自転車はアナログな乗り物です。
昨今、おにぎり、無線機、電動モーターなどなどのハイテク機器がつぎつぎ登場しますが、基本的には筒、輪、紐の集合体です。
この紐=ケーブル、ワイヤー類は地味な存在です。でも、これがないと、メカやブレーキがハリボテに堕落します。
紐なしで機能をフルに発揮できる自転車はノンブレーキのトラックバイク、バイクポロ、アコースティックみたいな固定ギアの特殊機体ばかりです。
日本の道路交通法では軽車両のブレーキは公道走行に必須です。ママチャリ、ロード、折り畳み、MTB、いずれがブレーキなしでは走れません。
以下では一般的なスポーツバイクのケーブルやワイヤーの種類や取り扱い方を特集します。
自転車のケーブル&ワイヤーの種類
さて、最初から一つの淡い疑問が生じます。ケーブルとワイヤーです。違いはなんでしょう?
wikipediaの説明です。
- ケーブル=ロープ、線、ワイヤー
- ワイヤー=ケーブル、線、ロープ
「『意味』の意味を調べなさい」級の不毛な内容です。
個人的な狭義の解釈です。
- ケーブル=保護膜付き
- ワイヤー=むき出し
実際問題、「USBケーブル」と言うけど、「USBワイヤー」とは言わないし。
しかし、自転車界の「ケーブル」と「ワイヤー」の使用率はほぼほぼイーブンです。アンケート結果もほぼ五分で割れます。
アウターとインナー
自転車のワイヤーorケーブルはさらに2系統に分かれます。アウターとインナーです。上記の分類法ではアウターがケーブル、インナーがワイヤーになります。
アウターはゴム膜付きの紐です。
インナーはむき出しの紐です。
アウターとインナーはニコイチです。片方では機能しません。
それぞれの役目
インナーの単体は細い金属線の束です。ふにゃふにゃです。自分の重みに耐えられない。これのみでメカやブレーキを引くのは無理です。
他方のアウターは一定の形状と強度を保ちます。折り曲がっても、直線を保とうとします。反りと張りがある。
つまり、アウターはインナーの変形防止とガイド役で、インナーは純粋な伝導媒体です。これは水道と水の関係に相当します。
油圧や水圧のシステムも基本的にはおなじ理屈です。液体で圧して動作させるか、金属線で引いて動作させるか、その差です。
アウターの曲げすぎは禁物
機械式のアウターとインナーは油圧システムみたいに完全な密閉ではありません。アウターの中心部の樹脂のライナーには少々のアソビがあります。
また、インナーの表面はライナーの内側と摩擦します。で、アウターの取り回しが極端にぐにゃると、インナーとライナーの抵触があちこちで起こって、動きがしぶくなります。
このためにレバー側、メカ側、ブレーキ側の入りのところのアウターの取り回しには余裕が必要です。
油圧はこの限りでありません。実際に上の左の黒いケーブルは油圧ディスクブレーキのアウターです。右の白いのはシフターのアウターです。
ブレーキ用とシフト用
問題です。ブレーキ用とシフト用、どっちがどっちでしょうか?
左がシフターアウター、右がブレーキアウターです。4mmと5mmです。ブレーキ用のがすこし太くなります。
と、ぱっと見では違いが分かりませんが、両者は完全な別物です。
直線=シフト 螺旋=ブレーキ
表のゴムの皮をむきむきすると、歴然の差を目の当たりにできます。
左がシフターです。たくさんの細い直線のワイヤーが中空の樹脂のライナーを囲みます。
右がブレーキです。一本の太いワイヤーが螺旋状にライナーを囲みます。
ちなみにこんなふうにゴムを剥かなくても、ケーブルの切り口から判断できます。シフターアウターの断面は巻きずしみたいになります。
例外はニッセンケーブルなどです。日泉の一部のシフト用アウターの鋼線はブレーキとおなじぐるぐる巻きです。
インナーの違い
インナーはアウターより複雑です。車種やレバーで対応品が変わります。
ブレーキインナーとシフターインナーの差はアウターより明白です。ブレーキ用のがあきらかにぶっとくなります。
シフター用の太さが1.2mm、ブレーキ用が1.6mmです。いずれのワイヤーが複数の細い鉄線の撚り糸です。
インナーはさらに細分化します。ブレーキ用はロードとそれ以外の自転車に分かれます。仕様はブレーキレバーに準じます。
特殊なカンパニョーロ用
シフターインナーには仲間外れがいます。イタリアの総合自転車パーツブランドのカンパニョーロの製品です。
シマノ/スラム系のシフターインナーのタイコの大きさは4.4mmです。これが業界標準です。車種別の差はありません。
カンパはこれに反して、独自の3.9mmを採用します。ギャップは0.5mmです。レバーの樹脂のソケットにはシマノスラムのシフターインナーのタイコがすっぽり収まります。
ただし、アソビがまったくありません。入れるのは簡単ですが、外すのは難儀です。
ぼくは台座に切れ目を入れて、むりやり取り出しました。
自転車ケーブルのおさらい
自転車のケーブル・ワイヤーは2系統です。
- ブレーキ用
- シフト用
で、それぞれに
- アウター用
- インナー用
があります。さらにインナーは
- ノーマル
- ロード用
に分かれます。カンパのレバー用のシフトインナーのタイコは他より小さめです。あと、内装とかに使う平べったいのもあります。
うっかりミスのベスト1はシフター用とブレーキ用の発注ミスです。次点がロード用ブレーキインナーとノーマル用ブレーキインナーの取り違えですか。
とりあえず、タイコの形と線の太さに注意してください。