自転車乗りの悩みはどんなものでしょう? 予算、保管場所、服装、盗難、大型トラック、逆走おじさん、自転車レーンの少なさなどなどの諸問題があります。
クロス、ミニベロ、ロード、MTB、グラベルなどの遠乗りや長乗りではここに身体的なストレスないしダメージが付きまといます。
身体的な悩みのベスト3は手、膝、そして、尻のトラブルです。
とくに尻(股間)の不具合は自転車乗りの職業病的です。現実問題、プロライダーはケツの手入れを欠かしません。
尻のトラブルに直面すると、遠乗り・長乗りには途端に消極的になります。そして、サドル選びの幕が開きます。
しかし、サドルのフィッティングは靴並みに難しいものです。自分の足のサイズやタイプを意識する人は少なくありませんが、尻のそれを熟知する人は多くありません。
はて、実際におのれのケツのサイズを正確に言えます? 身体測定で計るのが目一杯です。ズボンを買うときには試着で現物合わせしちゃいますし。
で、ぼくはいろんなタイプの自転車でふつ乗り・長乗りを経験しまして、数種類の尻の痛みを体験しました。
そこから原因と対策を探っていきましょう。
尻の痛みの種類
自転車の尻の痛みは主に2種類です。
- 圧迫系=筋骨トラブル
- 擦れ系=皮膚トラブル
1はおなじみのやつです。スポーツバイクのサドルはママチャリのようにふかふかでもボヨンボヨンでもありません。
これの対極がフルカーボンのサドルです。
サドルからレールまでカーボン樹脂製です。クッション性はゼロです。フィーリングはそのまんまのプラスチックの板です。
さて、柔らかい座布団に座り続けるのと固いベンチに座る続けるの、どちらがラクちんで快適でしょう? 前者のがあきらかに楽ですね。
自転車初心者の尻はママチャリ式の座布団サドルしか知りません。未熟なケツです。
スポーツバイクにしばらく乗ると、体重移動や圧の分散の仕方を自然と習得します。「習うより慣れろ」です。
しかし、乗車の工夫や精神論には限度があります。尻の形や強度は十人十色です。一人一尻、同じ尻はこの世に二つとありません。マイヒップ・イズ・オンリーワン。
かりにそこそこ乗りなれても、サドルや服装との相性で痛みを感じます。毎日10km走るジョガーもシューズを変えたら、靴擦れをしちゃいかねません。
「おれの足にはアディダスのワイドタイプはOKだけど、ナイキのワイドタイプはなんかしっくり来ないなあ~。小指の外が靴擦れする~」
サドルの相性もこれと似ます。どこのブランドが合う、このモデルが合う。このモデルは合うけど、色と形が気に食わない…etcetc
なので、高いサドル=合うサドルじゃありません。高いサドルがふかふかサドルに劣る場合も少なくない。
股ずれの原因はサドルの合皮とコットンインナー?
2番目の痛みの種類は擦れ系です。これはサドルの固さや大きさに加えて、シートの素材やライダーのインナーにも由来します。
ぼくの自転車スタイルではこの擦れが尻トラブルの原因です。最近、それに気付きました。
見苦しいものを公開しましょう。マイ・ジャンク・ジーパンです。
これはLEVIS 501の黒です。薄伸びタイプやスキニータイプじゃありません。ドノーマルのドスタンダードのザ・がっちんジーパンです。
この丈夫なデニムのおまたがこんな惨状です。原因はチャリンコです。ざっと3000kmのサイクリングでこんな局部的消耗が起こります。
デニムはキャンパス、コットン地です。これは湿気を吸うと、べっちゃり張り付きます。ナイロンやポリエステルみたいに速乾しません。
サドルには通気性がありません。ふつうのウレタンナイロンの合成皮革のシートはとくにそうです。風は全く通りません。カーボンはただの板ですし。
天然革は多少の風を通します。しかも、なじんで伸びます。かちかちのキャッチャーミットがじょじょに手になじむみたいに。天然革の利点です。
でも、種類が極端に限られます。ぱっと思いつくのはブルックスばかりです。そして、手入れが特殊です。コロニルやサフィールなんかの革クリームでケアしましょう。
で、一度水気を含んだコットン生地はさっぱし乾きません。ズボンの中身の肉体は常時に汗をかき続けます。結果、インナーはずーっと蒸し風呂サウナです。
このしっとり生地を体重でサドルにぐいぐい押し付けながら何万回と小刻みに動かします。擦れ切れない方が不思議です、はい。
そして、ズボンの中のぼくらの天然革も同様のダメージを受け続けます。濡れ雑巾で何万回と皮膚を擦り続けられれば、容易に股ずれを起こしちゃいます。
股ずれのイメージ図です。100km越えでは高確率でピンクの部分がずるむけになります。
ジーパンと同じ理由でコットン製のパンツも股ずれの原因です。皮膚にべちゃっと張りついて、ひとペダルごとに細胞をすり減らしてくれます。
皮膚はジーパンと違って、自己再生しますけどね。磨耗速度が再生速度を上回ると、生肉が露出します。
「じきに慣れる、じきに慣れる・・・ストイック、ストイック・・・」
この妙な狂信が過ぎると、股ずれがカサブタになって、タコや色素沈着やケロイドになります。
ぼくの体感から慣れの距離と時期の目安は500km、2ヶ月です。それで痛みを覚えるなら、サドル交換や服装チェンジを検討しましょう。
カーボンサドルは股ずれしにくい?
さて、カーボンサドルはクッション的には最悪ですが、ノーマルな合皮よりスリッピーです。表面はつるつるです。
このカーボンサドルの特性は2番目の擦れ系股ずれの尻痛みに悩むぼくには一種の利点です。固さの短所よりすべりの良さの長所が上回ります。
大阪-有馬の往復60km、大阪-嵐山の往復100kmをこのカーボンサドルとジーパンでやりましたが、合皮系のサドルより尻のストレスを感じなかった。
とくに嵐山のときにはインナーをナイロン製のものにしました。サドルとズボン、ズボンとインナー、インナーと皮膚の滑りと渇きがそれぞれよくなって、股ずれがすこし収まりました、おそらく。
一方の新車のMTBのサドルのシートは合皮系です。
ゲル入りのコンフォートよりのスポーツサドルです。クッション性はカーボンサドルより上です。が、こいつに乗ると20km・1時間ではやばや尻のストレスを感じます。
サドル座面の細かいホールが通気の工夫ですけども、むれむれのデニム地の前では焼け石に水です。ケツ周りの発汗量が排出量より上回ります。
おまけにぼくはこれで30度の夏日の自走ビワイチ310kmに挑戦しました。
腕は日焼けでひりひり、尻は股ずれでずるずるです。風呂で悶絶しました、ははは。
と、冗談抜きに股ずれは靴擦れと同じくパフォーマンスに直結します。ぼくは一日目の半ばから尻ストレスを感じはじめて、全工程の3割を立ちこぎで行きましたね。
股ずれがひどくなると、ペダリングなしのただの座りさえが辛くなります。常時立ちっぱライドは過酷ですぜ~。手首の負担が多くなりますし。さいわいぶじに帰還できましたけど。
ミニベロのカーボンサドルを貰うか、天然革を買ってきてシートのDIY張替えに挑戦するかな?
とにかく、コットン製の服装と合皮シートのサドルの相性は最悪です。
「やわらかめのサドルにしても、尻の痛みを解消できないよ~、うえーん」
て人はサドルの固さやおのれのメンタルを疑う前に擦れ系痛みの原因をチェックしましょう。まず、チャリ後にケツ周りをスマホで写メしましょう。上のイメージみたいじゃありません?
じゃあ、はて、インナーが綿100%じゃありませんか? ジーパン履きじゃありません? 汗っかきじゃありませんけ? はい、皮膚トラブル、股ずれです。
この際にノーパンかナイロンパンツにチェンジしてみますかー。
へ、ジーパンでチャリに乗るな? いや、リーバイスの501とエドウィンの503はわての皮膚ですから、生皮ですから!