自転車の外装変速機は『ディレイラー』と言われます。アルファベットの綴りは”derailleur”です。英語系でなく、フランス語系の単語です。
- de=否定や反対の接頭辞
- rail=レール
- eur=するもの、する人の接尾辞
derailleur=脱線機≒変速機となります。
Derailleur Hanger
で、このディレイラーの取り付け金具がディレイラーハンガーです。略称はハンガー、一部ではテールフックです。まれにディレハン。
ハンガーはフレームの付属品
最近のスポーツバイクのディレイラーハンガーは別個のアタッチメント式の1ピースのパーツです。基本的にフレームの付属品です。
ルイガノジェダイのハンガーです。
謎ロードバイクのハンガーです。
KONA HONZOのハンガーです。
フレームのエンド部分の形状は車体ごとに異なります。ディレイラーハンガーの形状もこれに準じます。ねじの数、大きさ、位置、ばらばらです。
フレームエンドのおまもり
大昔にはこのハンガー部分はフレームの一部でした。この場合、そこが破損すると、フレームが終了します。しかも、ハンガーの強度は車体の中では最悪です。
で、耐久性の観点から現在の取り外し式のアタッチメントタイプのハンガーが主流になりました。部位の貧弱さはしっかり受け継がれますが。
むしろ、これがトカゲのしっぽ切りのように折れて、ねじれて、ひんまがって、フレームへのダメージを最小限にとどめます。
つまり、ハンガーはディレイラーの取り付け金具兼フレームエンドのおまもりです。そして、折れるときにはいさぎよくバキ!っと折れます。
修理は不可
こういうアルミのスモールパーツは修復には不向きです。ためしに溶接工の友達に聞いたら、「アルミ、むり、むずい」と断られました。
ぼくもパテや接着剤や樹脂でDIYに挑みましたが、ことごとく失敗しました。ホルツのアルミパテは補強にはならぬ!
もちろん、この折れたハンガーは専用品です。費用2000円~、納期2週間~が調達の目安です。
レアなモデル、古いモデルのディレイラーハンガーの再入手はさらにめんどくさくなります。
その変速不調はハンガーの変形?
こんなふうに「折れた! 砕けた! もげた!」は珍しいことではありません。が、より日常的に多発するのがディレイラーハンガーの変形です。
そして、これは完全破断のように表面化せず、こそこそと水面下で自転車の機能を低下させます。
赤い線がトップギアの縦軸です。みごとにプーリーとケージが内側へずれます。チェーンは2速にありますが、シフターは1速です。
ディレイラーは指定の変速領域でしか動きません。もともとの取り付け位置=ハンガー=座標がずれると、その上のメカのインデックスも同じ間隔でずれます。
さいわいにこのずれはクイック取付式の簡易型ハンガーの緩みでした。
ハンガーの直し方
ディレイラーハンガーの破損や変形の99%はノーマルタイプの物理攻撃です。カーボンリムのような熱変形、ゴムグリップのような加水分解ではありません。
ケージの直し方は変形の逆の手順となります。シンプルにぐいぐいやります。おくゆかしい言葉では「矯める」です。
専用工具はそのまんまなディレイラーハンガー調整ツールです。
ディレイラーを外して、これをハンガーに取り付けて、変形を測定し、ゆがみやまがりを直します。目視や直観より正確な数値が出ます。
が、結局、矯めは手作業になります。さらに商品説明のただし書きに「誤差が大きい場合、交換式のディレーラーハンガーであれば交換して下さい」という一文があります。
とどのつまり、交換がベターです。この工具は業務用か完璧主義者用でしょう。
まがる、まがるよ、ハンガーはまがる
こんな替え歌が思いつくほどにディレイラーハンガーはいとも簡単に曲がります。事例をさらっと列挙しましょう。
- 落車で曲がる
- 転倒で曲がる
- 整備中の1ミスで曲がる
- 壁ドンで曲がる
- 立てかけ中に自重で曲がる
- となりのチャリの重みで曲がる
- 輪行袋の内圧で曲がる
- 車のゆれで曲がる
- 船のゆれで曲がる
- 固定のひもで曲がる
- 養生のテープで曲がる
はい、これはもう宿命です。ペダルは回すもの、ハンガーは曲がるものです。
緊急時にはエマージェンシーハンガー
予備ハンガー待ち、型番不明、専用品の終売、ライド中の応急処置、そんな場面にはエマージェンシーハンガーがべんりです。
1000円ちょっとで買えて、クイックリリース式のフレームにはおおむね使えます。