自転車整備に難易度別のランキングがあれば、油圧ディスクブレーキのメンテナンスは上位にランクインしましょう。入賞は確定です。
ネックはブレーキオイルです。このケミカルの取り扱いがヒトクセです。油圧DBは自転車パーツ的には比較的に新しいものです。
「ブリーディングね、はいはい」
て、二つ返事でゆえるのはベテランMTBerかオートバイ乗りばかりでしょう。
なやましいDOTブレーキフルード
自転車のブレーキメーカーは変速機のように寡占ではありません。大小のブレーキ屋が世界各地にちらばります。
TEKTRO(TRP)はおなじみです。
もちろん、自転車パーツ御三家もブレーキを販売します。タッチのやわらかさや制動力のフィーリングは三社三様です。
一般的な見解とぼくのインプレでは、
- Shimano=Shimano系=ガツガツ
- カンパ=MAGURA系=ふつう
- SRAM=AVID系=ムニムニ
です。カンパのDBのフィーリングの評価が定まりませんけど、ガツガツシマノ、ムニムニスラムはすでに定説化します。
サイクルモードのカンパブースの試乗車の油圧ディスクブレーキの効きはふつうでした。すなおな感触です。
Shimano系のブレーキフルードはミネラルオイル、MAGURA系のカンパニョーロのフルードもミネラルオイルです。他方、SRAM/AVID系はDOTです。
DOTは自転車メンテ製品のなかでは最強クラスのケミカルです。原液は塗装を溶かしますし、ゴムやシールを痛めます。
このせいか「うちはシマノのDBの整備しか受け付けませーん」てチャリ屋がちまたには少なくありません。やればできるよ! ファイト!
HOPEはDOT5.1
うちのMTBのブレーキは英国の自転車パーツメーカーのHOPEのものです。モデル名はTECH3 E4、オールマウンテン系のディスクブレーキです。
このHOPEの油圧DBのブレーキオイルはDOT5.1です。ぼくはAZの汎用品を買いました。小売りの自転車用ケミカルはむやみに割高ですから。
オイル交換、エア抜き、ぞくにブリーディング作業はもうお手の物です。でも、たのしいメンテではありません。DOTの取り扱いは神経質です。
DOTはどっとあふれる
おまけにHOPEのディスクブレーキのフルード交換の手順ではもれなくDOTはリザーバータンクからどっとあふれます。あふれさせるのが正しい方式です。
DOTがどっとあふれる・・・て、シャレは気休めになりません。クリーニングがたいへんです。
このいきさつからブレーキ周りの小さなCONSにはスルーを決め込みます。が、そんなこんなで前回のブリーディングから半年が経ち、乗り出しから一年が過ぎ去りました。しおどきです。
左レバーのブレーキホースカット
じゃあ、ひさびさのディスクブレーキメンテに着手しましょう。ポイントは左レバーのブレーキホースです。
なにがだめでしょう? はい、金属のメッシュの被膜の透明のビニルが寸足らずです。そして、以前のオイル漏れで黄ばみが残ります。さらに、ホースの長さがすこし余ります。
この部分をちょろっとカットするのが今回のメンテです。作業はシンプルですけど、DOTが緊張感をあおります。
べつにそこらへんにDOTをどっとまき散らして構わんなら、気楽にびゃーって作業できますけどねー。一応、ぼくは布や紙に吸わせて、ごみ箱にポイします。
手袋、タオル、ペーパー
さて、このフルードがらみの作業にはめずらしくニトリル手袋をはめます。
で、ぼろ布を床に敷いて、トイレットペーパーを当てます。おおざっぱなぼくがこんなにピリピリするのはこの作業ばかりです。
リザーバーを水平にして、ホース側のボルトをレンチで緩めて、レバーとホースのコネクト部分を取り外します。
赤銅色の金具は上からワッシャ、コネクターインサート、オリーブです。しんちゅう製でしょうか? ちなみにこれらの再利用は非推奨です。
CUT!でDOTがどっと!
この状態ではオイルは漏れません。気圧と張力でたもたれます。しかし、油断は禁物です。カットの瞬間にホースの切れ端のDOTがどっとあふれます。
はい、ぶじに吸い取れました。ぼくはケーブルカッターで切りますけど、プロは専用のディスクブレーキホースカッターを用います。ShimanoやJAGWIREからツールが出ます。
しかし、うちのブレーキホースのアウターは金属あみあみのメッシュ地です。DB専用ハイドロカッターでのカットはNGです。
・・・何気にこのメッシュホースはブレーキホース的には最高にやっかいなタイプだあ? 在庫品の安さに釣られて選びますけど、おそらく二度とリピートしません。
なぜなら、ホースの断面のメッシュがえげつなくささくれやがります。素のオリーブが通りません。つぎからゴムホースにしよう。
おかげでなぞの『オリーブ皮むき』て作業が工程にくわわります。マイナスドライバーでオリーブの割りをコジコジひろげるDIYです、オリコジ。
是非は不明です。いや、こんなごり押しはおそらくNGでしょう。でも、これをしないと、オリーブをホースにセットできません。
オリーブ、インサート、ワッシャの順にはめます。この工程ではPARKTOOLのケーブルカッターのかしめ機構が大活躍します。
最後にレンチでコネクタボルトをしっかり締めます。この作業でホースがねじれます。
ハンドルからレバーを外して、ホースのねじれを取ります。完成!
はい、いたんだビニル部分を切り離して、ベストな長さに調整できました。ほんとにほんとにささいなカスタムです。
でも、ハンドル周りのビジュアルは常に視界に入ります。FPSのプレイヤー視点のようなものです。乗るたびに「治さんとな~」ておっさんみたいにボヤいてしまう。それのループがなんかヤだ。
エア噛みの気配はとくにありません。あとでフルードをすこし足しましょうか。
このあと、周辺を入念に見回して、DOTの痕跡を探します。・・・はい、うまくきれいにやれました。120点!