2010年以降、スポーツバイクのブレーキはリムブレーキからディスクブレーキに移行します。オフロードはほぼ油圧DBですし、ニュージャンルのオールロードもそうです。
最近では前代未聞の水圧ディスクブレーキさえが市販化されます。ブレーキフルードがおみずです。水道水でメンテしまくれます。
自転車では空前ですが、ノリモノ全般では珍しいもんじゃありません。フルードの扱いはめんどうなものですから、水圧ブレーキシステムは次世代のスタンダードになりえます。
ラスト・オブ・リムブレーキ
リムブレーキの総本山のロードレーサーさえがついにディスクブレーキ化の波にさらされます。DBモデルのみの展開がちょくちょくあります。
セミスポーツバイクのクロスバイクや小径車はVブレーキを搭載します。これは安価、頑丈、強力です。リムブレーキのひとつの完成系です。
で、このながれのなかでなぜかぽっと新しいスポーツバイク用のリムブレーキが登場します。ダイレクトマウントブレーキです。
これはVブレーキとキャリパーブレーキのハイブリッドみたいなリムブレ界の末っ子です。最後の最終のロード用リムブレーキでしょう。オフロード用はありません。
多分にこの機会を逃すと、ぼくはもうダイレクトマウントブレーキに触れられません。そう思えば、機材トレンドの変わり目のあだはなのようなDMBに惹かれます。
そんなわけでマイ2018シーズンの新車はダイレクトマウントブレーキのロードレーサとあいなりました。
シマノ? カンパ? SRAMの新型?
NONO,KCNC!
KCNC CB11を購入
後発商品のさだめでダイレクトマウントはキワモノ扱いを受けましたが、一台のエポックメイキングなロードバイクの登場が状況を一変させました。
はい、TREK MADONEです。ザ・世界最速のスピードキングです。こいつのブレーキが純正のボントレガーのダイレクトマウントです。
このMADONEの発表が2012年です。その先進性とフロントフォークのパカパカ窓が業界に衝撃を与えました。
で、シマノ、カンパがダイレクトマウントブレーキを送り出し、最後の最後に滑り込みでSRAMがS900を発表しました。
SRAM派のぼくの本命はこいつでしたが、あいにくと出荷時期が2018年6月以降になります。乗り出しが梅雨のまっさかりになってしまう。
で、ほかのCOOOLなブレーキをあれこれ検討して、このKCNC CB11をチョイスしました。理由は見ため、ミタメ、MITAMEです。
ダイレクトマウントの特徴やメリット
当然のごとくダイレクトマウントブレーキの取り扱いはおはつです。バラ完の計画の段階でいちからじっくり調べました。
- フレームは専用のもの
- 二点止め
- 一点止めのキャリパー穴には×
- Vブレーキ台座には×
- 上記二つより小型で軽量
- 手応えはかちっとキビキビ
- 前後別
- リアはさらに細分化
個人的な気がかりはほかの台座との互換、リアブレーキの種類でした。手応えや使い勝手はこれまでの試乗でなんとなく分かります。
ダイレクトマウントのマウント部分の実物です。
二点止めのねじ固定です。フォークやフレームにじかに取り付けます。これが『ダイレクトマウント』の由来です。
従来の一点止めのキャリパーブレーキの固定方式はナットです。
フレームやフォークの穴はつるぺたの空洞です。ノットダイレクト。ために横からの衝撃が加わると、キャリパー本体が右へ左へずれます。
Vブレーキは二点止めですが、フレームの台座に専用の長いソケットを取り付けて、そこにブレーキアームを通して、上からボルトで固定します。やはり、ノットダイレクトです。
ちなみにダイレクトマウントの引き代はロードのデュアルレバー用です。ふつうのフラットバーでのフィーリングはピキピキピーキーになります。
ダイレクトマウントの体重測定
ダイレクトマウントの大きなメリットがコンパクトさです。KCNC CB11のブレーキアームの前後セットの重量です。
205g! 超軽量です。
前後セットのパッドの重量です。
205+55=260gです。上位モデルのKCNC CB12はさらに軽量です。が、予算の都合でこちらが選ばれました。ちなみにセット価格は20000円です。
最軽量はCANE CREEKのeeBrakeです。これは200gを切ります。Specialize Tarmac S-Works Ultralightに付きます。一個3万円也。
ブレーキ取り付け
さて、フレームとフォークに取り付けましょう。このKCNC CB11のボルトはこんなところにいやがりました。
ところで、ダイレクトマウントのねじの長さは変わりません。フロントのボルトもリアのボルトもおんなじ長さです。
このおかげでフロントをリアに、リアをフロントに取り付けられてしまいます。ケーブルガイドの向きを見て、正しいキャリパーを取り付けましょう。
左右を均等にしめる
フォークにのっけて、アームをしぼって、ボルトの台座のねじ穴をそろえて、しめしめします。固着を気にするなら、グリースをちょこっと差しましょう。
このとき、片一方だけを一気にしめない。左右均等が正解です。アーレン二刀流がべんりです。
だいたい一周回しごとに左右を順次にまし締めして、最後までぴしっとマウントします。
リアはシートステーマウントです。クイックリリース付きです。
センター出しはちっこいネジ
二点止めのダイレクトマウントブレーキはキャリパーみたいに横へぎゅいん!てずれません。片効きの調節はひじょうにかんたんです。
センター出しの調節ボルトがどこかにあります。KCNC CB11ではこれがそうです。
これでタイヤを見ながら、クリアランスを調整します。最近のものはタイヤとリムのワイド化にともなって、700-28Cや30Cに対応します。
ブレーキパッドの取り付けと調整
最後にブレーキパッドを取り付けます。ここのポイントはキャリパーブレーキやVブレーキのポイントとおんなじです。
パッドをリムサイドにフラットにせず、フロント側をすこし内にかたむけます。ぞくにハの字、トーインです、トゥイントゥイン!
トーインのトーはトーキックのトー、トーシューズのトーです。つまり、つま先のことです。コレをinする。Toe inです。
メリットは音鳴りの予防と制動力の向上です。カード一枚のかんたんな作業です。やりましょう。
ブレーキシューをリムサイドに合わせて、パッドの後ろ側にカード状のものをはさんで、レバーをぐっと引きます。
で、ふつうにボルトを増し締めして、パッドを固定します。
ここからブレーキを開放すると、パッドの後ろ側をカード一枚分やや開き気味にできます。実態はトーインでなく、ヒールアウトです。
進行方向からのパッドの角度がスキーのボーゲンみたいなハの字になります。
はい、わかりにくい絵です。
これはやや大げさなVブレーキのトーインの写真です。
これは裏側からのビューで逆ハの字ですが、乗り手の目線からのブレーキパッドのクリアランスが『ハ』に見えます。これが秘技トーインです。
ダイレクトマウントブレーキのインプレ
ダイレクトマウントブレーキのインプレは由来のとおりの印象です。つまり、キャリパーとVの中間です。マイルドなVブレーキorパワフルなキャリパーてなものです。
また、二点留めのボルトとブレーキ裏のブースターみたいな金具のおかげでフォークやステーの剛性はかくじつに上がります。支柱が一本増えるようなものですから。
ダイレクトマウントやディスクブレーキを試した後にキャリパーブレーキを見返すと、そのきゃしゃさにがくぜんとします。初期のカーボンロードはガラス細工みたいなもんじゃないか?
懸念の古いカーボンリムとの相性はふつうです。ドライな平地では問題なしです。しかし、ダウンヒルの後半と雨天はグレーです。これはリムブレーキの共通の弱点です。
それから、KCNCのものは全般的にきゃしゃです。使用にはわりと神経を使います。ハードユーズはNGです。超軽量やレア度にこだわらないなら、純正系やTRPのものを使いましょう。