自転車の軽量化はチャリダーのロマンです。ライド派もカスタム派もそのチャリ遍歴のなかで軽量化の熱に浮かされます。
究極のこだわり派は複数の同モデルを買って、個体差の優秀なやつを選抜して、ぞくに『アタリ』のみを使います。マニアの世界はそうゆうものです。
究極の究極はワンオフの特注のフルオーダー、フルカスタムです。現在の世界最軽量のギネス記録のロードは2.7kgです。ホイールセットが583g、クランクセットが283gという異次元のバケモノです。
庶民が手軽に行える軽量化はパーツの交換です。とくに回転系の外周部の軽量化は効果的です。ホイール、タイヤ、チューブ、テープ、シーラントなどなどが候補に入ります。
タイヤとチューブで一人前
ちまたのロードバイクではクリンチャーホイールが主流です。ここではタイヤとチューブはニコイチです。片方だけで機能しない。
また、一方の性能がもう一方の性能に影響して、足回りの総合力や性質を決めてしまいます。個々の能力+組み合わせと相性がたいせつです。
「フルカーボンリムに天然ゴム製のラテックスチューブは非推奨だ」
「分厚いブチルは軽量タイヤの転がり抵抗を損ねる」
「コンチチューブとVittoriaタイヤの組み合わせはよくパンクする」
みたいな禁則事項や都市伝説もあります。この組み合わせの功罪はクリンチャーだけのポイントです。チューブラーやチューブレスには存在しません。
リムセメント vs リムテープ、ピュアチューブレス vs チューブレスレディみたいなこまかい派閥争いはありますが。
以下で最軽量クリンチャーのタイヤとチューブの組み合わせを見ていきましょう。
ブリジストンの自転車パーツのあれこれ
ブリジストンは世界最大手のタイヤ屋です。そして、国内屈指の自転車屋です。BSマークは軽快車界のエリートの紋章です。
最軽量23cクリンチャータイヤはこのタイヤ界、自転車界の雄から出ます。
その前に少しブリジストンサイクルをおさらいしましょう。ベストヒット商品はブリジストンアルベルトシリーズです。アルミフレームのベルトドライブでアルベルトです。
BSのスポーツバイク部門はAnchorです。時代や地域で”BRIDGESTONE”や”BS”のロゴの有無が変動します。現在の国内の正規のロゴは”Anchor”です。
自転車パーツはOEM
Anchorのフレームの製造元は台湾のメリダ社です。そして、タイヤの製造元は同国のチェンシンや日本のIRCです。ブリジストンの自転車のパーツは海外OEMです。
つまり、ブリヂストンサイクルは自転車『メーカー』でなく、自転車『ブランド』です。
「やっぱり、日本製のブリヂストンの自転車は安心安全だわあ」
BS名義のチャリを買うパンピーの思い込みにしずかに苦笑するのは町の自転車屋のあるあるのようです。
「ブリヂストンは日本のブランドですが、BS名義の自転車は日本製じゃありません。さあ、このMade in Taiwanの印が目に入らぬか?」
と、正直に告白する人は商売人失格です。
「ええ、日本の自転車ですよ~。売れ筋ですよ~。いちばん人気ですよ~」
てゆうのが筋です。あいにくと台湾製の工業製品のクオリティの高さは門外漢には通じません。世間の牧歌的な感覚では日本製以外はぽんこつです。
タイヤとチューブはMAXXIS=CST
BS印のタイヤの製造元の有力候補のチェンシンはタイヤレーベルのMAXXISを持ちます。ロードでは中堅どころですが、オフロードでは最強タイヤ屋です。
オールラウンドタイプのMAXXIS DOLOMITEは完成車にちょこちょこ付きます。
もうひとつのOEM先の有力候補のIRCは日本のタイヤ屋で、自転車チューブレスタイヤの先駆者的メーカーです。希少なMade in Japanの刻印をパナレーサーと共にチャリ界へ供給します。
ブリジストンサイクルのタイヤとチューブはわりと後発の製品です。いずれがEXTENZAシリーズを最高グレードに位置付けます。名作自動車タイヤのPOTENZA的立ち位置です。
リンク先のユーザーレビューのとおりにこの超軽量EXTENZAチューブはCST=チェンシンタイヤ印の台湾製です。じゃあ、CST=MAXXIS=BS=TIOGAは暗黙の確定です。
目印はこの字体のスタンプです。
ひとつの製造元が複数の企業の製品を作るのはふつうです。うちの近所の山崎パンの工場はローソンとセブンイレブンのスイーツを作りますし。ちがいはレシピと包装です。
自転車チューブのそれはバルブの高さのバリエーション、上みたいなスタンプのロゴ、そして、パッケージです。超軽量タイプはにたりよったりです。
このチューブの事情からタイヤのEXTENZAもMAXXIS製でしょう。チューブのスタンプみたいな決定的証拠はありませんけど、台湾製は台湾製です。
最強タイヤR1S
そのBS EXTENZAシリーズの最軽量タイヤがEXTENZA R1Sです
展開はクリンチャーの23cオンリーです。かんじんの重さは驚異の145g! です。全スポーツバイクタイヤのなかでダントツの最軽量タイヤです。
パナレーサー史上最軽量の軽量新作クリンチャーのGillerが160g/23cです。EXTENZA R1Sのカタログ値はその超軽量からさらに-10%の超々軽量タイヤです。
チューブラーはチューブを内蔵しますから、タイヤ単体の重量ではクリンチャーに勝てません。チューブレスはチューブレス化のためにしっかりと作られますから、おのずと重量はかさみます。
つまり、EXTENZA R1Sは文字通りの市販最軽量自転車23cタイヤです。これを超えるのは20cのコンチスーパーソニックくらいです。C13リムが必要です。
とにかく、用途は完全にヒルクライムのレース用です。はたまた、計測用。軽さはもろさの裏返しです。ロングライドや普段使いには向きません。
実際にこのR1Sには耐パンクベルトはなく、トレッドは肉薄極狭、サイドはぺらぺらです。ライバルのパナのGillerは耐パンクのPROTITEベルトを内蔵します。15gの差はここでしょうね。
販売元のブリジストンは1500km前後の走行を推奨します。1クールのはかないタイヤです。乗る人は一、ニか月で使い切っちゃいます。
ラテックスを超えるTubolioの超軽量チューブ
さて、タイヤの相棒のチューブの最軽量候補はながらくSOYOの天然ゴム製のラテックスチューブでした。48gの軽さと2000円オーバーの価格で軽量マニアをとりこにしました。
Vittoria、Michelinのラテックスは軽量ブチルより重量です。うえのEXTENZAチューブやパナのR’AIRのが軽量です。この記事の趣旨の最軽量の組み合わせには合いません。
このSOYOラテックスの48gとブリジストンEXTENZA R1Sの145gの計193gが23cクリンチャーの最軽量コンビです。ブリソヨセットです。また、50gのVredesteinのラテックスもセット200g以下の数値をたたき出します。
最大の特徴はバルブです。金属製じゃありません。樹脂ポリマー製です。これでボトムネックだったバルブの重量が一気に解消されました。
29er用が44g、700c用は33g
すでに販売中の29erの軽量チューブS-TUBOが44gです。オフロード用がそんなです。シーラントみたいな重量です。砂糖大匙3杯分~。
来年以降に販売予定の700cモデルは空前の33g!! 超軽量のラテックスから-20%の二階級ダウンの軽量化です。砂糖大匙2杯と小匙1杯分~。
これをEXTENZA R1Sと組み合わせますと・・・はい、178gです。前後ペアさえが356gです。ザ・黒船チートチューブ!
軽量化の代替案のセミ軽量セットのパナレーサーGillerとR’AIRのセットは片側225g、前後450gになります。回転系の100gのギャップは別レベです。
Tubolitoのネックは価格です。販売中の安い方のTUBOが29.90ユーロ、高い方のS-TUBOが32.90ユーロです。今日の為替でそれぞれの価格は3960円、4360円です。はぴー!
いや、しかし、EXTENZA R1SとSOYOラテックスから+2000円x2で最軽量をゲットできるなら、高い買い物とは思えません。ふつうのブチルからラテックスにしたときと同じ感覚で飛びついちゃいます。
価格は・・・
Tubolitoの定価は32.90ユーロです。現地価格ですから、国内正規は5000円オーバーになりかねません。
「え、なんで4000円のチューブを買っちゃうか? 最軽量がそこにあるからサ」
Tubolitoを買ってみた
別のパーツの注文のついでにTubolitoを買ってみました。ついでのついでに同タイプのポリウレタンチューブのREVOLOOPを買ってみました。
3000円と4000円のチューブです。で、Tubolitoの実測は41gです。当初の33gはさすがにふかしでしたねー。か、初期ロットでパンクが巻き起こったか。