trail、トレイルは一般的には小道や足跡を意味します。ハイカー、登山家、MTBerの理想的なトレイルです。
が、アウトドアユーザーはしばしばサバを読みます。ベテランやコアユーザーの「初心者向けのトレイル」はローディのゆるポタなみにあてになりません。
本来のゆるいトレイルであった里山のふもとや林道はすっかりアスファルトの下にうもれてしまいました。
おかげで国内の都市の郊外のオフロード、ハイキングコース、登山ルートは道、山、道みたいに急激です。ほんとにゆるいなだらかなトレイル、グラベル、ダートが希少です。
広義の意味ではこれもトレイルだ!
山の人はこれを平気で「整備されたファミリー向けのハイキングコースですお」てうそぶいてしまいます。重症です。
自転車のトレイル
さて、自転車界にはこういうオフロードの地形の『トレイル』のほかにもうひとつの『トレイル』があります。こちらの内容は非常にピンポイントです。
『フレームのヘッドチューブの中心の延長線上の地面との接点からフロントフォークのシャフトないしフロントホイールの軸の垂直下の点までの距離』
です。この文章で具体像をイメージできるのはエスパーばかりです。自転車乗りの頭にさえ図がぱっと思いうかびません。
実像はこうです。
赤のラインが上述の『トレイル』です。緑のラインが『オフセット』です。こちらのワードはふつうに『突き出し』や『段差』を意味します。
斜めのピンクのラインがヘッドアングル、ヘッド角の延長です。このVitus Sommetのヘッドアングルは65.5度です。ぞくに寝気味のアングルです。
トレイル大=直進安定
スポーツバイクを完成車で買うと、このフォークのオフセットやトレイルには悩まされません。フォークはパッケージの一部です。べらぼうな別サイズや別ジャンルは付かない。
一方、カスタムや故障でフォークを交換する、MTBのバラ完でサスペンションフォークを別途に用意するetcetcc…てすると、オフセットとトレイルに気を配らねばなりません。
で、くしくもハードテイルのMTBからフルサスのMTBへのパーツ移植と仮セッティングでこの問題に直面しました。
これは先代のKONA HONZOです。フルリジッドのハードテイル、ロックなバイクです。
HONZOはトレイル・・・なだらかな小道用の人気モデルです。ヘッドアングルは68度です。これはオフロード自転車のなかでは立ち気味のヘッド角です。
急な下りにのぞんで、気を抜くと、前のめりにでんぐりがえりします。ぞくにジャックナイフです。
にしても、この暗峠のS字の勾配とみぞは国道には見えません、ははは。
ヘッド角とタイヤサイズとオフセット
で、新車のSommetのヘッドアングルは65.5度です。これはまあまあの下り系のオフロードバイクのヘッド角です。
角度のギャップはたったの2.5度です。しかし、手元の2.5度は1m先のフロントホイールの接地点では数センチになります。
結果、おなじフォーク、おなじタイヤを使っても、ヘッド角でトレイル量の数値を増減させられます。68度と65.5度のトレイルの差は約2cmです。後者のトレイルが大きくなる。
実のところ、この2cmの影響がわりに大きく出て、フォークのトレイルとかオフセットとかの専門用語がぼくのなかで急浮上しました。
ヘッド角68度のKONA HONZOのハンドリングはふつうでした。3インチのタイヤをセットしても、特段のもっさりや硬さを感じない。
ところが、ヘッド角65.5度のVitus Sommetにこのリジッドフォークを付けると、二昔前の国産スマホみたいなモサモサもっさり感を覚えます。
そして、なにを血迷ったか、有馬温泉まで行って、さらに裏六甲まで行ってしまいました。下り系のMTBで1000mの獲得標高はハードです。
で、舗装路の低速走行、まさにヒルクライムではこのハンドリングのもっさり感が最大限に出ます。
ステムを固定するときにトップキャップのボルトを締めますが、これをきつく締めすぎると、ヘッドパーツの玉押しをBANしちゃいます。あれくらいのもっさりさです。
容疑者はホイールベースの増量、トレイルの増量、コラムの長さ不足とか、フォークの肩下長のミスマッチとかです。
もともとこのカーボンリジッドフォークは先代のおさがりです。サスペンションフォークの入手までのつなぎでしかない。そう思えば、大目に見れます。
むしろ、今回、トレイルやオフセットに注目できる格好のトリガーになりました。身を持って知るのはだいじです。ブログネタができましたし。
いろんな自転車のトレイル量
見返しましょう。
緑のラインがフォークオフセットorレイクです。このBOOSTプラスタイヤ用の中華カーボンフォークのオフセットは51mmです。標準的なオフロードフォークのオフセット量です。
下り系バイクのホイールベースは1000mmをよゆうで超えますし、トレイル量は100mmをよゆうで超えます。縦長、低重心、後傾、大径がトレンドです。
その影響でレースシーンではこまかいタイトターンの連続みたいなセクションはへりました。反面、アトラクションが強烈になります。
MTBの対極の自転車を例にしましょう。うちの改造ママチャリです。
ヘッド角はまあまあ寝気味です。もっとも、これはハンドルを手元(サドル)に近づけて、実用自転車らしくアップライトでどっしり乗るための設計です。
このフォークはふるいSURLYのクロモリフォークです。ツーリング用モデルっぽいです。さきっぽがにゅいんて曲がって、オフセットをかせぎます。トレイルはけずられます。
て、フレームジオメトリのおもしろさにめざめました。