2015年以降、ある日本語が横文字に変化しました。『出前』です。昭和のおじさん以外はこの言葉をもう使いません。現代の正解は『フードデリバリー』です。
さらに2020-2021のコロナでこの業界が爆発的に成長しました。今や『ウーバー』や『ウバる』も十分に通用します。
が、Uber Eats などのフードデリバリーの仕組みは世間にはまだまだ知られません。また、外資系の新興企業というレッテルはしばしば軽蔑やヘイトの対象になります。
ここではフードデリバリーの基本的な情報を具体的に解説します。
フードデリバリーとは?
フードデリバリーは飲食の配送、つまり、旧来の日本語では明らかに『出前』です。これを地で行くのが出前館です。1999年に大阪で誕生して、飯を運びまくります。
一方、世界的なフードデリバリーサービスは出前館のような老舗ではありません。業界標準のUber Eats が2014年~、Uber Japanが2016年~です。
国内2トップ以下の第二先頭集団、menu、DiDi Food、foodpanda、waltなどは2020年~です。直近ではアメリカの出前館的なDoorDashが宮城でスタートしました。
フーデリはIT企業
アジアの極東の島国に進出して来る海外のフードデリバリーの大半はIT企業です。
Uber Eats もそうです。ここはライドシェア・マッチングサービスのUber Technologiesのフードデリバリー部門です。
このために同社は配送や外食のノウハウを持ちません。が、グローバルデザインのスマホアプリで一気に世界へ進出します。
一方の出前館はIT企業ではありません。生粋の配送業者です。おかげでアプリの作成やシステムのアップデートに苦戦します。
配達パートナーは下請け業者
トヨタの自動車で稼働するタクシーのドライバーはトヨタの社員でしょうか? そうではありません。
Uber Eats のバッグで飯を運ぶ自転車や単車のライダーはUberの社員でしょうか? 無論、そうではありません。
確かにUber Eats の大きなバッグはフードデリバリーのシンボルマークですし、大事な仕事道具です。しかし、あれはUberの社員証ではない。
そもそもフードデリバリーの服装や備品に特別な規定はありません。現に副業派や女子には大容量の純正バッグよりコンパクトな市販バッグの方が人気です。
ちなみに純正品はバッグだけですから、その他のグッズはロゴ入りのファッションアイテムです。
foodpandaの純正バッグは中年の男子にはややミスマッチです。
外資系のIT企業は現場のスタッフのような下っ端を直に雇いません。派遣か下請けに外注します。
本質的に配送業者である出前館だけは直雇用のアルバイトや正社員を募集します。これはIT企業の手口でなく、配送のヤマト運輸や外食のマクドナルドのやり方です。
マッチングサービス=ギルド
現代的なフードデリバリーの仕組みはゲームの酒場やギルドにそっくりです。実際、業務はリアルなお使いクエストです。
旅の勇者は酒場やギルドに寄って、依頼やお願いを受けて、ドラゴン退治やダンジョン探索やお使いクエストに出かけます。
しかし、勇者は皿洗いとか調理とか掃除とかしません。酒場やギルドの従業員ではないから。
旅の勇者は立場的には流しの出入り業者です。酒場やギルドとゆるく提携しますが、今後の冒険を踏まえて、直雇用契約=就職をしません。
で、フーデリの配達パートナーはアプリからリクエストを貰って、カレーや牛丼やハンバーガーを運びますが、プログラミングとかセンターの掃除とかしません。従業員でないから。
斡旋と紹介
これと同じくフードデリバリーの加盟店は運営元の直営店ではありません。Uber Eats の注文アプリ内のマクドナルドやローソン、その他の個人店はUberの子会社でしょうか?
- 注文者
- 加盟店
- 配達パートナー
この三者は同列の利用者です。ギルドマスターのUber Eats はそれぞれの需要と供給を最適にマッチングして、アプリ使用料という名の紹介手数料を頂いて、利益を上げます。
配達アプリはゲーム内のステータス画面のクエストログやお知らせボードのようなものです。フードデリバリーではお使いクエストしか出ませんが。
斡旋紹介業は非常にうさん臭く聞こえますが、古来からあります。結婚紹介所などはその典型ですね。
- 出前マッチング=Uber Eats など
- レストランの予約マッチング=食べログ
- 家電マッチング=価格ドットコム
- 民泊マッチング=Airbnb
- 古龍討伐マッチング=モンハンギルド
モンスター退治で良く全滅するのはお抱えの兵隊や騎士団です。彼らは直雇用の従業員です。
とにかく、スマホとアプリと高速通信のおかげで膨大な出前や宅配のマッチングの斡旋、紹介がリアルタイムで可能になりました。
結果、固定のアルバイトを雇わなくても、流しのパートナーをアプリでさくっとピンポイントで呼べます。
面接、選考、研修、福利厚生、保険料、固定給・・・直接雇用には膨大なコストが掛かります。
「ブラック企業だ!」
そう思うなら、依頼を断りましょう。パートナーは社畜や奴隷ではありません。自分の身を自分で守り、適切に賞金を稼ぐのが流しのハンターです。
もっとも、体育会系の出前館はキャンセルやスルーを歓迎しません。ここの社風は何かと旧態依然の日本企業的です。まあ、実際に旧態依然の日本企業ですけど。
配達員× 配達パートナー〇
そんな訳でフードデリバリーは現場のアルバイトや正社員を積極的に採用しません。従業員は金食い虫ですから。
アメリカの一部の都市では裁判所がUberやLYFTにパートナーの最低賃金や権利を保障せよとの判断を下します。
もちろん、運営元は猛反発して、不満と遺憾を示します。ビジネスモデルや利益率を根本的に覆されますから。
しかし、これは先進国の革新的な例です。後進国の日本にはまだまだ来ません。
配達パートナーもユーザーの一人
さきほどの旅の勇者の例のようにUber Eats の配達パートナーはUber社の従業員ではありません。文字通りのビジネスパートナーです。
配達パートナーはアプリの手数料を支払いますから、立場的には他のユーザーと同格です。しかし、加盟店や注文者はそう考えません。
一般的に肉体労働の出入り業者は軽んじられます。飲食店のスタッフはせっかちです。腹ペコの人間は不機嫌です。
で、不満やクレームや責任をユーザー同士で投げ合う泥仕合がしばしば起こりますが、そういうイレギュラーなものの対応こそがフードデリバリーの運営の仕事です。
給料でなく営業利益
従業員は給料を貰えます。時給、日給、月給と基準は時間です。成果を上げようが、だらだらサボろうが、固定の金額を頂けます。それが就職、雇用契約というものです。
他方、配達パートナーは給料を貰えません。その稼ぎは給料でなく、成功報酬です。堅苦しい言葉では『営業利益』です。
業務提携のパートナーは個人タクシーの運転手、家族経営の小売店や飲食店、開業医などと同じ個人事業主です。日銭を稼いでなんぼ。
そのためにスマホと睨めっこして、リクエストを取らないと、朝から晩まで外で営業しようが、1円も稼げません。それが事業というものです。
極論、事業者や経営者にとって給料は貰うものでなく、払うものです。自分に払うか、他人に払うか。
税金
給料と売り上げの違いは言葉の綾だけではありません。確定申告や税金の計算に関係します。
税制上では給料は『給与所得』となり、売り上げは『事業所得』となります。
給与所得 | 事業所得 | |
源泉徴収 | あり | なし |
確定申告 | なし | あり |
経費 | なし | あり |
給与所得控除 | あり | なし |
事業所得控除 | なし | あり |
事業税 | なし | あり |
フードデリバリーの稼ぎは右側の事業所得です。専業勢やガチ勢は確定申告を求められます。副業勢も本業以外で20万以上を稼いだら、確定申告しなければなりません。
それから、事業所得には事業税が掛かります。運送業は5%です。
あと、1000万以上の売り上げには消費税も掛かります。
しかし、フードデリバリーで年間1000万を稼ぐ猛者は稀ですし、配達パートナーは事業者と労働者の中間のような立場です。恐らく事業税の課税対象にはぎりぎり含まれません。
このように事業や経営には税金の煩雑な知識が手続きが伴います。もちろん、これは事業主兼経営者=配達パートナーの責務です。
フードデリバリーの配達員まとめ
一般的なフードデリバリーの配達パートナーは直雇用の従業員でなく、業務提携の個人事業主です。Uber Eats や出前館は就職先でなく、単なるビジネスパートナーです。
配達パートナーも運営元からアプリの使用料を徴収されます。れっきとしたユーザーですが、出入りの肉体労働者の宿命で加盟店や注文者から少し軽く低く見られます。
配達パートナーの稼ぎは給料でなく、売り上げです。税制上では「事業所得」の扱いになります。確定申告を忘れずに。