自転車コンポーネントの御三家はサカイのShimano、ヴェネトのCanpagnolo、シカゴのSRAMです。そのほかのさまざまなブランドがこの三つを衛星のように取り巻きます。
基本的に世界のスポーツ自転車乗りは変速機、ドライブトレインをこの御三家から選びます。キリン、アサヒ、サントリーみたいに。それ以外の選択肢はぐっと狭く、難しくなります。
伏兵の台湾微電、microShiftは実質的にはシマノの廉価下位互換です。主戦場はアジア大陸です。シマノのおひざもとの日本ではマイナーです。バーコンは好評ですけど。
この数年、FSAやROTORが気を吐いて、セミ無線電動WEや油圧変速UNOで一石を投じます。しかし、多勢は変わりません。御三家の寡占が続きます。
しかしながら、あまのじゃくな発想でこまかく重箱の隅をつつけば、地ビールのようなマイナーなコンポーネントをちらほら発見できます。
純正以外のスプロケの実力
ドライブの魂、変速機、ディレイラーは御三家の独壇場です。カセット、クランク、チェーンリングはそうじゃありません。サードパーティ製が豊富にあります。
これは北米のCNCブランドのE*ThirteenのTRS+カセットです。オフロード用の9-44Tのワイドレシオ11速です。
Shimano純正が11~、SRAM純正が10~です。9Tのトップギアはこれと3TのSTRADA用の新型スプロケばかりです。
かんじんの変速性能はふつうです。へんな歯跳び、ガタ、歯の破損、支障はとくにありません。唯一の不満はE*Thirteenのお家芸の独特の取り付け方法ばかりです。
で、新車のバラ完ロードのためのスプロケットを物色します、マイナーなサードパーティから。「中古の美品の105カセットを買え~」て、まっとうな意見はわかります。
でも、正直、ぼくは変速のなめらかさにはそんなに神経質じゃありません。致命的なメカトラが起きなければ、ShimanoもSRAMもサード製も機械式も電動もおんなじですわ。
スプロケの要点はShimanoの有機的ななめらかさやSRAMの機械的なキビキビさでなく、重量と歯数とレシオ、そして、おねだんです。
カンパ12sカセットは気がかりだが・・・
これまでの経験でシマノ、SRAMのカセットの性能はぞんぶんに知れます。MTBの予備ホイールのスプロケがSRAMですし。純正の常用はカスタムネタ的にはおもしろいものじゃありません。
カンパニョーロは未経験ですが、うちのレイノルズリムとDTスポークとホワイトハブの手組カーボンホイールのフリーボディは一般的なShimano/SRAM用です。
このT11のフリーはチタン製です。単品のカンパ用フリーさえが1万オーバーの高級品です。そして、スモールパーツはアメリカ本国からの取り寄せになります。
以上のことからカンパニョーロのカセットは候補から消えます。新型の12速レコードはものすごく気がかりですけど。
カセット屋さんのSUNRACE
で、既知のShimanoとSRAMを回避して、サードのカセットを見つくろいます。たまたま特価のクランクを英国ストアのMerlin Cyclesで見かけて、ついでにてきとうなカセットをポチりました。
はい、SUNRACEです。台湾の自転車パーツ屋です。ドライブトレインの全般を手掛け、内装変速のスターメー・アーチャーを傘下に持ちます。
6速の外装変速のシティサイクルのリアメカにはそこそこの確率でこのSUNRACE製が見受けられます。本国のカタログにはMTB用の12spdのシフターやクランクが並びます。
しかし、なによりここの看板商品はスプロケットカセットです。20以上のプロダクトがあります。
今回の購入物はロード用の11速カセットのCSRX1です。歯数は11、12、13、14、15、17、19、21、23、25、28です。ふつレシオです。
ギアはハイテン、スペーサーとロックリングはアルミです。加工の精度はわるくありません。肉抜きはきれいで、角はぴちっとします。
JPY換算の価格は4229円でした。Shimano 105、SRAM Rival 1130グレードになりますか。スタンダードな11速のスプロケです。
重量計測です。
300gです。SunRaceの公式のカタログ値は278gです。誤差+8%です。うーん、ビミョーなラインです。それとも、スペーサーとロックリング抜きの実測だあ?
上のE*ThirteenのTRSが330g、SRAM XX1 PG1199が270gです。XDフリー用の少ピースのスプロケの軽さが際立ちます。値段がぜんぜんちがいますけど、ははは。
ホイールに取り付け
ささっとホイールに取り付けましょう。バラバラのHGスプロケのセッティングはひさびさです。メインのMTBはXDフリーですし、サブのママチャリはシングルの固定ギアですし。
「おお、コグに表裏がある! ああ、スペーサーを入れ忘れた!」
そんなふうな大騒ぎをしつつ、ディープリムに仮組みしました。
手組のチューブラーホイールです。あ、ぼくは組めません。ヤフオクで完成品の中古を競り落としました。
このリアホイールのタイヤ込みの実測値が990gです。+カセットでほぼ1300gになります。プチ遠乗りには十二分な一本でしょう。てか、かくじつにオーバーホイールです。
ディープホイール試乗 by ママチャリ
ホイールが完成しても、フレームが手元にありません。3月末に安い中華カーボンフレームをオーダーしますが、いまだに発送連絡をいただけません。
AliExpressの返金システムはヤフオクや楽天よりはるかにユーザーフレンドリーですから、泣き寝入りの心配は皆無です。
8周年記念のセールでオーダーが集中したか、ペイント業者に遅れが出たか。セラーは無数にありますけど、塗装業者、製造業者は限られます。
ために在庫品以外の中華カーボンの納期はおくれがちです。台湾は4月はじめからずっとゴールデンウィークでしたし。
て、ぼくはそんな事情をすっかり把握しますから、中華初心者みたいにむやみにあたふたしません。あたふたしませんけど、ホイールを目のまえにするとうずうずします。
126mmエンドがささやく・・・
かんたんなテストライドをできないかと思って、改造ママチャリに目を付けます。これのフレームのエンド幅は126mmです。
現状のホイールは120mmのトラックハブです。この時点で頭のネジのユルユル具合が知れます。じゃあ、ユルユルもユッルユルもおんなじです。
そして、126mmの正爪エンドがぼくにこうささやきます。
「4mmのギャップ? 片側2mmや。行ける行ける!」
そうですか! そうです! ありがとうございます! ぼびー!
疑似シングルスピード
かくしてエンド幅のOKは出ました。しかし、チェーンさんが異を唱えます。これはKMCのシングル用の厚歯です。11速カセットとはノットコンパチです。
多段の薄歯ギアは厚歯のチェーンのリンクの厚みにおさまりますけど、厚歯のリンクは多段スプロケの歯と歯の隙間におさまりません。
対策しましょう。かんたんな方法です。カセットのスペーサーとギアをちょちょっと入れ替えます。こういうことです。
ロー側の土台の4段:スペーサーx2:17Tコグ:スペーサーx2:そのほかギア、て並びです。スペーサー二枚分のクリアランスがあれば、厚歯のチェーンがとなりのギアに干渉しません。
エンド幅のギャップはごり押しでどうにかなります。干渉予防にワッシャをドライブ側のハブのシャフトエンドにかませて、クイックリリースで固定します。
はい、疑似リアシングルスピードが完成しました。
チェーンラインがすこし内側に寄ってしまいましたが、テストライドはぶじに成功しました。でも、クイックリリースの固定力がひんじゃくで、立ちこぎのトルクでハブがずれます。
フロントは問題なしです。
ゆったりシッティングでスーパーまで流します。
フレーム980円、ホイール65000円、牛乳168円です。だいたい二回のお買い物でフレーム代を軽く越えててしまいます、ははは。
ホワイト、ハブ、ヤバイ
この試乗でレイノルズのディープカーボンリム、White Industriesのハブの性能の片鱗がかいまみえました。
このハブ、ヤバイよ!
ハブの回転はもちろんなめらかですし、逆回転時のラチェットがおそろしくスムーズです。厚歯とシングルスピードの影響か?!
この機会にトラックホイールの固定ギアをWhite Industriesのフリーギアに変えようか? これは良いハブですわ、あー、良いハブだ。
あ、SUNRACEのカセットはふつうです。
全力パワフルダンシング、下り坂ダウンヒルが楽しみになります。本命のフレームさんが早く来て!