自転車にハマれるかハマれないかの最大の関門はサドルです。折よくがっつりハマれても永遠に付きまとう問題が尻のトラブルです。
このSDG FLYサドルは5年目のベテランパーツです。2代目、3代目のMTBから引き継がれて、4代目のDARTMOOORにインストールされました。
しかし、1年間の屋外駐輪のおかげでサドルのシートがボロボロのベロベロに劣化しました。紫外線と酸性雨の威力は絶大です。
シートがここまで劣化すると、雨が隙間に入り込みます。結果、ズボンのケツがびちょびちょです。サドルの硬さには慣れても、これには慣れない。
劣化はシートのみです。クッションや土台、レールやヤグラは問題なしです。シートさえどうにかすれば、まだまだ使えます。
で、試しにハンズのクラフトコーナーに寄って、革の端切れを探してみました。
右手のぼろ切れは別のサドルのシートの残骸です。これより一回り大きい面積の端切れを物色して、牛皮のシートを770円で発見しました。
この端切れをコニシの皮革用ボンドと一緒に購入して、レザーサドルへのバージョンアップに着手します。目標はBROOKS SADDLEだ!
サドル張替えの準備
サドルの張替えはそう難しい作業ではありません。専門工具も不要です。
海外のリペア職人ぽい人の動画を見て、手持ちのツールを集めました。
- ハサミ
- カッター
- ヘラ
- ペンチ
- マイナスドライバー
- ダンボール切れ端
ヘラは皮の糊代をサドルの縁やレールの隙間に折り込むのに重要なアイテムです。自転車乗りの家にはタイヤレバーというものがあります。絶好のヘラです。
ダンボールの切れ端は接着剤を均一の延ばすための使い捨てのものです。
材料は革の端切れと革用ボンドです。
今回のリペアにはホチキスや縫いをしないので、これらの道具と材料で行けます・・・後述のようにシートの厚みを間違わなければ!
古いシートを剥がす
では、雨と経年と紫外線とケツ肉のプレッシャーで朽ち果てたシートを剥がしましょう。最初に固定パーツを外します。
この白いパーツの下からホッチキスが現れました。
20個ほどの芯をペンチやマイナスドライバーでこじって取ります。
で、シートをべりべり剥がします。
この古いシートは型紙の作成に必要です。
ウレタンとベースプレートです。
ベースプレートはプラスチック製です。クッションはウレタンです。これらは皮革用ボンドでくっつきます。
サドルシートを端切れから切り抜く
ベースとウレタンを再接着して乾燥させる間に新しいシートを作りましょう。今回、ぼくはこういうものを作りました。
古いサドルシートをダンボールに貼り付けて、糊代の余白を残して、切り出したものです。いわゆるサドルの型紙、パターンですね。
まあ、形状もシンプルで部位も一個ですから、ざっくり切り抜きもOKです。素材の端切れを小さく切りすぎなければだいたい取り返せます。
余白は2cm以上がベターです。ここをペンチでぐいぐい引っ張りながら貼り付けて、皺やたるみを取るので。
革の柄や筋を見ながら、ハサミで切り出します。
ボンドを塗る
このシートをウレタンにくっつけます。まず、革用ボンドをまんべんなく広げる。
すぐに貼り付けずに少し乾かします。あと、サドルの縁から裏をいっぺんにやらない。表を貼ってから縁と裏をします。
ここからが山場です。
シートの余白を折り込んで、ヘラやタイヤレバーで当たりを付けて、縁を張り付けていきます。前後の広い面からやるのが簡単です。
カーブの部分にはカッターやニッパーで少し切れ目を入れて、同じように折り込んで行きます。
全体的にあたりを付けて成型したら、ボンドを付けて、しっかり圧着します。
レザーサドルからダイニーマサドルへ
さて、ここまで作業を進めて、致命的ミスにぶちあたりました。素材の皮の端切れが厚すぎて、サドルの先端やレールの付近に収まりません。
ノギスの実測の数値です。
- 革の端切れ 1.1mm
- 元のシート 0.7mm
サドルシートには1mm以下の生地の方がベターです。少なくともぼくが買ってきた1.1mmの牛皮の端切れはサドルの張り替えには向かなかった! 糊の接着力に勝ってくっつく前に剥がれてしまいます。
で、切れ目を多くしたり、アロンアルファを使ったりしましたが、手応えを得られなかったので、レザーサドル化を諦めて、さらに別のシートを引っ張り出しました。
見た目は青いごみ袋、その正体は最強最新ハイテク素材のダイニーマです。この生地は同じ重量のスチールの15倍の強度を誇ります。
もともと超軽量リュックサックの試作にアメリカから取り寄せましたが、諸事情でとん挫して、長らく棚の肥やしでした。
鞄屋さんの話ではこのダイニーマは接着剤やテープに非常に良くくっつく生地です。実際、海外のDIY好きはこれとボンドで財布やポーチを作ります。縫わない。
ということは、ボンド付けのサドルシートにはぴったりです。完全防水ですし。
弱点は熱とひっかきですか。擦れ耐性は不明です。たぶん、サドルのシートにした人はいない。
皮用ボンドはふつうにくっつきます。レールの隙間への折り込みは非常に簡単です。生地がぺっらぺらだから。
シートをぐるっと張り付けて、余白を切り落とします。神は細部に宿ります、フェイディアスです。
しかしながら、全部の美観がグレートですから、こんな小細工は焼け石に水です。
シート交換で超軽量ダイニーマサドル完成
そんなこんなでBROOKSみたいなレトロサドルへのカスタムが最新鋭のダイニーマサドルへの進化に方向転換しました。
誰ですか、スーパーで拾ったゴミ袋をサドルカバーにした奴は?!わしやないか!
まあ、シートを切り出した時点でうすうす気付きましたが・・・シースルーとしわしわが良くない・・・いや、でも、それがダイニーマですし・・・
見た目は貧乏チャリダーですが、機能は完全防水、超軽量、最新鋭と無敵です。耐久度は不明ですが、あと10枚分くらいのゴミ袋生地はあります。
ダイニーマシートの座り心地は意外とふつうです。予想よりつるつる滑りません。不満は色だけです。
サドル張替えの注意点やコツ
- 工具と材料は家とハンズで足りる
- 生地は薄目に。0.5~0.7mmがベター
- シートの余白を大きめにとること
- ボンドは20mlで足りる
- ダイニーマの薄手の水色はビミョー