パイオニアは日本の大手家電メーカー、音響メーカー、カーナビメーカーです。プラズマテレビのKUROシリーズはデジタルテレビ界の伝説的名機です。
が、自転車乗りの頭にはパイオニア=ぺダリングモニターのイメージがぱっと思い浮かびましょう。国内人気ベスト1のパワーメーターです。
この名門企業が空前の経営危機にあえぎます。パイオニアになにがあったか?
最近のパイオニア
パイオニアのオリジンは音響機器です。DNAは『東京文京区のスピーカー屋さん』です。のちに家電、カーナビに事業を展開します。全盛期がそのKUROの時代です。
その後、テレビは中韓系の企業にぼこぼこにされ、カーナビはGPSスマホにめためたにされます。で、代わりの稼ぎ頭が見つからず、財政がずるずる右肩下がりになり、破綻の危機が現実化します。
つい数日前まで2018年9月末の130億円の返済を自社でまかないきれず、まじの閉店ガラガラの危機をむかえますが、海外ファンドから数百億円を借り入れて、急場をしのぎました。ぎりセーフ。
しかし、これは延命措置にすぎません。新しいヒット商品が出ないと、業績が改善しません。資金の尽きめが会社の尽きめです。
パイオニアのペダモニ物語
そんなAVとカーナビのパイオニアのスポーツ事業はサイクリング部門のペダリングモニターとポタナビのみです。
ポタナビはあれですが、パワーメーターみたいなマイナースポーツ競技の専門機材と本業との関連性は希薄です。音響メーカーが自転車機材だあ? はあ?
このはなしはビジネス系メディアにちょくちょく取り上げられます。そもそもの起こりはリーマンショックの2008年です。パイオニア社員の藤田が「趣味の自転車機材を作れないかなー」て始めました。
で、4年ちょいの開発期間を経て、テスト販売にこぎつけます。そのこまかい計測データと安心安全日本ブランドで一躍に人気のパワーメーターとなります。
うそみたいなほんとのはなしです。ブラック企業のリーマンはこのステキナ・カイハツ・ヒワにむせびなきしましょう。
でも、チャリ界にはこの手のエピソードは日常茶飯事です。
- かいてきな革サドルを作れないかな~→BROOKS
- 大学のチャリ部の娘のためにパーツを作れないかな~→THOMSON
- 雪の上とか砂漠とか行ける自転車を作れないかな~→ファットバイク
- 山とか荒地とか走れるチャリを作れないかな~→マウンテンバイク
だいたいアメリカです。USA!! USA!! USA!!
数値や品質をごまかしても見かけの業績を重視する21世紀の現代日本の会社的風土でこんなことが起こるのはミラクル中のミラクルです。だいていこんなものは芽のうちに叩きつぶされますのに。
しかし、このパイオニアのおおらかさが裏目に出たか、家電、カーナビがつぎつぎ陥落しました。ペダリングモニターの未来はどうでしょう?
サイクリング部門は未明
パイオニアの2018年3月期のPDFが公式ページにあります。これを上から下まで読んでみます。主力はカーエレクトロニクスとAVです。売り上げは内外ともに微減で、カーナビと家電がおもしです。
で、サイクル事業のデータはぜんぜん見当たりません。部門的には『その他』の項目でしょうが、最大の稼ぎどころの国内のグラフにさえサイクルのサの字もない。
自転車雑誌やメディアやトップレーサーの大々的なPRでパワーメーター、パワートレーニングがさも一般化したような印象がまんえんしますが、実際の利用者はホビーライダーの数パーセントです。
とにかく、ペダリングモニターの売り上げがパイオニアの決算表に部門別で記載されないような零細の数値であるのはたしかです。10億円くらいだあ?
で、これが一年二年で爆発的に成長して、パイオニアのカーナビと家電の減少を補って、会社の業績をしゃきんと建て直すか?
むりでしょう。売り上げが10倍になっても、たかがしれます。需要が超ニッチです。じみちな普及はしますが、劇的な一般化はしません。
ハイテク機器に辿り着くまえにホイールやタイヤで一般の自転車乗りの予算はかつかつです。毎月5000円のペダモニ貯金で1年がかかります。パイオニアの経営はそんな悠長なもんじゃありません。
「えーい、男は黙って衝動買いしてしまえ!」
はい、パイオニアの前にマイホームの平和が破綻します、ちーん。げにワイフの目はファンドマネージャーよりシビアです。
ハイテクに舵を切るシマノに追い風
むしろ、部門をごそってライバルに売りつけて、手元の資金を増やしません? おりよくパワーメーターをやりはじめて、ソフト開発や調整に四苦八苦する会社があります。
はい、堺の釣具屋さんです。最近、副業の自転車部門で電動コンポ、パワーメーター、アクションカメラ、電動アシストてハイテク化を熱心におしすすめます。
そんなシマノはんにはパイオニアのペダリングモニターのノウハウは魅力的でしょう。即買いのレベです。
これを引き抜けば、ライバルを消せて、シェアを取れます。国内ではむてきです。近い未来のGIANTとの総合自転車産業メーカー対決にはずみをつけられます。
パイオニアの行方、ペダモニの未来に暗雲がたちこめます。サイクル部門の命運はいかに?! ちなみにうちにはパイオニアの製品は・・・ぜんぜんありません。