先日、輪行用の折り畳み自転車が組み上がりました。 詳細はぼくのYouTubeのチャンネルにあります。
カーボンフレーム Java BIke Neo + 中華カーボンホイールのフルカーボン折り畳みミニベロです。ペダル込み重量がほぼ9kgです。
折り畳みカムバック!
小径車を所持するのはじつに数年ぶりです。先代のミニベロはルイガノ・ジェダイ改でした。B4Cの初代の愛機です。
ディスクブレーキとシルバーマットの車体がクールですね。月日の流れは早いものです。今やルイガノブランドさえがなくなってしまいました。
この初代には相当なカスタマイズを施しましたが、一つだけ成功しませんでした。タイヤのチューブレス化です。厳密にはDT SWISSのチューブレスキットを試してみたけど、減圧を解決できなかった。
このときから三年が経ち、ぼくの経験値は上がりました。ロードチューブレス化、MTBチューブレス化はお手の物です。
MTBやグラベルではチューブレス(レディ)システムはすでに標準ですが、ミニベロや折り畳み、小径車のタイヤのチューブレスは超レアケースです。ミニベロパーツのアップデートは微温的ですから。
が、小径向けのチューブレス用品はゼロではありません。名実共に20インチ最速のタイヤがついにアップデートされました。
20インチ用シュワルベプロワン新生
はい、シュワルベワンです。ただのワンではありません。”PRO”がタイトルに入ります。そして、タイヤサイドのグラフィックが旧モデルと違います。
これがロードバイクタイヤの700C用と時を同じくして進化した”Schwalbe Pro One Evolution”です。タイヤのコンパウンドがMTBと同じADDIXになりました。
ちなみにハンドメイドチューブラーのワン、グラベルのG-oneはお気に入りのタイヤです。おまけについこの前、メインMTBのタイヤをMAGIC MARRYに入れ替えました。
シュワルベの多ジャンル展開には感心します。この20インチ用のプロワンでハイエンド系はコンプですね。あ、ジェダイの初期タイヤもシュワルベマラソンでした。もうシュワルベマイスターですよ。
ミニベロ用チューブレスリム入手への道
で、ぼくがジェダイの騎士だったころには20インチ用のシュワルベワンはクリンチャーモデルばかりでした。そこから数年でチューブレスのPRO ONEが20インチの世界に波及します。乗り手の進化より技術の進歩の方が明らかに上ですね。
ただし、20インチのチューブレス用のリムの市販がほぼ壊滅的です。メーカー物は台湾製のマニアックなものしかありません。ならば、頼みは中華サイトです。
とあるセラーでこいつが見つかりました。ETRTO 406のカーボンリムです。ディスクブレーキ用、ホール数、表面の化粧カーボンの仕上げはセミオーダーです。前後セットの価格は送料込み35000円でした。
リムの内側はチューブレス仕様です。平たい面とサイドのハンプが見えます。
そして、シールの表記には”406 30 30″とあります。ETRO 406、リム高30、リム幅30です。ロード的にはセミディープ、ベリーワイドですね。現にリム内径は24mmです。従来の基準では適応タイヤは35mm~からだ?!
で、恐らくこれはBMX用のカーボンリムです。というか、商品ページにその旨がありましたし。
リムの実測重量は340gです、カタログ値通り。
実際問題、これより軽量な20インチアルミリムはいろいろあります。AREX RIMとかKINLINのリムも300g台です。
しかし、従来の20インチリムは全体的に細身です。451サイズがとくに顕著で、内幅がC13やC15です。一昔前のロードバイクのようだ。
これでは乗り心地がえらいことになります。これはそのKINLINの軽量リムとPanaracer Minits Lite 23-451の往年の組み合わせです。
あと、リムサイドのブレーキフェイスの銀色が邪魔ですね。統一感が出ない。ぼくは油性マジックで塗りつぶしましたけど。
このリムの調達がコロナのせいで異常に遅れましたが、オーダーから約二ヶ月で手元に届きました。この配送がぼくの海外通販の最長の記録です。
シュワルベプロワン海外通販
今回の主役のシュワルベプロワンはシュワルベ社のおひざ元のドイツの自転車通販ストアBIke 24から届きました。こちらは3月中に10日ほどで来ました。このように2020年3月以降の国際配送は不安定です。
ドイツにはほかにコンチネンタルもあります。ドイツ系の最新タイヤは通販サイトのなかではBike24に真っ先に並びます。前にこのストアで買ったのはコンチのスピードキングCXだったかな。
で、このような経緯で20インチのチューブレスリムとタイヤが手元に揃いました。調達ルートは非常に限定的です。※Wiggleにも出始めました。
「クリンチャーでよくね?」
ぼくの中では小径のクリンチャーは完全に『なし』です。ミニベロロード、高速折り畳み系の足周りはとくにそうです。20インチの細身チューブがネックだ。パナレーサーのR’AIRもシュワルベのブチルも安定しません。
シュワルベマラソンやBMX系タイヤはこの限りではありません。30mm以下の小径タイヤはなかなか曲者です。
20インチのシュワルベプロワンのインプレ
この長い前置きを経て、改めて主役を紹介しましょう。こちらが今日のメインのシュワルベプロワンです。正式なモデル名は”Schwalbe Pro One Evolution TLEasy Addix Race Folding Tire 28-406″です。
上述のようにドイツの通販ショップのBIke24で買いました。同梱商品は同じくSchwalbeのMagic Maryです。
旧モデルのロゴは銀一色でしたが、今バージョンからオレンジの差し色が加わりました。ロード用の700CのPro Oneと同じグラフィックデザインです。
お値段は36ユーロですから、クレジット換算4500~5000円です。そう、ハイエンドの小径タイヤは安くありません。むしろMTBハイエンドのMAGIC MARYより割高でした。
これは2020年春の時点では最新ほやほやの新モデルです。Bike24以外のWiggleやCRCにはなかった。国内正規販売は今年の後半か来年でしょう。多分、Amazonの並行輸入物の方が先に来ます。
ミニベロ好きはおおむね新しもの好きで、変わり者で、マニアックですから、この新モデルのプロワンは垂涎の的でしょう。サイズが~28Cになったのも朗報です。
ビードが硬い?
旧モデルのプロワン、クリンチャーの無印シュワルベワンのレビューがちらほらあります。Amazonに恐ろしい文言が並びます。
「取り付けに一日、チューブレス化に三日」
「付けたら外せない」
「硬すぎ!」
ミニベロロード系タイヤの経験者はこれらのレビューにびくびくしましょう。小径タイヤのビードがとにかくタイトだ。噛み込みパンクの悪夢がよみがえる・・・
ぼくもこれを前世代のパナレーサーミニッツライトで経験しましたから、このシュワルベプロワンには入念な下ごしらえを施しました。
柔らかくな~れ~、柔らかくな~れ~、モエモエキュン!と呪文をかけます。実際にはこんなふうに吊して、重しをかけて、数日掛けてじんわりと伸ばし。
この重しでタイヤを延ばす方式には賛否が出ます。否定派は「タイヤがゆがむ!」と良くおっしゃいますね。肯定派は「嵌めるときにもっと力を掛けるやん」と言います。ぼくは後者です。
まあ、結果的にこの下ごしらえは不要でした。このプロワンの着脱は平常運転です。レビュワーが話を盛ったか、アップデートで嵌めやすさが上がったか。
ミニベロロードタイヤ重量
ぼくの今回のバラ完の主旨は軽量化ではありません。軽量化を追求するなら、折り畳みフレームを買わず、細身のミニベロタイプのカーボンフレームを買います。
が、足回りの重量はみなさんには気掛かりでしょう。406-28Cの実測はこうなりました。
195gです。BIke24の商品説明には205gの記述があります。当たりでしょうか? もう一本も200gアンダーでした。無論、25cはこれより軽量です。
チューブレス化でパナセット並みに軽量に
ミニベロタイヤの最軽量はパナレーサーのミニッツライトです。451 23Cのカタログ値が160gです。ただし、406モデルは32Cからです。これは市販の20インチ用のリム幅に準じます。451 < 406ですから。
406 32Cモデルのミニッツライトが170gです。これにパナレーサーの軽量チューブR’AIRを組み合わせるのがお手軽な20インチミニベロタイヤの最軽量セットです。通称パナパナセット。ぼくもやりました。
が、このR’AIRを含む軽量ミニベロチューブの品質が全般的に不安定です。これはうちの古い画像です。20インチの青文字の小さい記載がぎりぎり見えますから、ミニベロ用のR’AIRでしょう。
20インチ用のR’AIRの実測が60g前後です。つまり、170+60=230gがこのセットの総重量です。
で、シュワルベプロワンのチューブレス化重量はこれに匹敵します。実測値のカタログ越えが効を奏しました。
ちなみに現行の自転車タイヤのチューブレスはフルチューブレスでなく、ほぼチューブレスレディです。シュワルベのそれはTLEです。
無印のシュワルベワンにはこのTLEの表記がありません。チューブレス化がイージーではない。しかし、不可能でもない。リムとタイヤとテープとシーラントと創意工夫次第です。
プロワンチューブレス化の総重量はこうなります。
タイヤ190g+シーラント+30g+チューブレスバルブ10g=230g
重量が同じであれば、チューブレスモデルの性能はチューブドクリンチャーを完全に凌駕します。パナレーサーのタイヤは転がらないことが有志の手で科学的に証明されてしまいしたし。
個人的に不安定なミニベロ軽量チューブとおさらばできるのが最大のメリットです。おまけにR’AIRは値上げ値上げで非常な高級品になるし。
空気圧や重量制限
作業の前にもう少しプロワンを眺めましょう。トレッドのデザインです。
このサイドの溝のパターンは旧モデルを踏襲します。チューブラーのワンだけはこんなデザインじゃないけど。ちなみにシュワルベはチューブラーの製造を打ち切りました。
タイヤの適正空気圧はBIke24の商品ページの記載では4.5-6.0barですが、実物のタイヤサイドの空気圧の記載は6.0-8.0barです。
28Cのチューブレスのおいしいゾーンは5-6barですから、商品ページの数値がベターですね。限界は127psiです。カーボンリム側の空気圧限界もそのくらいです。
体重制限は70kgです。ぼくが服を着て、リュックを背負うと、すこしきびしくなります。いや、確実に重量をオーバーするぞ! ・・・多少のオーバーウェイトには目をつぶりましょう。チューブレスだし!
ミニベロタイヤの取り付けとビード上げ
さて、ここからが山場の作業編です。このミニベロロードタイヤを20インチの手組ホイールに取り付けます。
チューブレス小物は以下の通りです。
- テープ=3M仮固定テープ8898 24mm幅
- バルブ=Muc-Off 仏式チューブレスバルブ
3Mの仮固定テープは家電の梱包用の業務用品らしいです。が、市販品のレビューは自転車ホイールのチューブレス化のレポートばかりです。ぼくの検証では中華系の格安チューブレスリムテープの正体はこの3Mの仮固定テープです。500円くらいです。
他方、バルブはメーカー物の専用品です。自転車洗剤屋さんのマックオフのチューブレスバルブです。以前、ほかのものと一緒にMerlin Cyclesで買いました。1500円くらいです。
これでホイール側をしっかりセッティングして、いよいよシュワルベプロワンを嵌め込んでいきます。
ところで、ぼくはたいていのタイヤを手で嵌め込みます。コンチネンタルGP5000 TLの取り付けは1分で行けます。
その感じで素手でやってみます。
眉毛がえらい角度になって、頭がくらくらしました。小径タイヤは700cや29erのタイヤのように行きません。サイズのせいでビードがタイトです。
ひさびさにタイヤレバーという禁忌の道具を使いました。タイヤマイスターの恥ですな!
レバーを使ったら、2分でセットできました。拍子抜けです。旧モデルのミニッツライトはこんなもんじゃなかった。もしや、今回のモデルチェンジで整備性が上がったか?
後日、このカーボンリムの太さに起因する(テープの巻きすぎ?)不具合のためにタイヤを交換しましたが、普通にすぱっと外せました。心配して損した。
- ビード上げ→簡単
- 減圧→ほぼない
- 見た目→サイコー!
シュワルベプロワン試走
詳細は動画にありますが、リムとの愛称で意外な問題が出ます。チェックしてください。→自分でバラ完したカーボン折り畳み自転車の試走インプレ 乗り心地はミニベロロード? 軽量クロスバイク? 小型ママチャリ?
これを抜きにして、シュワルベプロワンのファーストインプレッションをまとめ風に書き出します。6.5barで大阪市内をゆるっと20kmくらい走りました。
乗り心地はコンフォートなロードです。空気ボリュームとマイルドな低圧のおかげで街乗りの段差はらくちんです。ただし、ぼくの好みよりややレーシーですね。まあ、ロードバイクのハイエンドタイヤの小径版ですから。
ミニベロ、折り畳み、小径車の特性でハンドリングは非常にクイックです。この後でタイヤがBMX用の20×1.75のチューブレスモデルに変わりますが、安定度が段違いです。
小径ホイール+細身の軽量タイヤのフロントの動作のクイックさは未経験者には少し不安でしょう。ぼくもひさびさに乗って、すこし戸惑いました。
あと、動画で「雨天でシュワルベワンは滑る」というコメントを貰いました。これは個人的に判別不能です。ぼくはそこまでスリックタイヤを乗り込みません。そもそも最後のワンがチューブラーのワンだからなあ。
今は亡きチューブラーのシュワルベワンです。パターンがクリンチャーやチューブレスと少し違う。
これは良いタイヤでしたが、ピストのスキッドのし過ぎでパーン!しました。
ミニベロ用のシュワルベプロワンの評価
最後にこのプロワンを評価しましょう。五段階評価です。
価格:3 海外価格
調達性:2
性能:5
軽さ:5 チューブレス
チューブレス化:5
着脱の整備性:3 ふつう
総合:4
価格と入手の難しさがあれですが、性能と軽さがそれを補います。タイヤの取り付けのしやすさは可もなく不可もなしです。amazonレビューはモリモリ尾ひれでしょうか。
最速406ミニベロを目指すなら、無印のワンかチューブレスのプロワンを使いましょう。パナレーサーのタイヤは軽量ですが、そんなに転がりません。
とりあえず、チューブレス非対応リムや小径タイヤのビード上げには苦戦しますから、チューブレス用のエアポンプやインフレーターを用意しましょう。シュワルベ純正品もあります。こっちの国内価格はタイヤほどファンタジックではありません。