チェーンは自転車の駆動系部品、ドライブトレインの重要な1ピースです。スポーツバイクでは特にそうです。放置、野ざらし、ノーメンテはNGです。
また、10速以上のチェーンは細身で華奢です。ママチャリやシティサイクルのぶっとい1速チェーンのように長持ちしません。
で、交換やメンテの機会はおのずと多くなります。
チェーンのメンテをかんたんにする簡易リンク
チェーンの交換や取り付けの主な場面です。
- 新品に交換する
- リングやスプロケットの歯数を変える
- 伸びを調整する
断裂や破損はめったにありません。そんな破壊トラブルはよっぽどです。
チェーンをセットするときには3つの手法を使います。
- お古のコネクトピンを再利用する
- 新品のアンプルピンを圧入する
- ミッシングリンクを使う
1は一昔前まで街のチャリ屋の定番の手法でしたが、現代のシンケイシツなチャリ界では好まれません。10速以上の細いチェーンでは非推奨です。
2はシマノライクな方式です。
3です。
チェーンの擬似的な外コマです。二つで一つのニコイチパーツです。装着方法は圧入式でなくて、相互嵌め込み式です。
シマノはクイックリンク
ところで、ミッシングリンクはこの簡易リンクのパーツ名でなく、商品名です。台湾のチェーン屋KMCの専売特許です。
で、このミッシングリンクは11速用です。10速や9速や8速のチェーンには合いません。チェーンのコマの厚みが違いますから。
厚みが違う=中ピンの長さが違う、です。12速、13速のチェーンが最薄です。ピンは最短です。10速以下には寸足らずになります。
反対に10速以下の中ピンやミッシングリンクは11速や12速には寸余りになります。中ピンがリンクの外コマから飛び出ます。ピンの穴の径は同じです。
現状の簡易リンクの決定版はこのKMCのミッシングリンクです。他社が追随しないのは技術より特許のせいです。この合理的な形状はKMCの専売特許です。
台湾YABAN YBNのリンクです。
品名はQUICK LOCK LINKです。擬似外コマ+ピンの形状は変わりません。リンクのデザインの違いが特許逃れの苦労のあかしです。
他社は特許使用料を払わねば、この形状や類似の形状を使えません。構造自体はシンプルですからね。競合品の少なさは技術的な問題ではありえない。
復活のシマノクイックリンク
さて、われらのシマノは長らくチェーンの接続には純正アンプルピンを推奨しました。
簡易リンク的な純正品はありません。いや、実質的にはありました。が、歴史の闇に隠されました
その型番がSM-CN79です。7900世代のデュラエースグレードのパーツです。2008年ごろの商品です。そんなに古くありませんが、すでに幻です。
形状はYBNのクイックロックリンクに似ます。肉抜きがだいたんです。特筆はピンです。なんと片方がスライドします。
あきらかに構造が過剰です。しろうとのぱっと見の直感で潜在的トラブルの多さが知れます。スライドピンかスライドソケットのどっちかが速攻でばかになるよー、ゼッタイ。
案の定、リコール、クレームの嵐が巻き起こって、こいつは表舞台から駆逐されました。PDFファイルに名残を残します。特許逃れの苦肉の策が裏目に出ましたね、本末転倒だ。
シマノはなにわの企業の典型です。たいてい慎重派の後だしじゃんけんで大外しを回避しますが、たまにこういうズッコケをやらかします。
このSM-CN79の失敗からシマノはアンプルピン推奨派に落ち着きます。それから、はや7、8年です。古傷がいえたか、熱さが喉元を過ぎたか、ついにシマノクイックリンクが復活しました。
見た目も形状もKMCのミッシングリンクのそっくりさんです。というか、シマノのチェーンはKMC製です。何が違う? ロゴか?!
とにかく、今回のシマノの二代目新型クイックリンクは目新しいもんではありません。権利問題をクリアしたミッシングリンクです。シマノ純正品ダイスキーな人用です。