自転車のホイールをチューブレス化するときに意外と悩むのがチューブレス用のリムテープの選択と価格です。
ちなみに最近のスポーツ自転車のチューブレスは正確にはチューブレスレディですが、便宜的にここでは一律で「チューブレス」とします。
パンク防止剤のシーラントなしの真チュ―ブレスは現行のチューブレスレディより古い規格です。MAVICのUSTが代表ですね。これが20年前くらいです。
このUST系リムはニップル穴なしのつるぺたリムです。テープ要らず。しかし、スポークの交換とニップルの換装が難です。ニップルが専用品だったり。

あと、IRCとかMAVICの真チューブレスタイヤはレディ系より重い。
ということで、比較的に新しいロード系チュ―ブレス、新ジャンルのグラベル系チューブレスは真チューブレスでなく、後発の疑似チューブレス=レディ系です。
リムテープ高すぎ問題
チューブレステープの王道は元祖チューブレス(レディ)のSTANS NOTUBESイエローテープです。

これが千円代だった時期がこの世にもありました。今や細い幅のこいつが2000円オーバーです。
9.14mは中途半端に見えますが、アメリカ式のヤード法でこれは10ヤードのパッケージです。21mm幅はリム内径17mm、いわゆるC17系のリムにジャストフィットです。
テープ代計算
2025年1月現在のパック価格2000円で1mあたりのSTANSのテープ代を計算してみましょう。
2000/9.14=218.81円/1m
そう、これはメーター200円越えの超高級テープです。で、自転車のホイールの直径はおおむね60cm前後です。0.6mに円周率を掛けると、リム一巻きのお値段を算出できます。
0.6×3.14×218.81=410.7円
MTBやグラベルみたいな低圧タイヤには一巻きで足りますが、ロード系の高圧タイヤには二巻きがベターです。つまり、410×2=820円となり、さらに前後セットで1640円です。
この時点で約8mの消費です。残り1mちょい、218円のテープの使い道は補修用や補強用でしょうか。

この出費がボディブローのように効きます。そして、テープは1シーズンで痛む。しかも、毎シーズンに自転車用品全般が値上がりする。
オワタ!
格安品や代用品を探し求めて幾星霜
ぼくのチューブレス歴はかれこれ6年ほどです。MTBに乗り始めて、即座にクリンチャーからチューブレスに移行しました。
つまり、テープ買い替え問題はすでにおなじみの問題です。二年目あたりから王道を外して、格安品や代用品を探しまくります。
これはホムセンの気密防水テープです。

プラスチックの排水管や雨どいの補修などに使える高耐久のテープです。20mで600円くらいです。STANSの6分の1の価格です。
が、これは補修用テープです。生地が重すぎるし、糊が強すぎる。あと、当然のごとくホイールのリム幅には合いません。ファットバイクの幅広ホイールにぴったりの幅しかない。
次が中華の『チューブレスリムテープ』です。

左の青色のものです。これは20mで送料込み500円とかです。機能、価格、使いやすさの点で非常に優れます。幅の選択肢も豊富です。
弱点は商品到着までの長さです。中華直販の格安商品の発送は二週間コースのチャイナポストです。今週末に走りに行くお急ぎライダーには向かない。
さ、この青テープを覚えて、つぎに行きましょう。
業務用3M仮固定用テープ
- 弱めの糊
- 細めの幅
- 防水
- 気密
- 伸びない
- 安い
このようなテープは自転車用品には存在しません。自転車メーカーの純正のやつは『安い』の対極にあります。
STANS、シュワルベ、パナレーサー、DT SWISSなどなどのテープはことごとく割高だ。
実のところ、チューブレスリムテープの高さに惑わされて、200円くらいのクリンチャー用のノーマルリムテープが安く見えますが、2mくらいのテープに200円はそう安くない。
正味、糊のことを気にしなければ、クリンチャーリムにはガムテの布テープで行ける。

剥がすときに地獄を見ますが。
自転車専用品なのか?
上記の条件を満たす『自転車用のリムテープ』は見当たりません。しかし、ほぼ同様のものが『業務用特殊テープ』のカテゴリに存在します。
それが3M仮固定用テープです。

あれ、デジャブ? いえ、これはさっきの中華のリムテープではありません。テープの芯の裏にプリントが見えますよね? 『3M Scotch© 8898』みたいな表記があります。
3Mはアメリカの超大手化学製品メーカーで、Scotchはそのテープのレーベルです。北米で”Scotch”はテープと同意です。ウィスキー? アメリカ人ならバーボンやろ!
ちなみにこの8898はカナダ製です。これはヨドバシでは『DIY・工具>環境安全用品>テープ用品>特殊用途テープ』のカテゴリにあります。自転車用品では全くない。
さらにこのテープは店頭にはありません。バックヤードにあります。で、パッケージはこのペラペラのものだけです。
3Mの公式ページのキャッチコピーは以下の通りです。
家電製品の出荷時の部品仮固定などに適しています。
3Mより
耐水性・耐磨耗性が有ります。
初期接着力に優れています。
保持性に優れています。
お店のスタッフが家電や家具に備品をくっつけるための仮固定用のテープ、それがこの3M Scotch 8898です。完全業務用。
それをどこかの誰かが自転車ホイールのチューブレスに使えることに気付いたのが歴史的大発見でした。
このテープは24mmx55mのものが777円です。ポイント10%で実質700円だ!
777/55=14円/1m
STANSのイエローテープの15分の1の価格です。安さの理由は何でしょう? それは業務用だからさ。

中華の格安『リムテープ』の使い勝手を思い出しながら、こいつでチューブレス化しました。違いは芯の裏のプリントだけ……あ、個人的な意見です。
STANSのはこの15倍、シュワルベとかパナレーサーとかZEFALとかのクリンチャーリムテープすら10倍です。高さの理由は何でしょう?
シマノプレミアムグリス、SRAM DOTブレーキオイルなんかも汎用品の10倍の値段です。何でこんなに高くなる?
それは小売りのパッケージだからですね。シマノのプレミアムグリスは値上げ値上げでついに100gで2000円ですよ。中身はふつうのモリブデングリスだのに・・・
ミネラルオイルの小売り用と自転車店用の価格差も有名です。ご自分で調べてみてください。突っ込まざるを得ない。
リムテープ三大系統
手持ちのリムテープの切れ端を引っ張り出しました。

左がSTANSのリムテープ
真ん中が3Mの業務用テープ
右がヤフオクで買った国内在庫の格安「チューブレステープ」
チューブレスリムテープはだいたいこの三色です。あと、黒系がある、パナとかシマノとかDTとか。
右端の茶色のやつの正しい用途は電子機器の基盤か何かのテープです。自転車用品ではない。ポリイミド、カプトンテープってやつ。何か糊が異常につんと匂います。これはモノタロウにある。
STANSのイエローテープのオリジナルは不明ですが、おそらくこれの大本も何かの業務用テープでしょう。3M製の可能性は超特大です。どっちもアメリカ企業だし。
8898の特徴は気密性、防水性、耐伸縮性、そして、糊の弱さです。仮固定用テープは本固定用テープではありません。剥がすことを前提にします。ゆえに糊は控え目でなければならない。
ゴリラテープやガムテは本固定テープです。剥がすことを前提にしない。むしろ、絶対に剥がれるなよーという意気込みで使います。
北海道一周サイクリングの後半500kmくらいはこれでしたし。ゴリテげきつよ。

たとえば、これをホイールのタイヤ幅に合わせて、きれいなパッケージを付けて、『自転車専用補修テープ』と名付ければ、自転車用品にカテゴライズできますねえ! ウホウホ!
リムメーカーのALEX RIMSの純正チューブレスリムテープはまんま3Mの仮固定テープです。芯裏のプリントは無地ですが、色と質感などは完璧にこの8898か同等ジェネリック品です。
同機能の同等品や代用品の10倍の価格差は業務用と小売りの形態の違い、パッケージ、容器、カスタマーの知識のなさなどに起因します。
少なくとも、ぼくは10倍価格のメーカーものの『専用品』にはうかつに手を出しかねますなあ。ふつうに高すぎて引いてしまう。
3M仮固定用テープのチューブレス化実績
STANSのイエローテープを貼るときには全神経を使いますし、しばしば剥がして気合で使い回ししますが、3Mの仮固定用テープには一切の気兼ねをせず、じゃんじゃん使います。
てか、普通に付箋みたいなメモテープに使えるから、ガムテやセロテより活用できますよ、これ。
で、正しくない正しい使い方をしましょう。29erのフロントホイールのチューブレス化や26インチ前後セットのクリンチャーテープ替わりにぺたぺた。

- 張りやすさ5
- 気密性4
- 強度4
- 価格10
- 入手のしやすさ5
気密性と強度をSTANSのイエローを5とした場合の個人的な印象です。さすがに代用品の性能を5にしてしまうと、STANSにしばかれかねない。
欠点は最適幅がないことですか。まあ、これ、リムテープじゃねーから。
ぼくは幅広のリムに巻くなら、左寄りに一巻き→カット→右寄りに二巻きでやります。STANSでは価格にびびってやれませんが、じゃんじゃん使えますし。
まだ45mくらいあるぞー、うおー。

チューブレスレディに必須のシーラントはSTANSのやつですかね。この代用品はちょっと分かりません。自動車用とかがあるかも。