。カタログ距離25kmでは実走片道9kmの往復20km未満が関の山です。
ES1を販売するCOSWHEEL社はMIRAI T Liteという特定小型原付モデルも販売します。こちらの出力ははKS6と同じ500Wで、重さはやっぱり22kgです。
結果、電動キックボードをおいしいところを楽しめるのは重いモデルとなります。→電動キックボードのおすすめモデル 買ってはいけない商品の特徴
カタログスペックマジック
- カタログスペック
- 一生のお願い
- 明日から本気出す
この三つが世界三大全くあてにならんものです。ことさらにカタログスペックの『最大なんちゃら』や『MAXなになに』はファンタジーです。
電動キックボードの仕様書で信用できるのは物理的なもの、サイズと重量だけです。
電動アシスト自転車も同様です。「エコモードで最大100kmまで走れます」の売り文句で100km実走できることはほぼありません。
そもそも最大距離を達成するために一から十までエコモードで走るユーザーはこの世にいません。そんな奇行を実践するのは開発者か設計者かYouTuberだけです。
また、無風、平坦、きれいな路面、頻繁なストップ&ゴーなし、歩行者自動者ゼロみたいな天国的実験環境ではありえますが、現実世界はそんなにもしもボックス的ではない。
ぼくの感覚(と体重)では電動モビリティのカタログスペックの数値は70%くらいになります。7掛け。
- カタログ最大60km=60×0.7=42km
- カタログ最大25km=25×0.7=17.5km
電動アシスト自転車の実走の体感も似たり寄ったりです。
屋外で電池切れした場合の措置
電動キックボードの最大の恐怖は電池切れです。電動アシスト自転車の最終奥義、自力救済人力ペダルがこいつには通じません。
厳密には自力救済けんけん乗りは可能です。スケボーみたいにヘッドを振って推進力を出すか。
しかしながら、長時間のけんけん乗りは道路交通法的にグレーです。それは遊具的な使い方でありませんか?
原動機なしの人力キックボードはスケボーやローラースケートと同じく遊具に分類されます。おもちゃ。
で、公道での遊具の使用は基本的にNGです。巡回パトカーに「危ないですよー」と拡声器で注意されます。取り締まり強化期間中はお察しです。
電池切れした電動キックボードをピュアホワイトに動かす手段は押し歩きか持ち運びです。これは遊びや乗り入れにあたりません。歩行者扱いになります。
しかしながら、北海道遠征サイクリングの際にキックボードの一周勢は何人かいました。北の大地の当局は本州よりおおらかだあ?
あと、アダプターを持ち歩いて出先でどうにか充電するにしても、5分や10分で満タンまでリカバリーできません。
YADEA KS6 PROのフルチャージ時間は5時間です。待ち時間に押し歩きでとろとろ帰る方が効率的です。
電動キックボードの電車への持ち込みは自転車の輪行やその他のスポーツ用品、大型楽器の要領に準じます。袋やカバーに入れれば輪行で帰還できます。
飛行機への持ち込みや預けは全面的に不可です。リチウムイオンバッテリーが規定に引っ掛かります。
電動バッテリーの実際の消耗度
上記の理由から電動キックボードのバッテリーの残量のチェックは最優先事項です。また、実際のパフォーマンス、燃費の熟知は特定小型マイスターの義務です。
パフォーマンスの測定の試走の例の壱、イオンへの朝食の買い出しです。距離は6.0km、起伏はほぼ平坦です。
結果的にバッテリー残量は満タン100%から85%まで減りました。つまり、6km/15%、0.4km/1%のパフォーマンスです。
試走の例の弐、西九条のフットサルコートへの往路です。距離9.5km、ほぼ平坦です。
帰路は同じコンディションで18%でした。2%のアドバンテージはおそらく風向きか信号待ちの頻度です。
この往復の平均パフォーマンスは19km/38%=0.5km/1%です。すなわち50km/100%です。しかし、バッテリーを完全にフルで使い切るのは芳しくありません。
さらに10%のマージンを取って、バッテリー切れの脅威を予防し、リチウムイオン電池を労わりましょう。
ということで、実走の現実的なホワイトな最大走行距離は50×0.9=45kmと弾き出されました。これはカタログ値の75%です。ほら、7掛けは良い線でしょう。
うちから往復45km、片道22.5kmの圏内はひらぱー(東)、六甲アイランド(西)、仁徳天皇陵(南)、一庫ダム(北)などなどです。
片道30kmの神戸三宮、40kmの京都河原町は圏外です。十中八九、帰りで電池が切れます。
大阪-神戸間の100%バッテリー消耗チャレンジの結果はうれしい誤算でした。→電動キックボードの走行距離チャレンジ バッテリーフル充電で50km走れるか? 特定小型原付編
和歌山は遠すぎ、奈良方面は坂ありです。暗峠チャレンジ? いや、車輪が溝にはまるわ。
とにかく『1%で400~500m走れる』としっかり把握すれば、絶望のバッテリー切れを避けられます。
あ、もちろん、この燃費はぼくのコンディション(と体重)によります。軽い女子の方がハイパフォーマンスで運用できます。
まあ、一般人は電動キックボードでロングライドしないか・・・でも、諭吉を一日で稼ぐ出前のチャリ勢は50kmぐらい余裕で走りますし。2km配達x25回=50km。
登坂性能のテストはこれです。→電動キックボードの登坂性能をロードバイクと比較してみる
電動キックボートの注意点のまとめ
- 特定小型原付は原付
- 駐輪スペースに注意
- 充電場所を要チェック
- カタログや仕様書の性能はまやかし
駐輪の問題はニッチですが、非常に重大です。意地悪な大家の部分はぼくの創作ですが、駐輪の問題で前の持ち主さんが手放したという実例があります。要注意。