固着したBBを外す 固いねじ切りボトムブラケットをDIYで回す裏技

古い自転車には不具合が付き物です。例えば、中古の訳あり格安チャリンコを買って来て、普通に乗れたとしても、弄るところで何らかのトラブルに高確率で遭遇します。

そもそも、ネットの画像は実物よりきれいに見えます。細かい汚れやダメージがなかなかはっきり映りません。

10年物のロード
10年物のロード

105ブレーキ、アルテグラペダル、FULCRUMのホイール付きのこのGIANT DEFYは何と15000円で、非常にお買い得の掘り出し物でしたが、前輪のパンクが5か所でした。

そして、二時間ほど淀川の河川敷をとぼとぼ歩いて帰った後で、クリーニングしながら状態を確認すると、さらなるメカトラブルに見舞われました。

BB固着です。ボトムブラケットが外れません。

固着したスクエアBB
固着したスクエアBB

3年前に3000円で買ったGAN WELLの鉄フレームの悪夢が脳裏に浮かびます。あのときにはクランクの固定ボルトがかっちかちでした。

ねじ切りJIS/BSA式BBはこれやからなあ・・・ゆえにぼくは圧入派です。プレスフィット式は固着とは無縁です。

いや、異音とは無縁でないがなと仰るねじ切り原理主義者はどちらさまですか? 私がゴムハンマーでPFBBの良さを叩き込みましょうか?

BB圧入-by-ハンマー
BB圧入-by-ハンマー

不幸中の幸いでもう一つの固着濃厚ポイントのシートポストはすんなり動きました。ダブル固着は熟練の自転車イジラーの心をも砕きます。

では、気を取り直して、このGIANTのロードバイクの固着したBBにリベンジします。

ねじ切りBB独自のトラブル

  • 古い自転車
  • 放置気味
  • ねじ切りボトムブラケット

この三要素が揃うと、50%以上の確率でBB付近には何がしかのトラブルが発生します。

実際問題、これまた別の機会に格安で買ったGIANT RXのフレームのBBもかっちかちでした。

BB固い
BB固い

今のところ3の3です。対戦成績は1勝2敗です。が、この2敗目をリベンジして、勝ち越そうと思います。

固いBBの外し方 定番編

上のGIANT RXのBBはかっちかちでしたが、定番の手法でどうにか外れました。

  1. BB周りをごしごし洗う
  2. ラスペネなどの潤滑剤を吹く
  3. 一晩放置
  4. 工具の柄を補強
  5. 力業で回す

5年物のフレームのボトムブラケットはこの方法でだいたい緩みます。が、10年物はそう易々と行きません。

ちなみに固くなるのは主に右側=ドライブ側のBBのワンです。チェーンとクランクがこちら側にあるので、汚れがちりつもでじわじわ積もって、歯垢みたいにこびりつきます。

現に上のGIANT RXの写真も右側ですし、今回のDEFIも右側です。

で、自転車界では常識ですが、JIS/BSAのねじ切りBBの右側は右回しで緩み、左回しで締まる逆ネジタイプです。

右回しで締まる正ネジタイプはITAのねじ切りBBのみです。これはイタリアのメーカー、ピナレロとかのフレームでしかほぼ見受けられません。

GIANTはグローバルな最大手ですから、右BBは汎用のJIS/BSAタイプです。つまり、右側は逆ネジだ。

これは歴然の事実ですが、BBの外れなさが度を越えると、うっすら疑念が生まれます。これはほんとに逆ネジだあ? と。

逆ネジ暗鬼
逆ネジ暗鬼

かと思えば、クランクの固定ボルトが正ネジだったり、逆ネジだったりします。実際、うちのSRAM GX DUBのクランクキャップは逆ネジです。ややこしー。

スクエアテーパーのクランク固定ボルトはほぼ正ネジです。しかし、例外は常にあって、こちらの不安を往々に誘います。

BB工具の構造的欠陥

さて、今回のGIANT DEFYの右BBはRXの右BBよりかっちかちの難敵です。上述の定番の固着ボトムブラケット対策が通用しません。

工具がはぐれメタル並みの防御力でかきんと弾かれます。

20セレーションタイプの工具の掛かりの浅さ
20セレーションタイプの工具の掛かりの浅さ

このBBはシマノUN55です。工具を掛ける溝はワンの内側で20セレーションです。対応工具も20セレーションタイプです。定番のやつ。

また、ここの形状も外側一か所爪タイプとかカニ目タイプとか多岐です。それぞれに専用工具が必要です。あと、固定ボルトも六角ソケットだったり、普通のボルトヘッドだったり・・・

ああ、カンパニョーロタイプなどもあります。下はMICHEのクランクのBBです。溝の数が違う。ゆえに工具も違う。

ママチャリBBシェル左
ママチャリBBシェル左

汎用のシマノやFSAタイプのBBの溝はだいたい20です。で、専用工具をはめ込んで、レンチでぐいっと回します。

しかしながら、この工具の掛かりが非常にぽんこつです。BBの構造上、セレーションが深くがっちり入りません。浅くしか入らない。

結果、BBの固着が一定のレベルを越えると、工具が溝から外れてしまいます。最悪、BBの山が舐める。

掛かりの浅さはこのBBと工具の構造的な欠陥です。

BB工具を固定する

今回のDEFYのBBはクリーニング時、クランク装着時の二度のBB外しを拒否しました。

フレームを寝かせて、工具を上から足で踏んで、レンチにパイプを嚙ませて、ぐいぐいこじっても、一向にBBを外せません。工具がさきにがちゃっと外れてしまいます。二連敗。

これを力任せに繰り返すと、BBの溝を無暗にすり減らして、状態をさらに悪化させてしまいます。三度目の正直には方法を買えねばなりません。

で、少し考えて、コーナンPROのネジのばら売りコーナーに行き、こんなものを購入しました。

固定ボルトと同じ規格のねじ
固定ボルトと同じ規格のねじ

M8の長さ40mm、ピッチ1.0mmのボルトとナットとワッシャです。199円でした。

ネジの太さとネジ山のピッチがクランクの固定ボルトと同じです。ちなみにバラ売りの安いねじは1.25mmピッチばかりでした。1.0mmピッチはネジ界ではマイナーです。

これをこんな風にします。

工具を固定
工具を固定

BB工具を外側からこのボルトとワッシャで固定します。要はクランクの代わりに工具が嵌めこまれた格好です。

これで力が掛かっても、工具は外れません。幸い付属のワッシャが工具のソケット穴よりちょい大きいサイズで、いい感じでふさいでくれました。

当然、柄付きの工具にはこの方式は通用しません。あと、クランクの付属の固定ボルトは工具越しにBBの軸のネジ山まで届きません。40mmは届きました。

で、こんなふうに工具を固定すれば、フレームを立てて、体重を掛けても、外れや舐めを克服できます。

体重掛けて回す
体重掛けて回す

結果です。

固着BB外れました
固着BB外れました

はい、2勝1敗に持ち直しました。

案の定、左側BBはゆるゆるでした。積年のチェーン汚れの恐ろしさが分かります。ほぼ歯石だ。

固着したBBの外し方のまとめ

  • 5年ものの自転車のBBはだいたいかっちかち
  • ねじ切りBBは固着する
  • 症状はほぼ右側に出る
  • 連続で失敗するなら手段を変える
  • BBの溝舐めたら終わり
  • 工具固定はおすすめ

コッタレスクランク抜きやBB外しの専用工具と定番の手法で古いスクエアテーパーをどうしても外せないときには、この裏技を試してみてください。

念のため、ホムセンには取り外したクランク固定ボルトを持参しましょう。ここのピッチも一様でないぽいので。