シマノ社は定期的に自社の製品をアップデートします。そのスパンは4年です。2018年はマウンテンバイクの最高峰グレードXTRのターンでした。
このXTRはロードバイクパーツの最高グレードのDura Aceと同じく日本製です。ものは国内工場で作られます。それ以外はマレーシア製です。
XTRはどうなった?
ところで、去年の秋ごろにシマノ本社で火災がありまして、なんか製造ラインに問題があったか、XTRのデリバリーがめっちゃ遅れました。
さらに渾身の新型ハブ”Scylence”がなにやらの不具合でおくらいりになりました。ザ・黒歴史のようです。結局、初期ロット分は出たのか出なかったのか? 実質、リコール?
あと、XTRのハブが旧来のHGハブからHG+に変わりました。これがHG+です。
旧式のHGはおなじみのやつです。
スプロケットの台座のでこぼこの形も数もちがいます。HGとHG+に互換性はありません。
XTRはファンタジー
てことで、XTRを使おうとすると、コンポからホイールからの変更を余儀なくされます。SRAM XDドライバーのオプションは夢のまた夢だ。
2015年以降のMTBではこっちがスタンダードです。SRAMの12速のラインナップはハイエンドのXX1からNXまで揃います。ついでにもっと安いSX EAGLEも発表されました。
- 値段が高い
- 供給が遅い
- “Scylence”が黒歴史
この3つのCONSが重なって、新型XTRはかれいにスルーされました。毎度の不評を買うデザインは珍しく好評を博しましたのに!
エリートレーサーはとうにSRAM XX1 Eagleを使いましょう。XTRへの乗り換えはそんなに魅力的でない。
一般のシマノファンはXTRを使いません。12速時代以前の遺産を使えないから。てか、SRAMにHG互換のNX EAGLEがあるし。
いや、サードの12速カセットや12速ドライブさえがよりどりみどりです。1xが主体になって、フロントディレイラーの必要性が薄まりました。
で、フロントディレイラーの製造の手間を省けるために中小規模の自転車パーツ屋がちょこちょこ変速機市場に参入しはじめます。
- SUNRACE
- BOX
- S-RIDE
- LWTOO
などなど。うちにもSUNRACEの12速メカがあります、ママチャリ用に。おまけにX-shifterみたいな新機軸もありますし。
ここにMTB変速機の戦国時代が到来しました。バルブ時代にシマノが天下を取って以来の乱世です。
で、本命のスラムと勝負できる最有力対抗馬のXTRがそんなざまです。そもそもXTRは一般のユーザーには向きません。価格がファンタジーだ。
大方の本命はXTかSLXです。マレーシア製コンポはそんなに高くない。てか、日本製がむだに割高だ。
GX EAGLEやSLXを岩にぶつけて削っても、木にぶつけて曲げても、そんなに精神的なダメージを受けない。
XX1やXTRがこうなると、心がくだけます。ハイグレードのステータス、質感、自己満足は崖の前では無意味だ。
ロードコンポはそうそう削れませんが、MTBコンポはえんぴつなみにガリガリ削れます。ガリガリくん岩味。
XTとSLX同時発表!
最高峰グレードのアップデートの翌年はセカンドグレードの更新年です。シマノのMTBコンポの第二位はDeore XTです。
で、この新型が予想の通りに発表されました。
Shimano was the first manufacturer to offer a dedicated mountain bike groupset, with the famous DEORE XT launching in 1982. Now, in 2019, we’re proud to present the very latest in mountain bike drivetrain technology with our new DEORE XT and SLX >> https://t.co/mq1cdHzyLz pic.twitter.com/lwYyE3Bil8
— ShimanoMTB (@ShimanoMTB) May 30, 2019
動画です。
ポイントを列挙しましょう。
- XTRM9100を踏襲
- 12速
- ハブはScylence改め100 hub?
- フリーはHG+に
- 2ピストンと4ピストンあり
- 非中空12速チェーン
- 完組ホイール復活
- ※6月中旬から出荷開始(北米)
現時点で電動Di2の影は見当たりません。が、XTやSLXは電動スポーツMTB向けを兼ねます。シマノ的にはDi2 < 電動アシストユニットのSTEPSでしょう。
SLXも!
「シマノの法則が乱れる!」
XTRの供給遅延を反省したか、ちょっと巻き返さないとやばいと思ったか、サードグレードのSLXの新型も同時に発表されました。
じゃあ、こっちが本命でしょう。3rdのが割安だから。おそらく12速のベストセラーはSRAM GX EAGLEです。SLXの価格がこれに迫れるか?
to Super Boost 157
MTBの次代をうかがうのがSuper Boost 157です。現在のBOOSTハブのリアのOLDは148mmですが、Super Boost 157は157mmです。
今のところ、PivotとかKnollyとかがこれに前向きです。でも、Mondrakerは少し前にこれを止めたらしい。
水面下でこの157の周辺パーツは着々と増えます。で、XTにもこのハブの用意がありますね。
HG+のホイールをどうする?
ハブの不具合はあれですが、基本的にシマノ製品は高品質で高機能です。ネックのデザインもましになりました。
最大の懸念は新型フリーボディです。HG+に対応するハブが市場にほとんどありません。現時点ではXTRハブのみです。で、そいつが黒歴史いわくありだ。
HG+フリーボディのオプションをちゃんと準備するのは開発に協力するDT SWISSぐらいです。ここにMAVICが続く。
でも、台湾勢が動かないと、手頃なHG+ホイールが出回りません。
- NOVATEC
- Chosen
- BITEX
- DATI
- POWERWAY
などなど。ここらにまだHG+のオプションは見当たらない。これは技術の問題じゃない。金型やCNC加工はべつに難しいことじゃありませんから。特許の問題ですね。
- シマノハブで手組
- 完組ホイール
うーん、びみょうです。個人的に新型のHG+フリーボディの構造がいまいちです。この形状ではスプロケ齧りの問題が解決されない。
最善策は『シマノがオプションでSRAM XDに対応する』です。が、これはあり得ない。HG互換の12速? シマノは旧世代の互換性には消極的です。
このHG+フリーの問題は次世代ロードコンポのくもゆきに影響します。十中八九、デュラハブもデュラカセットもHG+になる。
HGでロード12速コンポてのはアンビバレントです。せっかくの新技術HG+をなんでハイグレードに投入しない? 投入しないならなんで開発した? え、なんで?
メーカーは自信を持って開発します。それを投入して世に問わないのは技術の進歩を否定することです。しかも、ものがハブです。シマノの本業ではありませんか!
「SRAM XDより旧HGより新型HG+のがすごいんですよ!」
これだけがジャスティスです。ハイエンドモデルはとくにそうだ。下位互換や旧式の互換は廉価グレードの役目です。
え、SRAM XDカセット x シマノ新型XT or SLXメカ? YES WE CAN!