自転車別ロングライドの攻略法 100km~200kmならママチャリでもロードでもMTBでも行ける

予備チューブ、携帯空気入れ、マルチツールが長乗り、遠乗り、ロングライドの基本的な三種の神器です。スマホとお財布は殿堂入りです。

この記事ではもう少し踏み込んで、長距離走向けの自転車の種類を特集しましょう。

ロングライド=100km/1day

サイクリングのロングライドの基本は100kmです。自転車未経験者、チャリンコ初心者にはこの三桁の距離は狂気の沙汰にしか思えません。

しかし、自転車は効率的な乗り物です。マイペースなサイクリングの身体の負荷は徒歩、ウォーキング、ランニングの1/5から1/6前後にしかなりません。圧倒的省エネです。

ハーフマラソンより楽ちん

ジョギングとサイクリングをこなすぼくの体感では100kmサイクリングは割と楽な運動です。

ハーフマラソン > 10kmハイキング = 100kmチャリ > 10kmラン

個人的な疲労感はそんなところです。20kmランより明らかに楽で、15kmランにも届かない。10kmラン+5kmウォークくらいがマイペースチャリ100kmとどっこいですか。

時間をかけてゆっくり走れば、未経験者が100kmを余裕で走破できます。時間当たりの負荷の密度はランニングよりぜんぜんマイルドです。

低負荷、長時間

反面、活動時間は長くなります。ランニングの5倍から6倍です。下限は半日、平均は十時間、日の出から日没までは異常ではない。

ママチャリや通勤用のブリジストンアルベルトを使ってもまあまあ走れちゃいますが、スポーツバイクに乗り換えると、よりアクティブに楽しく遊べます。

実用自転車は安価で手軽ですが、スポーティなおもしろみを欠きます。走り甲斐、走らせ甲斐がない。

「ママチャリで100km走った!」はスポーツやアクテビティではありません。学生のネタの域を出ない。

どんな自転車がロングライドに合うか?

長距離の舗装路を速く楽に走るためのスポーツ自転車の代表がロードバイクです。シンボルマークは独特のドロップハンドルです。

ドロハン・ブルハン
ドロハン・ブルハン

ただし、最近のスポーツバイクは多様化と細分化の一途を辿ります。オールロード、グラベル、アーバン、E-bikeみたいな新興ジャンルが次々に現れる。

で、この現代の自転車事情ではドロハン=ロードバイクの公式はやや古風になります。

エンデュランスロード

ロードバイクの中でロングライドに向くのは快適型のエンデュランスモデルです。エンデュランスは『耐久』を意味します。エンデュランスロードはまんまの久しく耐えるロードバイクです、

エンデュランスロードの特徴です。

  • ゆったりポジション
  • ちょい太タイヤ
  • アップライト
  • 振動吸収テクノロジー

プロがレースで使う上級モデルには電子サスペンション、ショック内蔵ステム、コンポジットソフトテールのような秘密兵器が盛り込まれて、ガジェット的な魅力にあふれます。

DOGMA K-10 S
DOGMA K-10 S

代表格はルーベ、シナプス、ドマーネ、インフィニート、Defy、Fenixなどなどです。おすすめロードバイクのエンデュランスロードの項目を見てください。

エアロとエンデュランスを画像で見比べましょう。これはごりごりのエアロモデルのGIANT PROPEL DISCです。

GIANT PROPEL DISC
GIANT PROPEL DISC

一目でのんびりゆったり走るバイクでないことが分かります。得意分野は下りと平地です。

で、こちらがエンデュランスロードのスペシャライズドのルーベコンプです。

スペシャライズド ルーべコンプ
スペシャライズド ルーべコンプ

まず、フレームのリアの三角形の形が異なります。PROPELはコンパクトで、ルーベはべちゃっと間延びします。

秘密兵器のFuture shockです。この中のスプリングばねが衝撃と振動を緩和します。

スペシャライズドルーべコンプFuture Shock
スペシャライズドルーべコンプFuture Shock

エンデュランスモデルにはこんな独自の工夫が各所に光ります。

近い意味で『グランフォンド』や『コンフォート』もよく使われます。いずれがロングライド向けのロードバイクです。

それから、かりかりの超高級モデルより手頃なグレードの方がえてして一般人向きの味付けになります。100万クラスは競技用機材です。作りがレーシーに、先鋭的になります。

オールロードバイク

オールロードは新しいバイクのスタイルないしジャンルです。『一台でオンロードとオフロードを走破する』がコンセプトです。遊べて走れるドロハンバイク。

用途は前世紀のランドナーやツーリングバイクと被ります。それらのイマドキ・リメイク版がオールロードです。

機材的には競技系バイクのシクロクロスの親戚筋にあたります。シクロ-レーシング要素+遊び心とべんり機能=オールロードです。

そして、ホビー用途のオールロードが無節操な発想とブームの勢いで爆発的に進化します。数十年分の技術の停滞が数年で一気に解消されました。

3TのグラベルバイクのEXPLOROです。

3T Exploro グラベルバイク
3T Exploro グラベルバイク

趣味のバイクがフルカーボン、チューブレスタイヤ、ディスクブレーキです。おそらく一般の自転車乗りの大多数はこのバイクの性能を完全に引き出せません。

エンデュランスロードの推奨タイヤ幅はせいぜい30c、シクロクロスは32cですが、グラベルは45cを飲み込みます。このクリアランスはドロハンバイクの中では最大クラスです。

タイヤのワイド化は乗り心地に大きく影響しますし、バイクの性質やジャンルさえ根本的に変えてしまいます。フレームの工夫やガジェットの投入より効果的です。

また、オールロード系の自転車には実用的な台座やダボ穴があります。

TREK CHECKPOINT
TREK CHECKPOINT

エンデュランスロードやシクロクロスは快適モデルですが、基本的にはスポーツ用品、競技用機材です。おしゃれなバッグをごてごて付けて走るのは想定外です。

このジャンルは活況でフリーダムです。おもしろいパーツやアクセサリがつぎつぎ出ます。アウトドア、キャンプとの親和性の高さも魅力的です。

MTB

MTB、マウンテンバイクは未舗装路用の自転車です。フォークやフレームにサスペンションが付きます。

毎年恒例コメンサルのDHバイク
毎年恒例コメンサルのDHバイク

MTBはロードバイクよりさらに細分化、多ジャンル化します。主要な競技種目がDH、XC、FR、AM、4Xみたいに分かれます。

ちなみに上の車体はごりごりのDHバイクです。下り特化型の最強マシーン。いかついフロントフォークの”BOXXER”の文字がその証です。

反対に軽量なXCバイクや万能型のAMバイクはよりオールマイティーなMTBです。上りもするし下りもする、平地も街中も舗装路もそこそこ走る。

フレームサスペンションなしのシンプルなハードテイルは街乗り最強候補の一台です。町中のちょっとした段差、低速走行、こまかいコントロール、ラフな扱いが苦になりません。

そして、タイヤが決め手です。2インチ以上のでかいタイヤをぞんぶんに使えます。

Schwalbe G-oneとWTB Ranger 30
Schwalbe G-oneとWTB Ranger 30

舗装路のノイズはほぼ消えます。細タイヤ泣かせの排水溝のふたや路肩の亀裂が笑止なものになります。ハンドルやサドルがガタガタしない。無敵だ!

ロードのフレームはきゃしゃで、タイヤはせんさいです。路面のコンディションがダイレクトに伝わります。これが長時間のロングライドではじわじわ効きます。

足の疲労ばかりが不安になりますけど、サイクリングでは腕、腰、尻、首が想像以上に疲れます。さらに同じ体勢を長時間続けるのは楽ではありません。

寝ても覚めて動いてもそうです。寝返りしないと血のめぐりを悪くします。同一ポジションx長時間=不健全です。

ロードバイクや細いタイヤは効率性に優れますが、乗り心地や快適度を欠きます。MTBや太いタイヤは乗り心地や耐衝撃に勝りますが、スピードや高速維持性能に劣ります。

さあ、どっちが楽な自転車でしょうか? 答えは乗り手の感覚、気分、スタイル、趣旨、気力、体力etcに寄ります。

ぼくはフラットバーとフラットペダルの気楽さと太いタイヤの乗り心地のよさを好みますから、軽量なオフロードタイヤでロングライドに出ます。

ライドの終盤でこういうセミ悪路をいちいち回避するのがストレスフルです。ギャップはせいぜい1cmです。でも、細タイヤでがーっと走ると、けっこうな衝撃を食らいます。

湖きわの路面
湖きわの路面

「何時間で何km走ったから平均時速何kmだな」

この発想は浮かびません。そもそも走行データを記録しない、記録しても見返さない。定点観測が苦手です。じゃあ、ロードや細タイヤの効率の良さが活きません。

「だーっと走って遠くまで行けたな!」

おおざっぱな感覚派のO型さんにはゆったり走れるMTBとオフロードタイヤのロングライドはおすすめです。

朝から晩までだらだら走れば、200km/1dayまでふつうに伸ばせます。夜明け前に出れば、日帰り自走ビワイチ300kmとか大阪尾道250kmまで余裕で行けます。

クロスバイク

クロスバイクはスポーツバイクの入門機です。大きいスーパーや駅前の駐輪場をふらっと見渡せば、GIANT ESCAPE R3やGIOS MISTRALを見つけられます。

仕様はオンロードとオフロードの折半です。これに実用性とコストパフォーマンスと気軽さが加わります。crocsやビルケンシュトックみたいなそこそこ動けるサンダルですか。

クロスバイクの相場は5万です。ロードやオールロードは10-15万です。価格差は二倍三倍になりますが、走行性能を左右するホイールの性能はどっこいです。

30万クラスの完成車を買っても、まんぞくなホイールにはなかなか巡り合えません。ホイールメーカーの廉価品や自転車ブランドの純正品、ぞくに鉄下駄がバンドルします。

練習用のランニングシューズてところです。もちろん、ホビーライダーには十二分な性能ですし、100kmサイクリングにはオーバースペックです。

せかせか急がない、ぎすぎす記録を求めない、アホみたいにお金をかけないマイペースののんびり屋の堅実派にはクロスバイクがいちばんです。

ママチャリより少し速い速度でだらだら漕げば、日帰り150kmまでふつうに行けます。前かごを付ければ、フリーで走れます。へたにドロハン+リュックでライドするより疲れません。

タイヤのクリアランスも40cくらいまであります。振動を減らすならオールロード系タイヤを、スピードを求めるなら25c~のロードタイヤのエンデュランスモデルをセットしましょう。

ママチャリ?

日本が誇る自転車の真骨頂、それがママチャリです。プレママチャリ時代の一般用自転車はごっつい実用車でした。

パースセキネ
パースセキネ

100kgの荷物はOKですが、100kmのロングライドはNGです。登り坂がむりです。30kgの鉄のかたまりですから。

ママチャリ=15-20kgのシングルスピードコンフォートバイクです。やはり、上り坂がネックです。そして、狭い日本の遠出には山越え、峠越えがつきものです、アウチ。

しかしながら、自転車の効率の良さはそんな実用系自転車の欠点を補って有り余ります。100kmはよゆうです。ビバ、自転車!

むしろ、ふかふかサドル、アップライトポジション、スタンド、前カゴ、キャリアは超々だらだらロングライドには有利です。

ただし、スポーティさや爽快感はありません。アウトドアorアクテビティというよりシンプルな100kmの移動です。

むしろ、コンビニからコンビニへのコンビニマラソン、ザ・コンビニングですか。

あげくに車体にはなんらかのガタが出ます。うちのママチャリのチェーンは180km走行後に三日後にばりっと縦に砕けました。

日に2-3kmしか走らない野ざらしノーメンテのチャリに50倍の負荷をどかーんと与えるのは酷です。

結論

身体や気分や予算と照らし合わせて、近い用途のジャンルのスポーツバイクを選びましょう。ぼくのおすすめはカゴ付きクロスバイクかハードテイルMTBのツーリングカスタムです。

ビワイチ 2022年3月 湖北にて
ビワイチ 2022年3月 湖北にて

あ、サドルのビニルは手製のクッションです。やっぱ、ケツが先に逝きますから。