チェーンリング、リング、ギア、コグ、歯、呼び名はさまざまですが、これらは回転駆動部分のギザギザのわっかのことです。
で、「チェーンリング」や「リング」ていうと、だいたいフロントのクランクの歯車を指します。上の写真の左のやつです。
右のような複数枚の歯車のユニットは『カセット』や『スプロケット』です。これはリアのみの呼称です。こちらはこの記事の題目でありません。
今回の主役は自転車のフロントのチェーンリングです。
チェーンリングについて
チェーンリングは自転車の駆動部分のかなめです。BB→クランク→チェーンリング→チェーンで動力をリアカセットに伝えます。エンジンにもっとも近い歯車です。
この世のほとんどの自転車がこの駆動系統です。
ブリジトンアルベルトみたいなベルトドライブの自転車、機関車みたいなシャフトドライブの自転車、オランダの足ふみペダルドライブみたいな自転車は例外です。
歯のピッチは共通
このチェーンリングのギザギザの歯と歯の距離、ピッチは共通です。
1/2インチ=1.27cmです。ママチャリのリングもロードのリングもMTBのリングもこの間隔です。ギアの歯並びは万車共通です。
おのずとこれに掛かるチェーンのコマのピッチもカセットの歯のピッチも1/2インチです。
ゆえに同数の歯を持つフロントリングとリアカセットのコグは同じ大きさになります。最初の図を確認しましょう。
左のリング、右のカセットの最大の歯数、いずれが44Tです。TはteethのTです。ティース! 古参の自転車乗りや業界人はこの字体から『丁』て呼び方をします。ちょう!
厚歯と薄歯
チェーンのコマやギアの歯のピッチの間隔はこのように一定です。しかし、うえの図のようにチェーンの厚みはぜんぜんちがいます。当然のごとくギアのプレートの厚みが変わります。
で、ギアやチェーンの厚みは変速数によります。リアのギア数が基準です。
8速のクロスバイクのカセットのギアの一枚一枚は11速のロードバイクのそれより厚くなります。6-9速前後はまちまちです。一部が共通だったり、共通でなかったり。
必然的にシングルギア、変速なしの1速の自転車のチェーンとギアの歯がもっとも分厚くなります。固定ギアのものは厚歯です。
これは一般名詞じゃありませんが、定番の自転車用語です。こんなふうに商品名に入ります。
厚歯=シングル、変速なし、固定ギア、ピスト用です。例外的に2-8の内装変速は厚歯です。チェーンとじかに触れる外付けの歯は一枚だけです。
単純に厚歯は丈夫で安価です。ギアとチェーンの素材は鉄系金属です。強度の点からアルミはメーカーに好まれません。
質量が多くなれば、強度が上がります。ノーメンテのママチャリやシティサイクルが意外と長持ちするのはこのためです。外置き、野ざらしは想定内です。
反対に外装変速の10速以上のドライブはきゃしゃです。室内保管、定期メンテが基本です。サビや摩耗が起きると、性能ががくっと落ちます。
ややこしいコンパクトクランク
コンパクトクランクはやっかいなキーワードです。これは文字通りのコンパクトなクランクではありません。短いクランクはショートクランクです。
コンパクトクランクのクランクもノーマルクランクのクランクもおなじです。ちがいはリングの歯数です。
伝統的にロードバイクのノーマルクランクは53x39Tのフロント二段です。クランクのアームサイズの基準値の170mmのようにこの53×39がフロントの標準です。
これより低い歯数のギアの組み合わせがコンパクトクランクて呼ばれます。50-34や48-34とかです。
歯数の差は踏み込みの重さに影響を与えます。53→48は1割減、10%ダウンです。これは体感にはっきり出ます。
ロードのコンパクトクランクは『高ケイデンスでくるくる回す』てトレンドのなかで普及しました。例のごとくPROSとCONSは巻き起こりましたが、オプションのひとつとして根付きました。
小柄な人、女子、足に古傷を抱えるような人にはコンパクトクランクがおすすめです。立ちこぎラー、ヘビー級、むきむきさんはノーマルや社外性のオーバークランクを検討しましょう。
ナローワイドチェーンリング
オフロードバイクやオールロードバイクではフロントシングル、1x(ワンバイ)がスタンダードです。アメリカのSRAM初のスタイルです。
1xは11速化以降のながれですから、基本は1×11や1×12になります。8速や9速のミニベロや折り畳み、6速のシティサイクルはここには属しません。なぜか?
1xのかなめはナローワイドチェーンリングです。
このように薄い歯と厚い歯が交互に並びます。ガードやキャッチャーなしでチェーントラブルが激減します。
オフロードやオールロード系以外のフロントシングルバイクのチェーンリングはふつうの薄歯です。これは昔からあります。本来のSRAM発の1xスタイルじゃありません。
このナローワイドリングのフロントシングル化は街乗り自転車に効果的です。クロスバイクのクランクはおおよそスクエアの4アームの汎用タイプです。
クロスバイクのベストセラーのGIANT ESCAPE R3やGIOS MISTRALのクランクがこのタイプです。5アームはめったに見ません。
これのリング取り付けの穴のピッチはMTB用とかぶります。BCDないしPCDは104mmです。で、MTB用のナローワイドリングをポン付けできます。
と、バッシュガードで足元を固めれば、無敵の街乗り快適号を作れます。
リングのボルトは星形ネジ
ボルト止めのチェーンリングの交換に立ちはだかるのが星形ネジです。シマノクランクのリングボルトはほぼいたずら防止用のT30のトルクスタイプです。
ディスクブレーキローターも同様です。こちらはT25です。
社外品には6角ソケットのタイプがあります。このチェーンリングボルトは6角ボルトタイプです。
ボルトはこのようにバラバラです。
オフロードではアームなし、ボルトなしのダイレクトマウント型がトレンディーです。リングをじかにクランクにくっつけます。
これはRACEFACEのATLASのCinchです。マウントはCinch独自のものです。コンパチはたしかEASTONのカーボンクランクです。
SRAMのダイレクトマウント部の形状です。
自転車パーツの規格はパソコンのUSBやスマホのmicroUSBみたいにぜんぜん統一されません。各社にアップルのライトニングコネクタみたいなものがあるような状況です、ははは。
アームの有無、ホール数、BCD、ボルトのソケットの形、ボルトの長さetcetc…注意事項はもりだくさんです。
これはメーカーのいじわるでなく、設計や意匠のパテント、特許のためです。他社とおなじマウント方式を使うなら、そのメーカーにロイヤリティを払わねばなりません。
「じゃあ、ちょっと形を変えて、独自規格にするっしょ~。交渉ははんざつだし、よそに金を払うのはおもしろくないし~」
てのがメーカー各位の発想でしょう。そのしわ寄せは小売りやユーザーに来ますが。