チャンネル登録者1000人、総再生時間4000時間、この二つの高いハードルを越えて、YouTubeの収益化の審査に通ると、動画に広告を付けられます。YouTuberの始めの第一歩です。
しかしながら、YouTubeは水物です。刻々と姿形を変えます。規定もレイアウトも無慈悲に変貌します。 数か月前のノウハウがもう通じず、白が黒になる。
ことさらの恐怖は収益化のはく奪、広告停止、アカウントBANです。GoogleのBANは現代の破門のようなものです。
今回、この恐怖の一端がうちのチャンネルに現れました。一本の動画の収益の無効化です。原因は新型コロナウィルスですね。
この機会に動画の収益化のはく奪と最終効果の申請の手順を記録します。
YouTubeの動画の広告停止
まずはYouTubeの収益化の条件です。2018年以降の大幅アップデート後のものです。
- チャンネル登録者1000人
- 再生時間4000時間
- 18歳以上
- ポリシーに違反しない
登録者、再生時間、年齢制限は単純な閾値です。あいまいなものではありません。問題は『ポリシーに違反しない』です。これは拡大解釈や過小表現を多分に含みます。
YouTubeの典型的なポリシー違反
ポリシー違反はグラデーションです。明確な閾値はありません。境界線がぼやけます。
YouTube的にご法度のものは以下の通りです。
- アダルト表現、きつい下ネタ
- 暴力表現
- 差別
- ヘイトスピーチ
- 著作権違反
これらは特濃のグレーゾーンです。一発BANはありえます。
これよりソフトなグレーのポリシー違反がこちらです。
- テキスト動画
- ゆっくり実況
- フェイクニュース
- 子ども向け動画
2019年後半から子ども向け動画の規制が一気に厳しくなりました。現在の規定では子ども向け動画には広告は付きません。
テキスト動画、ゆっくり動画は2019年前半から徐々に淘汰されます。このあおりで一部のVtuberも収益化をはく奪されましたね。
さて、うちのチャンネルは顔出し、実写、趣味系です。このジャンルはポリシー違反にはそうそう引っ掛かりません。
うちの広告停止の実例は『ロケの店内の洋楽のBGMがCONTENT IDに引っ掛かった』くらいです。3フレーズくらいがバックグラウンドに入り込んだら、警告アラートがYouTubeから来ました。
ぼくの感覚ではCONTENT IDのきつさは洋楽 > 邦楽です。で、この制限にはYouTube Studioのエディタ機能からで問題のシーンをカットして対処しました。
新型コロナウィルスのような特例措置
さて、今回の広告の制限の原因はこのような典型的なものではありません。
2019年の暮れに端を発し、数か月のうちに全世界を恐怖のどん底に叩き落としたCOVID-19、新型コロナウィルスです。
このコロナウィルスの情報は絶大な特需です。実際にTVとネットのニュースの7割がコロナ関連の話題です。恐怖に怯える人々は貪るように情報を集めます。
この結果、タイトルとキャッチコピーに『コロナ』という文字が入れば、その内容や信憑性がどうであれ、露出が増え、トラフィックが増え、再生数が増えます。
そのようなコンテンツに集まる視聴者の多くは不安や恐怖に支配されて、心の余裕を失い、広告やプロモーションには目を向けません。
コロナ動画に旅行のCMが出ても、だれがクリックしますか? マッチするのは医療系の商品くらいですし。
そんなところに広告を流すのは宣伝費用をドブに捨てるようなものです。YouTubeが直接的に損しなくても、広告主が損します。
広告の無駄打ちとコンバージョンの低下を防ぐためにYouTubeはコロナウィルス動画の収益化を制限しました。
3月11日は何かと鬼門だ・・・このアップデートにうちの一本の動画が引っ掛かりました。下の画はそのときのキャプチャです。
リストの上段がその動画です。収益化の欄に黄色い$マークと制限…の文字が見えます。AIかアルゴリズムの仕業のようです。
この動画の内容はプレゼント企画です。プレゼント企画はYouTubeの規約的には完全ホワイトではありませんが、今回の容疑者はそちらではありません。
この動画のタイトルがポイントです。最初のテキストは『打倒コロナウィルス祈願! すてきなオブジェをプレゼント!』でした。
ついでに『ウィルスバスター2020』という装飾をサムネイルに付けました。
結果、どっちかがAIのフィルタに掛かったか、アルゴリズムの癪に障ったか、広告がアップ直後に制限されました。十中八九、タイトルでしょう。
タイトルを変更して、審査請求を出す
ポリシー違反の原因を突き止めるのは簡単ではありません。YouTubeのAIは神か鬼のように気まぐれですし、Googleは根幹システムはブラックボックスです。
ゆえに今回のような広告停止の理由がはっきり限定されるのはマイナーケースです。タイトルのコロナがタブーだ。
上図の文章は再アップデート後のものです。2020年3月11日からコロナ関連動画の広告条件はゆるくなりました。今回の私の広告停止のレポートはその直前のものです。
この禁句をより抽象的なテキストに書き換え、サムネイルから『ウィルス』の文字装飾を消しました。
それから、個別動画の収益化の制限メニューから再審査の申し込みをします。
数時間で収益マークが黄色から緑色になりました。
このコロナ関連の広告制限、審査、有効化の流れは非常にシンプルな流れでした。テキスト動画、ゆっくり実況、子ども向けコンテンツなどの制限はより複雑で面倒なものになります。
コンテンツIDによる広告制限
ついでにもう一つの広告制限事案を紹介します。著作権侵害、コンテンツIDの広告制限です。私はこの一年で二度の警告を受けました。
理由は上述のようにロケ中の店内BGMの入り込みです。ちなみに曲目は歌詞付きの洋楽のヒットソングです。
著作権フリー以外の音楽には所有者や権利者がいます。JASRACみたいな統括団体もある。一般人が無償で自由に使える音源は限定的です。
動画の一部がコンテンツIDに引っ掛かると、その旨の警告がメールで来ます。
Google翻訳の概要は以下のようなものです。
- 著作権侵害には当たりません
- YouTubeのアカウントは安全です
- 広告は所有者に行きます
- 所有者は統計データを受け取ります
- 曲名はCris BrownのNo Guidanceです
赤字のように広告費はぼくの懐に入らず、コンテンツIDの所有者に渡ります。これがYouTubeのうまいところです。
コンテンツIDをカットする
今回のBGMの入り込みは完全にイレギュラーなものです。引用でも盗用でも巧妙なステルスマーケティングでもありません。Chris Brownがそもそも分からない。
ところで、最近のYouTube StudioのアップデートでコンテンツIDの修正が簡単になりました。この機会に管理画面のエディタのカットの手順を実践しましょう。
そのChris Brownの店内BGMのシーンを部分的に切り出して、YouTubeに再アップロードしました。
公開及び公開予約をすると、収益化をはく奪されます。おや、今回は赤マークですね。黄色よりきつい警告でしょうか?
YouTubeの動画の管理画面の『著作権の概要とステータス』から該当のセグメントをカットできます。
再生バーの赤い部分がセーフの部分、白枠がアウトの部分です。御覧のようにセグメントの抽出が全自動になりました。カット、差し替え、ミュート、異議申し立てが可能です。こういうアップデートは大歓迎ですね。
ここではカットを選択して、決定ボタンを押します。すると、動画エディタで処理が始まります。
この時点でブラウザの操作は完了しています。タブを閉じても、ネットを切っても構いません。あとはYouTubeのサーバーの仕事です。
そして、この動画エディタの処理は非常にゆったりペースです。私の経験では最短10分、最長三日!ですね。非公開にして、処理を待ちましょう。
一夜が明けて、処理が終わりました。
コンテンツIDのセグメントが消えて、動画が26秒まで縮まりました。
YouTubeのサーバーの処理の遅さは相変わらずですが、手続きは劇的に容易です。アップデート前のセグメントの抽出は手動でしたからね。
YouTubeの広告停止からの復活の方法まとめ
新型コロナ絡みのポリシーは右往左往しましたが、結果的に収益化は有効になりました。
しかし、世界的な危機や衝撃的な出来事、人の不幸に便乗するような集客方法は道理的に芳しいものではありません。
今回のように規制ワードをタイトルに入力するのはAIの格好の標的です。ある意味、今回の規約違反は容易なものです。理由が明確ですから。
動画内の不用意なコンテンツID、著作権侵害部分の抽出と修正はアップデートに簡単になりました。YouTube Studioの動画エディタの処理の遅さは相変わらずですが。