最近のスポーツバイクのトレンドは人力から電動へ急激に変動します。展示会や試乗会の主役はあきらかにこれらのEbikeです。
ところで、電動アシストはなんのために存在するか? ひとえに坂を楽に上るためです。
この辛いセクションを愛好するのは一部の酔狂なロードバイク乗りだけです。
ぼくはこのグループに属しませんから、電動マウンテンバイクを何度か検討します。ことさらにオフロード、山道の上りは超絶ハードですから。
で、スポーツ自転車の電動アシストの情報を集める最中におもしろいものを発見しました。それがフリーパワーです。
画期的なアシスト機構、フリーパワー
自転車界には次から次に新しいもの、奇妙なもの、???なものが押し寄せます。たいていが海外発のアイテムです。
数年前からクラウドファンディング絡みのものが多くなりました。
ぼくもセミ電動ワイヤレス変速システムのX-shifterの早期購入に申し込んで、商品の到着を待ちますが、いまだに受け取れません。
あげくに一般販売の方が早く出回りました。おい!
From 宮崎
今回のフリーパワーは日本発のアイディア商品です。
製造元は宮崎県の株式会社 FREE POWER社です。事業内容は以下の通りです。
- 自転車ギア研究開発
- ギア全般に関する研究開発
- 新技術の研究開発
今のところFREE POWERの商品はフリーパワーのみです。これがいろいろなメディアでたびたび取り上げられて、一定の知名度を獲得します。
とくに「がっちりマンデー」の特集が現在の飛躍の一因です。
逆に自転車雑誌や自転車メディアはほぼこれを取り扱いません。立場的にはFREE POWERは中立ないし部外者のようです。
創業者が自転車業界と無関係でしょうか? とにかく変な業界色はしません。
宮崎のシェアサイクルPippaに採用
Pippaというシェアサイクルのサービスがあります。利用料金は100円/30分からです。エリアは東京、京都、宮崎です。なぜに大阪と福岡でないか?
ぼくは京都でこのサービスを利用しました。
上の京都のPippaの車体は通常の街乗りタイプですが、宮崎のPippaはフリーパワー仕様です。
フリーパワーの仕組みはシリコンバネ
フリーパワーの特徴は『非電動式アシスト機構』です。が、この文面では具体的な形が思い浮かびません。
こちらがFREE POWERの公式ページのイメージ図です。
見ての通りにその正体は異形のクランクです。青色のシリコン素材が踏み込みの力を蓄えて、デッドポイントで解放される、と。つまり、バネですね。
実のところ、このようなアナログバネ付きのクランクは既存のものです。これはBIkedriveの製品です。
この手のアナログアシストクランクは過去に何度か登場しますが、キワモノのレアアイテムの域を出ません。電動が一般化しましたし。
つまり、フリーパワーは『過去の自転車アイディアの現代的リメイク from 宮崎』となります。
販売元はサイクルオリンピックとそのほか
フリーパワーの開発元のFREE POWER社は販売店ではありません。
正規取扱店は長らく関東のサイクルサイクルオリンピックだけでしたが、他地域に販売店がちらほら出始めました
ちなみにサイクルオリンピックは関東のホームセンターOrimpicの自転車販売部門です。
この系列が最初にフリーパワーの取り扱いを始めました。おかげで『サイクルオリンピック』の検索のサジェストには『フリーパワー』がぐいぐい出ます。
関西ではじてんしゃ館とじてんしゃチャンピオンがフリーパワーの取扱店です。この二店舗はともに奈良の株式会社 チャンピオン西川営業部の系列チェーンです。
この展開からフリーパワーの傾向がだいたい分かります。ファミリー向け、一般向けのアイディア商品ですね。スポーツ自転車店用の商材ではありません。
フリーパワーの購入方法
フリーパワーの購入方法は3種類です。
- フリーパワー付き自転車を買う
- 店頭の自転車のクランクをフリーパワーに交換
- 持ち込みの自転車に取り付け
1のフリーパワー搭載の自転車はオリジナルモデルです。いずれがファミリー向けのママチャリ、軽快車タイプです。お値段は40000円からです。割高。
2,3の価格は工賃込みでそれぞれ12000円、15000円(税別)です。クランクの単体の販売はありません。Amazonにも楽天にもありません。
つまり、フリーパワーは割高なオリジナルモデルや工賃とのセット販売で利ざやを稼ぐ商材です。話題性とふんいきが命ですね。
自転車に特別な関心を持たない一般人には画期的な商品に見えても、日ごろから自転車パーツを漁る人の目にはキワモノにしか見えません。
いや、改造好きには逆におもしろいネタですが。
後述のようにこのバネ式のアナログなアシスト?機構に電動アシストのような期待を抱くと、イメージとリアルのギャップにげんなりしますよ。
アシスト効果はあるか?
電動アシスト機構は本当のアシスト機構です。ハブやクランクの内蔵モーターで自転車に出力を与えます。
一方のフリーパワーのようなアシスト機構は疑似的なアシスト機構です。
アシストパワーの元はシリコンのたわみですが、そのたわみの元は乗り手の踏み込みです。
この世にはエネルギー保存の法則があります。100のパワーは105にはなりません。
この理屈が罷り通れば、フリーパワーの出力は理論上では無限大になります。
で、物質の変形はパワーの発露ですから、シリコンばねの伸び縮みには出力の消費が発生します。
例えば「このバネを変形させてください」と言われたら、なにかの力を掛けてビヨンビヨンさせません? え、念力?
つまり、フリーパワーが行うのは出力の増大ではなく、出力の均等化です。
上記の1のパワーが100です。2のところでシリコンばねが変形します。ここで多少の出力がロストします、98。3の解放でまたパワーが減ります、96。
が、自転車のペダリングのパワー分布は完全に均等ではありません。なぜなら人間の足は円運動に向かないから。
ゆえに足の力が強く掛かるところ=1と掛からないところ=3があります。
で、その弱い3のシーンでシリコンのパワーがぐっと来ると、人間の感覚はそれがアシストだと錯覚します。
スポーツ自転車乗りはこのペダリングのパワー分布の均一化を自分でやります。ロードバイク乗りはパワーのロスにはことさらに神経質です。
でも、一般的な自転車利用者はこれをうまくできません。がしがし漕ぐか、漫然と踏むのが関の山です。まあ、大半の人には自転車はスポーツじゃないし。
つまり、フリーパワーの『アシスト』の実態は出力の物理的な増大でなく、出力の均一化の補助です。電動アシストの代用にはなりません。
フリーパワーをロードに付けてみた
と、この予測の答え合わせのために実物を調達しました。フリーパワークランクです。
はい、ほんとにシリコンばね入りのなぞシステムでした。ヤフオクで7500円なり。
ロードバイクに付けました。
悪い意味でイメージの通りです。ふにゃふにゃや!
スポーツ用品や実用アイテムではありません。ネタの用おもしろグッズ・・・情弱向け変態クランクです。
ちなみにぼくのYouTubeチャンネルのフリーパワーの動画のコメントの賛否は1:9くらいです。お察しください。
取り付け動画と試走動画です。