自転車のブレーキ派は主に二種類です。ホイールの輪っか=リムを挟んで止めるリムブレーキ、ホイールの車軸=ハブのローターを挟んで止めるディスクブレーキです。
一般的なママチャリの前輪はリムブレーキ、後輪はディスクブレーキの一種のローラーブレーキやバンドブレーキです。
輪を挟むか、軸を挟むか・・・2010年以降のスポーツ自転車業界では後者が標準になりました。もっとも、上のような安っぽいバンドブレーキでなく、オートバイのディスクブレーキの小型版みたいな本格的な機構です。
オフロード用のマウンテンバイクが最初にディスクブレーキ化して、アーバンコミューター、グラベル、ロード、クロスバイク、折り畳みさえがこの流れに乗ります。
旧来のリムブレーキ派はキャリパー至上主義をかたくなに信仰しますが、業界の趨勢はディスクブレーキ推進派です。ディスクブレーキが標準で、リムブレーキがオプションですね。
ディスクローターの異音を解決する
さて、MTBではディスクブレーキは10年前から標準装備ですが、日本人におなじみのロードやクロスバイクではこれは数年来の新参者です。
しかし、問題点や修正ポイントはMTBのディスクブレーキ史からほぼ出尽くします。
- エア抜き
- オイル漏れ
- 音鳴り
ライトユーザーが最初に直面するのはおそらく音鳴りでしょう。いや、異音問題はキャリパーブレーキでもVブレーキでもバンドブレーキでも起こりますが。現におっさん&おばさんのママチャリの後輪はしばしば狂的な奇声を発します、キキュキュキュキュユーー!!!
あの甲高い異音はバンドブレーキの中の紐の摩耗から生じます。他方、ディスクブレーキの異音はローターの歪みやパッドのずれに起因します。
パッドとローターの隙間は1mm以下です。ささいなズレや歪みでどこかがなにかに接触します。と、シュ、シュ、シュ・・・と、耳障りな音が出ます。
異音は異常の前触れですが、ブレーキのこれは深刻ではありません。車体や走行に実害はない。ただし、静かな場所では乗り手の神経がじわじわ蝕まれます。
- クランクぎこぎこ
- チェーンぎしぎし
- ローターしゅっしゅ
三つの異音が一つになれば、一つのストレスは100万パワーです。結果、自転車乗りは山中で発狂します。
ローターをパッドで挟むという方式はMTBからロードやクロスバイクのディスクブレーキまで共通します。対策もこれに準じます。
クリアランスの確認
ディスクブレーキのディスクローターはスチール製の円盤です。厚さは2mm前後です。
これはAVIDのG3ローターです。スタンダードな1ピースのローターですね。
外側スチール、内側アルミのような2ピースのローターもあります。アルミはスチールより軽量ですから、多少の重量アドバンテージを得られます。あと、デザインがクールだ。
で、スチール、鉄は意外とかんたんに変形します。しかも、ディスクブレーキのクリアランスはせんさいです。コンマ数ミリの曲がりが干渉に繋がる。
そして、今回、なぜかうちのMTBの前輪から豆腐屋か焼き芋屋のような音が出ました。
ローターの一部がパッドに干渉します。あと、パッドの内側の板バネに曲がりがありません?
いつもキャリパーの位置替えで済ませますが、この機にディスクローターの修正にチャレンジします。
チェック項目
例のようにディスクブレーキのパッドとローターのクリアランスは1mm以下です。ささいなズレが干渉に直結します。
ローター以外の容疑者はこんなところです。
- パッドのずれ
- パッドの消耗
- ブレーキ台座
- ネジのトルク
- 板バネ
パッドの厚みがなくなると、板バネがローターの直に当たって、カチカチシャリシャリ音が出ます。これは交換のサインです。
ブレーキキャリパーの取り付け台座のフェイシング精度はピンキリです。
また、キャリパーはボルトの締め付けで微妙にずれます。ここは球押しの調整のように塩梅が大事です。
レンチでローターを直す
ディスクブレーキのローターの修正に特別な工具は不要です。ぼくはてきとうなモンキーレンチを使いました。
このくらいの曲げを数回やると、0.2mmくらい戻せます。正味、手力で十分に行けますよ。
ぼくみたいに振れ取り台を使うのは少数派です。ベテランさんは車体から外さずに目視でクリアランスを見ながらやります。
手と目があれば、だれでも出来る!
ローターより怪しい板バネの歪みもまっすぐにしました。
このメンテでばっちり音は消えました。
ディスクブレーキの異音の対策
ブレーキの音鳴りはなにかの干渉から起こります。で、パッドとローターのクリアランスの狭さからこの問題はキャリパーブレーキやVブレーキより多く発生します。
といって、ブレーキの片効きやホイールのずれはすべてのブレーキシステムに共通します。ささいな異音は自転車の宿命です。
ローターの矯正はわりとかんたんですが、干渉の原因はそればかりではありません。台座のずれ、ボルトの締め付けの偏りは異音の常習犯です。
大抵の場合、ここまでせずとも、パッドとローターをしっかり見ながら、キャリパーのボルトをきちんと締め直せば、クリアランスを確保できます。
とにかく明るいところでやりましょう。