趣味の自転車は長丁場のアウトドアです。イベントレースや練習は数時間でスパっと終わりますが、ロングライド、ポタリングはだらだら長引きます。
ドアtoドアの屋外の活動時間はハイキング、登山、遠足に匹敵します。
趣味のサイクリングは長引く
この活動時間では人体はさまざまな生理的現象に苛まれます。摂取と排泄です。飲み食いなしの丸一日のアウトドアはレクレーションではありません。我慢大会です。
単純に半日のアウトドアのカロリー消費は=基礎代謝12時間+活動分です。代謝だけで1000kcalが消えます。かつ丼大盛り一杯分です。
サイクリングの運動強度はウォーキングとジョギングの中間くらいです。そして、信号待ちや下り坂でちょくちょく途切れる。距離当たりの負荷は非常にマイルドです。
ゆえに疲れや不調が顕在化せず、自覚症状があいまいになって、対策が後手後手になります。さらに無根拠な自信が事実を認めたがりません。
「わたしはタフな人間です。チャリンコで一日に100kmを走ります。それがこんな平地でへろへろにバテましょうか? この気分の悪さは気のせいです」
我慢は美徳です。武士の子孫は食わねど高楊枝です。水を飲まない。歯を食いしばれ。気合! 根性! 努力!
亜熱帯化の一途をたどる21世紀の日本ではこのような発想は命取りです。趣味のアウトドアで不健康になるのは虚しいものです。
ライド+エイド=サイクリング
日帰りロングライドはチャリンコの遠足です。適切な補給や休憩は活動内容のローテーションの一角になります。
『ライド+エイド=サイクリング』
ライドとエイドの重要性はイーブンです。いや、エイドの方がやや上です。目的地周辺や道中のおしゃれなパン屋は不可避です。
もはや、サイクリングでなくて、パンニングです。
ハンガーノック?
長距離、長時間の耐久系スポーツやアウトドアの愛好者がみだりに多用するのが『ハンガーノック』です。
英語では”Hitting the wall”です。うーん、つづりからこれは語源ではない。オランダ語では”Hongerklop”です。ハンガークロップ? こっちの語呂のがしっくり来ます。
wikipediaには『1960年代の南アフリカの自転車選手が使った”hunger knok”や”bunger honk”に由来する』とあります。
It’s HARAPEKO!
このハンガーノックは全体にどんなもんでしょうか? 『運動中の急激な低血糖化』とか『エネルギー切れ』とか『ガス欠』とか有象無象の表現がぞろぞろ並びます。
解決策は糖の摂取、エネルギーの補給です。とどのつまり、なにかを食べることです。ここから逆算すると、ハンガーノックはすげーハラペコとシンプルに定義できます。
日本のローグライクゲームの金字塔が不思議のダンジョンシリーズです。風来のシレン、チョコボの不思議なダンジョン、ディアボロの大冒険などが有名です。
これらのゲームの重要ステータスが『満腹度』です。行動のたびに満腹度が減って、ゲームキャラとプレイヤーを悩ませます。
かりにHPが最大であっても、満腹度がゼロになると、体力が一気に削られて、冒険が終了します。ゲームオーバー。回復策はおにぎり、パンなどです。
ハンガーノックの諸症状は手足のしびれ、脱力感、目まいなどです。つまり、シレンやトルネコのハラペコは完全にハンガーノックです。
で、シレンやトルネコはおにぎりやパンを食べた瞬間に元気になりますが、リアルなニンゲンはそうではありません。消化能力、代謝機能はまちまちです。
さいわい日本のチャリダー環境はぬるゲーです。自販機、コンビニ、商店があちらこちらに存在します。
『すごいハラペコ』てシンプルに捉えると、たやすく対策できます。学校の遠足のおやつはあまやかしではありません。だいじなエイドです。
脱水症状
『ハンガーノック』のわかりにくさのあとでは脱水症状の明快さが際立ちます。英語は”Dehydration”です。
イメージの伝わりやすさは対策の練りやすさです。脱水症状の解決法に首をかしげる人はいません。正解はこまめな水分補給です。
加えて、適度な塩分が必要です。処方的には水分と塩分を同時に摂取するのが理想的です。塩むすびを食べて、ドリンクを飲む。シンプルです。
そして、塩だけ、水だけの補給は脱水症状には逆効果です。
- 塩分摂取
- 腸液の濃度が上昇
- 浸透圧で腸壁から水ぶしゃー!
- おなかピーピー
難消化や非代謝の人工甘味料も同様の効果を引き起こします。
- 水分摂取
- 全身の体液が希薄化
- 身体の生理作用で濃度調節
- あせダラダラ
半透膜とか浸透圧とか、理科や家庭科の時間に習いますね。
睡眠不足
なんちゃってチャリダーの朝はふつうですが、いっぱしのサイクリストの朝は超早です。6時起き、5時起き、夜明け前スタートはめずらしくありません。
自転車乗りの早起きの訳は距離伸ばし、自動車対策、人手対策、早起きアピールです。早朝の都会の幹線の走りやすさはちょっとしたサーキットです。
オフロードもにたりよったりです。人気の身近なルートにはハイカーやトレイルランナーがわんさか押し寄せます。
やっぱし、登山家の朝は超早です。熱心な人は日の出を見に来ますし。
で、まじめな自転車乗りの朝はいよいよ前倒しになります。あげくに慢性的な睡眠不足がチャリ界の全体にはびこります。
現実問題、サイクリング中の体調不良の多くはごくごくシンプルな睡眠不足です。
4時間しか寝ずにハンガーノックや脱水症状を疑うのは奇怪なはなしです。ちゃんと寝ろ。