自転車のクランクは回転駆動系パーツ、ドライブトレインの顔です。
しかし、超メジャー級の『ペダル』の前ではこの部位の知名度はイマイチです。上の分解図から瞬時に『クランク』を指差せる人は立派なサイクリストです。
自転車のクランクって?
これが素のクランクです。
世間的には『自転車のチェーンの横のくるくるする棒』ですね。
自転車的にはペダルのおまけ・・・ではありません。クランクはれっきとした一人前のパーツです。
でも、自転車好き以外にはこれがこんなにバラけることさえも新鮮なおどろきです。
事実、クランクの交換、メンテナンスに思い至るのは自転車利用者のごくごく一部の人々ばかりです。
車乗りの大半がエンジンを触れないように自転車乗りの大半はクランクを弄れません。
交換はまあまあ簡単
クランク交換は一般人には未知の作業です。しかし、作業はそう難しくありません。
道具をそろえて、手順を守れば、ふつうに交換できます。手先の器用さ、腕力、頭の回転、いずれが不要です。
本格的なロードバイクやMTB、ヴィンテージもの、特殊車両、フルオーダーなどはこの限りでありません。人力で走るコマ付きのノリモノは非常に多彩です。
クランクの交換・取り外し編
では、市販の量産型一般自転車のクランクの交換をメインテーマに据えて、はなしを進めましょう。
このクラスのチャリンコのクランクはおおよそにスクエアテーパー型です。軸受けの形状が四角形です。当然、軸の形状も四角形になります。
テーパー=先細りです。四角いシャフトのさきっぽは根元よりほんの少しすぼまって細くなります。これがスクエアテーパーのクランクとBBです。
このシャフトのテーパー度や横幅の長さはモデルやメーカーや用途でばらばらです。
- 上、GIANT クロスバイクのBB
- 中、TOKENのBB
- 下、ACEのチタンシャフトBB
完成車付属品はいちばん上のものだけです。TOKENとACEのは別注です。
共通点はスクエアテーパー、そして、シャフトがBB側に付くことです。これより後の世代の中空型ドライブシステムではシャフトはクランクに付きます。
例外的に競輪の自転車は旧式のスクエアテーパーや八角形のオクタリンクです。シャフトはBBの一部です。
固定(フィキシング)ボルトを外す
スクエアテーパークランクの固定具は大きな六角ボルトです。固定ボルト、フィキシングボルトです。ソケットのサイズは8mmです。着脱には8mmのアーレンキーが必要です。
この大きさのアーレンキーは100円ショップのセットにはありません。ホームセンターのドライバーのコーナーに単品があります。
ママチャリのこの部分には安っぽいグレーのキャップが良くかぶさります。さび除けです。
コッタレスクランクリムーバー
つぎの作業がクランク交換の山場です。コッタレスクランクリムーバーてものを使います。
クランク外し、クランク工具、コッタレス抜きなどなどの別名があります。自転車のクランクを外すためだけの専用工具です。
スクエア専用品とスクエア・オクタ兼用品があります。最近の製品はだいたい兼用品です。てか、そもそも八角形ソケットのオクタリンクが超レアです。
固定ボルトが外れても、クランクはシャフトにびっちり嵌まり込みます。返しやねじ溝はありませんが、少々の押し引きは通用しません。ぞくに圧入の状態です。
で、このびちっと嵌まり込んだクランクとシャフトをこのコッタレスリムーバーで引きはがします。
奥のねじがクランクのみぞにはまって台座になって、手前のねじがシャフトをぐりぐり押し出します。小さなジャッキみたいな装置です。
裏技と禁じ手
工具なしでクランクを外す方法はこつこつハンマーです。上述のようにスクエアクランクのソケットとBBのシャフトには返しやねじみぞがありません。どっちの表面もつるぺたです。
ためになんらかの衝撃を加え続けると、徐々に圧着を緩められます。ゴムハンマーで内側から外側にこつこつ叩くのがコッタレス工具の代打のおはこです。
さらなる禁じ手は固定ボルトを外して、自転車をふつうにこぐことです。だいたい町内一周でクランクがグラグラのユルユルになります。
しかし、このごり押しのやり方では力のかかり方にかたよりが出て、しばしばソケットやシャフトが歪むとか曲がるとかします。ちゃんと工具を使いましょう。
逆に取り付けのときに固定ボルトを締めても、走行中にグラグラやユルユルに見舞われるなら、ねじを増し締めしましょう。
クランクの交換・取り付け編
スクエアクランクの取り付けは取り外しよりかんたんです。ボルトでクランクを固定するだけです。使用工具は8mmアーレンキーのみです。
上記のコッタレスリムーバーはクランクを取り外すだけの工具です。取り付けには無用の長物です。ためにリムーバー=取り外すものです。着脱両用のマスターツールではない。
角度とサイドに注意
取り付けの注意点はクランクの角度と左右です。リング付きを右に、リングなしを左に付けます。
悪ふざけをして、左右のアームを直角にするとか、別々の左クランクを両サイドに付けるとかしない。
で、固定ボルトをしっかり締めます。塩ビパイプとかでアーレンキーの柄を延長すると、らくに力を加えられます。
アルムやスチールの金属フレームは競技用のカーボンフレームよりおおらかです。少々の締め過ぎは無問題です。締めなさすぎは走行中のグラグラの遠因になりますし。
BB交換は別物
クランクの交換はこむずかしいものじゃありません。ぼくの個人的なつまづきは「工具の名前が分からない!」でしたし。
『コッタレスクランクリムーバー』は日常生活では出てきません。
が、クランクの軸、ボトムブラケット、BBの交換はヒトクセです。別の専用工具が必要ですし、長期の屋外駐輪のチャリのBBはおうおうに黒歴史レベルのタブーです。
そして、スポーツバイクのBBは規格と仕様のジャングルです。しろうともくろうともこの全容を完全に把握しきれません。ポケモンのようにあとからあとから新型が増殖します。
そして、交換せずとも、お掃除するなら、コッタレスクランクリムーバーを。自転車いじりへの一歩がまちがいなく開けます。