ロングライドの装備や準備 紀伊半島一周サイクリングから必要なものを考察する

「良い自転車を買ったし、少し遠出しよう」

ここではそんなサイクリング、自転車の初心者のために長距離移動、ロングライドのコツなどを詳しく解説します。

ロングライドとは?(目安は100km)

120km、150km、200km? 自転車のロングライドの定義は様々ですが、キリの良さと一般的な体力・計画の立てやすさから100kmが一つの基準です。

2022年8月羅臼にて
2022年8月羅臼にて

もっとも、英米では100kmはマイル換算で中途半端な数値になりますが。とはいえ、100マイル=160.934kmはけっこうハードです。

100km程度のロングライドには特別な技術や異常な体力は不要です。ママチャリから電動アシスト、クロスバイク、ロードバイク、ミニベロ、マウンテンバイク(MTB)で完走できます。

ここでは、紀伊半島一周や北海道一周などを走破したぼくの実体験をもとに、長距離・長時間の自転車ロングライド、長距離ツーリングを快適に楽しむための独自の要点をご紹介します。

ロードバイクは正解ではない

「長距離サイクリング=ロードバイク」という構図が一般的ですが、これは不正解です。

日帰りの快速サイクリングにはロードバイクは強力ですが、この軽量高速スポーツ自転車は長時間のツーリングには完全にはマッチしません。

ロードバイクの構造は深い前傾姿勢を維持して速く走るためのものです。足・腰・首への負担が伴います。極論、ロードはだらだらと景色を楽しみながらゆったり走る車種ではない。

KONA HONZOなど軽量なハードテイルMTBはツーリングに最適
アップライトな乗車姿勢がとれるMTBのツーリングカスタム

これまでの経験から導き出した一つの答えは「軽量ホイールを履いたハードテイルMTB(またはクロスバイク)」という選択です。

乗り心地が快適で、直進安定性が優秀、視野の確保が容易です。

マルチポジションが生む疲労軽減

長距離ツーリングの最強の装備、それは「ドロッパーシートポスト」です。手元のレバーで事務椅子のようにサドル高が無段階で可変します。

可変式のドロッパーシートポストの活用
乗車姿勢を自在に変えられるドロッパーシートポストの使用例

元々はMTBの標準装備として普及しました。

ドロップハンドルが握る場所を変えて手の疲れを分散させます(マルチグリップ)が、ドロッパーシートポストは座り方を変えて腰や尻のストレスを分散させます。(マルチポジション)

ツーリング中の疲労軽減にはこの可変機構が絶大な威力を発揮します。ロードバイクへの導入も一つの選択肢になり得ます。

実際、グラベルバイク、アドベンチャーバイクにはこのドロッパーシートポストが波及します。

最大の敵、サドル痛(お尻の痛み)との戦い

ロングライド=長時間のサドル騎乗です。臀部への圧迫や摩擦のストレスは尋常ではありません。スポーツバイクのサドルはタイトにです。

応急処置へのアイデア
過去の過酷なツーリングでは、サドル痛に耐えかねて「ニット帽+ダウンベストのフード」をサドルに巻き付けて即席カバーにするという荒業に出ました。

見た目は最悪最低ですが、ダウン素材のクッション性がお尻へのストレスを確実に緩和します。

安価なジェル入りサドルカバーは破れてジェルが漏れるリスクがあるため、予備の布やクッションを用いた自作・工夫は立派なサバイバル術です。

即席で自作したサドルカバー
背に腹は代えられない、衣類を利用した即席サドルカバー

過小評価されがちな「視野の確保」

ツーリングでは速さやタイムは二の次です。サイクリングはスポーツやレースではない。アウトドア、アクティビティです。

快適さ・ストレスの無さ・不安の排除が最も重要です。

ロードバイクのような深い前傾姿勢では2日目、3日目が危険です。特に夜間やトンネル内の薄闇の中では狭い視野が大きなリスクを生みます。

穴、段差、車止め、チェーンなどは落車・パンクの原因になります。このような安全確保の面からアップライトで広い視野を保てる車種やポジション調整能力が求められます。

薄暮時の暗い道や車止めなどの障害物の危険性
疲労と薄暗さが重なると、車止めや段差を見落としやすくなる

計画づくりと優先順位ルール

自転車ツーリングの本質はアウトドア(自己完結)です。「自分でどうにか帰れること」が最も肝心です。以下の表に、最優先すべきルールをまとめました。

順位 要素 解説
最優先 (1位) 自力での無事帰還 トラブルに備え、必ず輪行袋を持参し、エスケープ(離脱)の手段を確保しておくこと。
2位 余裕のある日程 持てる体力の8割で進めるスケジュールが正解。カツカツの予定は1つのトラブルで破綻します。
3位 サドル(尻)の保護 痛みに耐えられなくなると走る気力が直接失われます。快適なサドル・ポジション選びを。
4位 広い視野の確保 疲労時や薄暮時の事故を防ぐため、高い視線を維持できる姿勢を意識すること。
5位 車種・機材 自転車の速さや軽さは、安全と快適さが担保された上で最後に生きてくるものです。

一回のツーリングで限界まで体力を使い切ってしまうと、その後の継続意欲が削がれてしまいます。

「少し物足りない」と感じる程度の余力を残して帰ってくることが長く自転車旅行を楽しむための一番のコツです。

Q&A: ロングライドのよくある質問

Q: ロングライドの目安となる距離はどのくらいですか?
A: 切りの良さと計画の立てやすさから、片道や1日の走行距離「100km」をひとつの基準とするのがおすすめです。安全なペース配分で完走可能です。
Q: 長距離ツーリングにはロードバイクが必須ですか?
A: 必須ではありません。長時間を快適に走るツーリングではアップライトな姿勢で視野を広く取れるマウンテンバイク(ハードテイル)やクロスバイク、かご付きのシティサイクルの方が有利です。
Q: ツーリング計画で最も優先すべきことは何ですか?
A: 「自力で無事に帰還すること」が最優先です。体力的にカツカツのスケジュールを組むのではなく、8割程度の力で走り切れる余裕のある日程を組むことが長続きの秘訣です。輪行袋などのバックアップ装備も必ず持参しましょう。