自転車のスプロケ=スプロケットは複数のギザギザのかたまりです。
単数のギザギザは『ギア』とか『コグ』です。ノースプロケ。
前輪のギアも『スプロケ』とは呼ばれません。こちらは『フロントリング』とか『チェーンリング』です。ノースプロケ。
自転車界では後輪の複数のギアの集合体のみが『スプロケット』です。ザ・スプロケ。古参の業界人はまれに『スポロケット』とも書きます、三ヶ島の『ペタル』とかと同じく。
原則分解禁止なスプロケ
スプロケの正式名称は『スプロケットカセット』です。で、『カセット』の原義は『小さなケース』です。つまり、このギザギザの集合体が最小ロットの1部位です。
このMTB用の12速スプロケはこの状態からバラけません。ギアからロックリングまで小さなケースに収められた単品です。
とにかくギアの段数=パーツ数ではありません。現行のスプロケはより統合的な『カセット』です。これは変速の多段化とギアの歯数の大型化に起因します。
例えば、上のような50Tの大きなコグを12速のインデックスの厚さで作ると、歯が非常に薄くなります。
20T以下の小さいコグは強度を保てますが、30T以上の大きいコグはペラペラになります。
比較的に厚い8速カセットの28T、32T、36Tさえが指で簡単にたわみます。
8速がこうですから、12速はなおさらです。
結果、最近のスプロケのローギア側はほとんどユニット化します。バラけない。
ユーザーの介入を快く思わないシマノなどは「スプロケ分解すんな」という一文をちゃんとマニュアルに記載します。
ということで、スプロケの分解はゲームボーイのカセット分解と同じ禁忌の行為です。
以上を踏まえて、このさきに進みましょう。
MTBに大きいギアを投入
これはぼくのメインバイクの後輪です。
スプロケはSUNRACEの8速用×5枚、ディレイラーはシマノクラリス、ハブはシングル用OLD135mmの10mmボルト止めです。コンポのちゃんぽんや~。
スプロケはもともとロード用のもので、最大ギアが28Tしかありません。これで山中のでこぼこ道の上りはハードです。
この変則的5段変速のローに36T、トップに13Tを入れて、ワイドレシオ化するのが今回の目的です。
それから、手持ちの2つの12速カセットは上述のバラけないやつとMSタイプでこのハブには入りません。そもそも12速シフターとディレイラーは数か月前にぶっ壊れました。
いけにえはなぞの8速スプロケ
シマノやSRAMは大手メーカーです。ユーザーのイレギュラーなDIYを好みませんし、この傾向をさらに強くします。
- チェーンの圧入ピン→クイックリンク
- カップアンドコーン→シールドベアリング
アンプルピンの圧入も玉当たりの調整も作業者の技量や気分でピンキリになってしまいます。大手メーカーにはこのような仕上がりのムラは不都合なことです。
とくに細い12速チェーンのピンの圧入にはカッターの一回しが命取りになりかねません。ミッシングリンクやクイックリンクの方が均一に仕上がります。
で、MTBの11速や12速はSRAMの天下ですが、ロードコンポや実用系、レトロ系の6~10速はやっぱシマノです。というか、昔のXTRやSAINTの方がベテランや業界人には好評です。
そのシマノのアセラの8速11-40Tカセットが約3700円です。このレシオはかなり魅力的ですが、40Tギアはロード用のクラリス(推奨32Tまで)にはちとハードです。
あと、この数年の異常な高騰でシマノ製品が庶民的でなくなりました。もはや入門用の10万チャリにシマノ製品はほぼ付きません。サンレースやマイクロシフトが庶民の味方です。
そんな訳でぼくは貴族用のシマノアセラを諦め、1500円の安いスプロケを大陸より取り寄せ、差額で8Sチェーンを買いました。
ごりごりの中華字体のせいで後ろの”CHAIN”が”CHINA”に見えるのはご愛敬です。
これは”SUNSHINE”の8速11~36Tです。同じ綴りで『サンシン』はヴィンテージハブの定番ですが、このSUNSHINEはそうでない? SUNRACEの関連会社?
棒を抜く
では、このカセットをバラしましょう。おあつらえ向きに棒のヘッドは星型ソケットで、チャリ用携帯工具で外れます。
シマノのスプロケの補強棒のヘッドはリベット止めです。そのせいで分解にドリルとかリューターが必要です。下手なDIYは大手企業にはメーワクなようです。
なぞメーカーのSUNSHINEにはシマノやSRAMが過去に置き忘れたおおらかさがあります。カセットが3分でばらばらになりました。
棒はチープですが、歯はふつうです。これが海外送料込み1500円です。原価が気になります。
リアホイールにセットする
ギア比と歯数のギャップを考えながら、コグをホイールに装着します。ロー側の36T、32Tは確定です。
3枚目が問題です。トレイルの上りにはほぼ大ギアしか使いません。でっかいことはいいことだ。
さいわいホイールが26インチですから、ペダリングは29インチより軽くなります。ぼくの体感で26インチの36T=29インチの42Tくらいです。
20T台の出番はオンロードでの登りくらいですが、MTBでアスファルトをえっちらおっちら上るのはおもしろいものではない。山道を押し歩きでさくっと突っ切る方がましです。
結局、28Tを追加して、つぎに20Tを入れました。うーん、8Tギャップの見た目が何か不安です。
一応の答えが36-32-28-20-16-13の6速です。もとの8速からトップ11Tと中段20Tが抜けた格好です。これで1速用の特殊フリーボディがパンパンになりました。
8速で6枚ですから、12速で9枚です。これまたなぞの中華13速カセットは10枚でした。まあ、11速とか12速チェーンが高すぎて、使うのがあほみたいですけど。
全体の流れ的には13Tを抜いて、24Tを入れる方がスムーズでしょう。でも、ゆるい舗装路の下りや追い風の平地では13Tがちょうど快適なんですよねー。
ちなみにディレイラーがクラリスですから、スペーサーはSUNRACEのロード用8速のお下がりです。あと、変速調整でロー側をオミットして、ハブ内側へのチェーン落ちを防ぎます。
安スプロケの実走テスト
正味、気掛かりは変速性能とかギア比の繋がりの自然さとかよりコグの強度です。補強の棒なしの36Tや32Tの歯がオフロードの上りの全体重乗っけ漕ぎで変形しないか?
おなじみの箕面の山中でがしがし漕ぎます。
ギア比や変速性能はだいたい予想通りです。28Tと20Tのギャップはぎくしゃくしますが、タフな場面でこのギアチェンジの出番はありません。
この後、わりとヘビロテでトレイルに行きましたが、補強の棒なしの36Tと32Tもとくに異常なしでした。
ギア6枚が304gです。超単純計算で51g/1枚です。
11速や12速の歯は同じインデックス幅でさらに薄く軽くなります。超単純計算で35g/1枚ですか。
実際、市販の大型コグの変形の事例はけっこうあります。FOURIERSの10速用のジャイアントコグだったかな?
ぼくも40T以上の大ギアを一枚で使おうとは思いません。直感的にこの36Tくらいが限度でしょう。
あ、クラリスはぜんぜん余裕です。海外の動画で40Tの8速カセットを回すのすらありますし。SGSゲージか?
シマノアセラスプロケの11-40Tの8速-トップ2枚も行けそう。でも、3700円もするぞー、うおー。