2023年7月1日に特定小型原動機付自転車というニューカマーが世に解き放たれました。
はたして、ぼくは秋の夜風に誘わされて、ヤマハの電動フルサスマウンテンバイクとこのフル電動キックボードの二択で悶々と悩み、最終的にこちらを購入しました。
オークションの中古品の取り扱いはやや難ですが、書類がきちんとあれば、ナンバープレートと自賠責の手続きは難しくありません。→電動キックボードのナンバープレートの取り方と自賠責の加入方法
ここでは一般ユーザー&自転車好きの観点から特定小型原付及び電動キックボードのメリットとデメリットを紹介します。
重いキックボード型が判断ベース
ぼくは実機を2023年10月2日にヤフオクで購入しました。この時点の特定小型原動機付自転車の市販品は数種類しかありません。おまけに大半が在庫切れか入荷遅れです。
主要な商品です。
- RICHBIT ES1 Pro 軽量モデル
- COSWHEEL MITAI T Lite 本格モデル
- YADEA KS6 PRO JP 本格モデル
- STRIEMO 3輪モデル
- スズキ スズカーゴ 4輪モデル
第一候補はホンダ系のSTRIEMOでしたが、一次二次出荷分は抽選販売で完売御礼でした。次回の予定は未定です。
その他の商品も全般的に品薄or在庫切れです。この特定小型原付第一世代の供給不足はしばらく続きましょう。
その最中、たまたまマイ物欲センサーがヤフオクでこのYADEAの中古をキャッチして、マイ衝動買い人差し指が勝手にポチりました。
まあ、選択肢は多くなく、STIEMOは売り切れで、スズキの四輪モビリティは未販売ですから、実際は『軽い電動キックボードor重い電動キックボード』の二択です。
で、サンプルは重い方の電動キックボードのYADEA KS6 PRO JPです。以下の比較や考察はこれに基づきます。
電動キックボードのメリット
特定小型原付の電動キックボードのメリットです。
- 静か
- 姿勢が自転車よりナチュラル
- らくちんでおもろい
- おしゃれ
- ヘルメットが任意
音が静かすぎて危ないレベル
ぼくは生粋の乗り物嫌いです。ドライブでは15分でグロッキーになりますし、自分の運転で普通に酔いますし、停車中の車内ですら何か嫌な感じを覚えます。
不調の原因は振動、音、匂い、雰囲気等々です。最近では車のドアを閉じる「バタン!」という音で心臓がちょっとひりつきます。マジでPSTDでしょうか?
原付やオートバイの乗車は自動車、バス、タクシーより平気です。でも、やっぱり、車体の振動、エンジン音、ガソリンの匂いとかが付きまといます。
そのせいかオートバイはぼくの物欲センサーには引っ掛かりません。
電動キックボードはこの点をクリアします。まず、モーターがめちゃくちゃ静かです。
YADEA KS6 PROのモーターは後輪内蔵型で、定格500Wです。停止状態からのフルスロットルはほぼスクーターです。
スタートダッシュや上り坂では「フゥゥーン…」という低い駆動音が鳴りますが、平地の安定走行では音らしい音はほぼしません。
逆に走行音が静かすぎて、並走や追い抜きがセンシティブです。先行の自転車が全く気付いてくれない。
電動モーターは給油と無縁です。ガソリンフレーバー→車酔いの思い出→胸やけ→げろげーろのPTSDは発生しません。
車体の前部の振動はサスペンションのおかげで緩和されます。手首はそんなに疲れません。ただし、右手の親指が割と消耗します。スロットルの長押しがまあまあの負担です。
あと、サドルの支えがないからか、タイヤがボリューミーだからか、最大時速が20kmで留まるからか、折り畳み自転車やミニベロより衝撃はマイルドです。
タイヤはCSTの10×2.5インチのチューブレスのミニバイク用です。これも乗り心地の向上に貢献します。
電動キックボードのタイヤの交換は自転車みたいに簡単ではありません。基本的にメーカー及び販売店対応です。
ちなみにタイヤはチューブド、チューブレス、ノーパンク系に分かれますが、最後のやつは自転車界では地雷です。
「パンクはしません」→(劣化はしますが)
「丈夫ですよ」→(硬くて重いですよ)
さらば、肩凝りと尻痛
自転車乗り、オートバイ乗りの永遠の宿命が尻のトラブルです。100km以上のサイクリングではケツの表皮は重圧と摩擦でリアルに削れます。
その結果、自転車乗りはロングライドやツーリングの際に意味不明な奇行に走ります。
ロードバイクやピストバイクなどのドロップハンドル型の自転車は乗り手に前傾姿勢を強制します。これが人体には非常に不自然です。
「ロードバイクの肩や首の負担はデスクワークやパソコン作業の数倍である」という説は自転車乗りには不都合な真実です。「速くなっても楽にならない」は永遠の名言です。
「サドル硬い、ケツ痛い」は一般人がスポーツバイクを拒否する理由の上位です。ぼくの周りでは数名の知人がこれで脱落しました。
ぼくはぼくで左肩に爆弾を抱えます。長時間のライドor前傾姿勢で左肩甲骨の裏側に鈍痛を覚えます。おかげでアップライトなハンドルしか使えません。
このような痛みやストレスが発生すると、サイクリングの楽しさや満足感が薄れて、自転車が拷問器具になってしまいます。バス、タクシーと同じじゃないか!
他方、電動キックボードの乗車姿勢は自転車のそれより自然体です。
両膝と手首は相応に疲れますが、腰、尻、首、肩はナチュラルでストレスフリーです。先述のように不自然に疲れるのは右手の親指だけです。
むしろ、体幹を使ってバランスを取らないと低速でふらついてこけますから、自然と良い姿勢になります。猫背は治る。
このことから腰を曲げる、尻を置く、座るという行為の有害さが分かります。実際、会陰部の血行不良は慢性前立腺炎や慢性骨盤痛症候群の一因です。
最近ではもっと直接的に「座り過ぎると病気になる」とも言われますし。
実用と遊びを兼ねる
ノーマルなキックボードは日本の法律ではスケボーやローラースケートと同じく『遊具』に分類されます。
規定ではキックボードの人力駆動=けんけん乗りは『軽車両の移動手段』でなく、『ただの遊び』です。
で、日本の道路交通法は公道での遊びを禁じます。幹線道路の車道や歩道でスケボーやキックボードに乗ると、見回りのパトカーに「降りてくださーい(公道で遊ぶな)」と注意されます。
特定小型原付キックボードにはこの楽しい遊びの感覚が残ります。むしろ、けんけんの部分は全く面白くありません。
ぼくが思うキックボードの楽しさの部分は以下の通りです。
- 平地をすいすい走るとき
- 下りでぐんぐん加速するとき
- 低速でバランスを取るとき
カーブを極めるとかトリックをするという要素はキックボードの操作にはほぼありません。
この楽しさを味わいながら、けんけんのしんどさを省いて、さらに自転車並みの実用的移動力を発揮できるのが電動キックボードです
つまり、らくちんでおもろいガジェットです。
おしゃれでイマドキ
現代型の電動スマートモビリティの先駆けはセグウェイです。この先駆者は2001年にデビューしました。
当初のセグウェイの価格は60万です。この貴族価格と道路交通法が足かせになって、国内の普及率は壊滅的でした。街中ではついぞ見かけない。
それから時は流れて、世は令和です。はて、いつの間にか都会ではおしゃれな電動モビリティが右へ左へすいすい行き交います。
奥のLUUPの緑の車体とレンタルポートはもうおなじみです。若者、カップル、観光客が積極的に利用します。手前のシェアサイクルの時代はしれっと終了しました。
時代の空気感、トレンドは明らかにフル電動モビリティです。実際、ぼくもライド中に「電動キックボードや!」と出合い頭の小学生に言われました。
で、おそらく2025年の大阪万博までこのトレンドは続きます。まさに今、この日、この時代を駆ける象徴的な乗り物を挙げよと言われれば、世間は電動キックボードとのたまいましょう。
みなさんは何かほかの良い候補を挙げられますか? え、空飛ぶバイク? 盛大にこけましたよ? リニアモーターカー? 静岡から延伸しませんが?
ヘルメットが任意
電動モビリティの始祖は海底二万里のノーチラス号です。あの潜水艦の動力は電池です。ヒートコイルで海水を一瞬で沸騰させて氷の檻を脱出するシーンは非常に斬新で印象的です。
このSF小説の発表は1870年です。ジュール・ヴェルヌの圧倒的な先見性は脅威です。
セグウェイのようなスマートモビリティも20年前からありますが、日本の法律ではフル電動自転車や電動キックボードは軽車両と認められません。
モペット、電動キックボードは日本では『原動機付自転車』です。免許とヘルメットは義務です。
他方、2023年7月1日に解禁された特定小型原付はヘルメットの着用と免許取得及び携行所持を免除されます。
ヘルメットの着用は自転車と同様に罰則なしの努力義務です。これは被り物アレルギーのぼくには非常にありがたい措置です。
ヘルメットの圧迫感はあれですが、顎ひもの締め付けが生理的に何かダメです。ぼくがオートバイに手を出さないもう一つの要因です。
要は頭のでかさと顔のでかさでしょうか。うーん、分からん。
YADEAの取り扱い説明書には『膝あて、肘あてを着用しましょう』の一文すらありますが、それはさすがに過保護でしょう。
防御力をパンパンに上げても、ケガするときには怪我しますし。
特定小型原付のデメリット
次は特定小型原付のデメリットです。
- 遅い
- 歩行者モードが死に設定
- でかおも
- ルールがあいまい
特定小型原付によるものと電動キックボードによるものが混在しますし、部分的に注意点と問題点の記事と被ります。→電動キックボードを買うときの注意点と問題点 性能より100倍大事な3つのこと
20kmでは自転車に勝てん
原チャリの制限速度は30kmですが、機械の性能はそれをはるかに越えます。そして、時速30kmをきちんと守る聖人は非常に奇特です。
特定小型原付の制限速度はさらに遅い20kmです。
はい、人力チャリのおじさんにギリ競り負けます。スロットルをMAXで引き絞っても、これ以上の速度を出せません。型番の”JP”の文字は嘘ではない。
反面、スタートダッシュからの加速はピカイチです。人力キック+500Wモーター+チューブレスの太い10インチタイヤで最初の10mがキレキレです。
で、数秒後に20kmに達すると、そこで頭打ちになり、人力自転車に詰められ、電動ママチャリに引き離されます。
結局、目的地への到着時間は自転車とイーブンです。足は疲れませんが、はやりのタイパは良くありません。→電動キックボードの走行距離チャレンジ
歩行者モードの実用度のなさ
特定小型原付の大きな特徴が歩道走行です。普通の原付は歩道や路側帯に乗り入れられませんが、特定小型原付は時速6kmの特例特定小型原付モードで乗り入れられます。
YADEAの書類を見ましょう。
20kmの車道モードと6kmの歩行モードを切り替えられる機構を備えることが特定小型原付の条件です。
仮に6kmモードを搭載しない最大時速20kmの電動キックボードは『やたら遅い原付一種』となります。免許取ってメット被らにゃならんのにチャリより速く走れません。
で、この時速6kmの歩行者モードですが、ご想像の通りにめちゃめちゃ低速です。
速度は歩きと同じです。人力けんけん乗りに余裕で劣ります。で、しっかり電池を消耗します。コスパもタイパも最悪です。
二輪はある程度の速度に達しないと、安定感を欠きます。この6kmモードはいわゆる『逆に危ないレベル』です。
しかし、この6kmモードを搭載しないと、特定原付の照合を取得できません。現時点ではこのモードは区分のためだけのおまけです。
電動アシストのアシスト比率も過去に何度か緩和されました。特定小型原付の速度の上限も後日に見直されましょう、きっと。
あと、この新顔にお株を奪われた原付一種の法定速度が緩和されるいう風の噂もちらほら聞こえます。ようやく法律が現実に追いつくか?!
なんかでかくておもいやつ
特定小型原付の重さは性能に直結します。何故なら車体のガワや保安部品の差はそう大きくないから。
性能と形状の規定です。
車体の大きさは、長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること
原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと
走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること
最高速度表示灯が備えられていること
警視庁 特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)に関する交通ルール等についてより引用
うちのYADEAのキックボードは1mちょいで22kgです。他社の軽量モデルは1mちょいで13.8kgです。電動キックボード型のサイズ感はこの辺に落ち着きます。
あと、特定小型はあくまで原付ですから、二人乗りはNGです。ボード部分を広く長くしても、車輪を三つや四つにしても、彼女や子供を乗せられません。
スズキの四輪型のスズカーゴは車幅を制限まで使って、アウトドアの大容量荷物運びみたいなコンセプトで設計されます。キャンプ場のレンタルが捗りそう。
電動キックボードの重さ=モーターとバッテリーの性能です。重い方がパワフルで長持ちです。
反面、上階への運び上げや室内の取り回しは大変です。開封動画の撮影のために3階まで一人で運んだ私を褒めてください。
購入者のレビューや紹介動画では「予想よりデカい」の声はありますが、「意外と小さい」の声は皆無です。
ほんとに走って怒られません?
特定小型原付は2023年7月に解禁されました。現時点では全ユーザーがにわかですし、現場のお巡りさんさえがあやふやです。
道路の現場はとくにカオスになりがちです。究極的には取り締まりの担当者や管理人の機嫌、現場の状況によります。
自転車の防犯登録と車体番号の確認を求められる人と求められない人の違いは何でしょう? ぼくは全く呼び止められませんが。
公園内、大きめのガレージ、河川公園などの公共的な部分の乗り入れや走行モードの可否は千差万別、時と場合によります。
「公園の広場や河川敷の遊歩道で歩行モードでちょろっと乗る」などは普通にあり得ますが、ピュアホワイトか否かは悩ましいところです。それは『原付の徐行』ではないか?
「電源ON、車道モード、スロットル未使用、けんけんで歩道を少し走る」とか「車止めなしの河川公園の自転車専用道路を走る」とかのビミョーなラインが絶妙にビミョーです。