薄歯と厚歯のギアの違い 用途や互換など

薄歯と厚歯、ヒトの歯の種類でなく、自転車のチェーンとチェーンリングのタイプのことです。『うすば』の自動変換の『薄刃』でなく、『薄歯』です、歯です、TEETHです。

スプロケの11TのTはこの頭文字Tです。古参チャリダーは『丁』と言います。

厚歯と薄歯のちがい

薄歯と厚歯の違いは次のとおりです。

  • 薄歯=外装変速用
  • 厚歯=シングルスピード、内装変速、固定ギア用

いずれの自転車のチェーンとチェーンリングのピッチは同一です。1.27cm=1/2インチ。8速用のピッチも11速用のピッチも同一です。

ですから、チェーンリングの歯の間隔も同一です。この値が異なると、チェーンが噛みません。フロントリングもスプロケットも同じです。

左・フロントリング 右・スプロケ
左・フロントリング 右・スプロケ

左が44Tのチェーンリング、右が44Tのスプロケです。リングはフロントシングル用のナローワイドタイプですから、歯先は長くなりますが、歯と歯の間隔はスプロケと同じです。

また、この1/2ピッチでトップギアの最小歯数が左右されます。ノーマルなシマノ/スラムのフリーボディの最小歯数は11Tです。

左SRAM 右SHIMANO スプロケットトップコグ
左SRAM 右SHIMANO スプロケットトップコグ

これより小さくできません。11Tが下限です。10T以下のギアを使うなら、シマノカプレオのフリーやXDドライバーを使います。

Novatec ハブ とXDフリー
Novatec ハブ とXDフリー

フリーの先っちょがオフセットして小さくなります。ピッチのサイズは不変です。台座を小さくしないと、ギアを小さくできません、あたりまえです。

かように間隔は一定ですが、幅は不定です。チェーンの幅はカセットの変速数で変化します。カセットのギア数が8、9、10、11、12と増えれば、一枚一枚のコグは薄くなります。

じゃあ、チェーンも薄く細くなります。こんなです。

左・11速用 右・8速用
左・11速用 右・ママチャリシングル用?

厚みがぜんぜん違います。でも、横幅のピッチは一定です。大は小を兼ねますから、右の8速用は11速のカセットやリングにかかります。

が、ぴたっとはまらず、ルーズにゆるがばします。挙句、ちょっとやそっとでチェーン落ちが起きます。

反対に11速用の薄いチェーンは8速の厚いカセットの歯に嵌りません。小は大を兼ねませんから。

とはいえ、兼用は好ましいものじゃありません。イレギュラーです。むりくり使えても、最大限の機能を発揮できません。町乗り車やお買い物自転車に留めましょう。

リング、カセット、チェーンを統一するのは基本中の基本です。

ピスト、BMX、ダージャン、ママチャリは厚歯

外装変速付きのスポーツバイクのドライブはもれなく薄歯です。ロード、クロス、MTB、グラベルなどなどは薄歯です。

厚歯の車両はシングルスピード、ピストバイク、BMX、トリック系、トライアル、内装変速機、そして、安いママチャリです。

シングルスピードやピストバイクはスポーツ・競技系のバイクです。フリーホイールがシングルスピード、固定ギアがピストです。ピストの代表は競輪です。

ギアが空回りしません。クランク、カセット、ホイールは完全に連動します。ペダルを逆回転すると、ブレーキをかけられます。テクニカルです。

BMXはトリック系のちんまいバイクです。走ったり飛んだり跳ねたり投げたりが基本スタイルです。競技もショートスタンスです。ロードバイクやMTBクロカンみたいにながなが走りません。変速は蛇足です。

内装変速は特殊です。ホイールのハブ内に変速システムがあります。歯車コグは一枚です。

まあまあのママチャリは内装変速や外装変速を持ちますが、やっすい1万のママチャリは1速です。

ママチャリチェーンとエンド
ママチャリチェーンとエンド

ここのつくりはシングルスピードやピストとおんなじです。左のナットをねじねじすると、チェーンのたるみを修正できます。非常に原始的だ。

厚歯の利点

厚歯系ドライブの利点は耐久性です。単純にパーツのユニットが重厚になれば、強度が上がります。薄歯の11速チェーンはわりに神経質ですが、シングルはタフです。

チェーンの素材はだいたい鉄です。アルミは固すぎ、チタンは高すぎ、で、鉄が主流です。野ざらしにすると、ふつうにさびます。

しかし、上みたいなさっびさびのぼろぼろ、ノーメンテ、ノーオイル、野ざらし雨ざらしのガラクタがぜんぜん現役選手です。何年かに一回、たるみ取りをすれば、余裕で10年いけます。

一方、薄歯は数千キロで寿命を迎えます。ことさらに変速性能ががたっと落ちます。しゃりしゃり・・・からから・・・です。チェーンもカセットも短命です。

最近の12速、13速のチェーンはさらに華奢です。

左・12sピン 中・11sピン 右・1sピン
左・12sピン 中・11sピン 右・1sピン

厚歯の欠点

厚歯の欠点は変速の少なささです。ギア比を変えられない。ペダルの重さがずっと一緒です。

最初のギア設定をよくよく吟味しないと、遠乗りではひどく苦労します。長い上りは苦手です。

ふつうのママチャリのギア比は前30前後、うしろ14前後です。スポーツバイクのまんなからへんのギア数です。よくいえば万能、わるくいえば中途半端です。平地にはゆるく、坂には重し。

競輪は45-50、12-16前後です。完全平地用、てか、専用トラックコース用です。ロードバイクのアウタートップより低めです。坂道は眼中にありません。

BMXはトリックとレースでまちまちです。トリック系ではそんなに漕ぎませんし、サドルに座りません。ペダルやサドルはかざりです。ペグが本体です。

レースでは2.3~の軽めギアがふつうです。ママチャリよりちょい軽めです。コースにはこぶ山の上りがありますからね。

てなふうに用途別でギア比は十色です。最初からベストのギア比を出すのは至難です。