西暦2023年、令和5年の世は史上空前の電動キックボードブームです。
リニアが某県知事のために停滞し、空飛ぶバイクが某悪徳社長のおかげで経営的に墜落し、中古車が某ブラック街路樹伐採企業のせいで混乱する暗黒時代にこの新顔は割と順調に浸透します。
サイクリングと自転車弄りをたしなむ趣味人のぼくがチャリダー的感覚からこのニューカマーの実力をガチで試します。
電動キックボードの走行距離を実測しよう
- カタログスペック
- ホームページの説明
- メディアのレビュー
これらは世界七あてにならんものの3トップです。その他、この眉唾G7には『一生のお願い』や『明日から本気出す』などの列強が連なります。
ぼくの愛機のYADEA KS6 PRO JPの最大航続距離はカタログでは55km、取扱説明書では60kmです。経験上、ダブルスタンダードや二重記載には小さい方が有効です。
バッテリー切れは詰み
電動キックボードや電動モペットでバッテリー切れは詰みです。王手飛車取り。
仮に充電器を携行しても、旧来のガソリンモビリティのように5分10分の注油でリカバリーできません。
このYADEAのフルチャージの目安は5時間です。300分で100%、30分で10%です。この時間、マクドやイートインで厚かましく場所取りして充電できます?
ということで、電動キックボードで遠出をするならば、バッテリー残量に注意して、50%以上で折り返さなければなりません。
キックボードを輪行するとしても
一応、自転車と同じく袋に包んで機材を隠せば電車で輪行できます。その状態では駅員さんの目にはボードか折り畳み自転車かその他のスポーツ用品かは分かりません。
駅員「その袋の中身は特定小型原付の電動キックボードですね? それは原付ですから、うちの会社では規定で無理です!」
もうエスパーです。え、ナンバープレートがちらっと見えたん?
しかも、キックボードの折り畳み機構は簡易で、折り畳み自転車みたいにコンパクトになりません。
たいていの車両のボード部分は折れません。車輪は外れません。縦100cm、横50cmは確定です。実際、これを室内で取り回すのには非常に苦労します。
別項の注意点の詳細です。→電動キックボードを買うときの注意点と問題点 性能より100倍大事な3つのこと
で、軽量なものが15kg前後、本格的なものが20kg強です。これを駅口からプラットフォームまで運ぶのは相当な重労働です。普通に機材搬入ですよ。
電動モビリティの快適な運用にはバッテリー管理が不可欠です。その延長で正味の実走距離、真実の性能の把握が超重要です。
ちなみに人力の速度の目安は手押し車モードで時速6km、けんけん乗りモードで時速9kmです。後者は北海道一周中の自転車のメカトラの際に判明しました。
大阪から神戸で走行距離を実測してみた
電動キックボードの得意科目は自転車の街乗りやゆるいサイクリングとぴったり被ります。うちのメンバーでは折り畳み自転車がもろに影響を受けます。
こいつで良く行くところへ電動キックボードで行けば、真実の走行性能の検証と人力自転車との比較を兼ねられます。
距離と方角の分かりやすさから神戸方面へのルートが採用されました。うちから武庫川まで10km、西宮まで15km、芦屋まで20km、神戸三宮まで30km、明石まで50kmです。
電動キックボードの燃費
スタートは自宅です。前夜から充電でバッテリーはパンパン100%です。で、これが4km先の猪名川の下流の戸ノ内橋のおおぞら広場で90%なりました。
アプリはYADEAの公式のものです。Bluetoothで車体と同期して、アクティベート、バッテリー残量の確認、電動ロックなどの操作を行えます。
で、この最初の区間の燃費は400m/1%になりました。これは前夜の大阪市内ぶらり旅の500m/1%より低パです。
理由は逆風と傾斜でしょうか。大阪から神戸方面の阪神間はおなじみ六甲おろしの本拠地です。当日は常時アゲインスト4mくらいでした。タイガース優勝感謝です。
また、大阪から神戸へはほんの少しの微細な上り基調です。十中八九、サイクリングでは行きより帰りが速くなります。
逆風や上り坂は電動キックボードの速度に影響しませんが、バッテリーの消耗を早めます。この燃費の低下はとくに変ではありません。
『荷物を減らす』とか『体の空気抵抗を下げる』みたいな工夫は自転車ほどに効果的ではありません。それより回生ブレーキの設定とか走行モードの見直しが有効でしょう。
折り返しは芦屋
今回のバッテリー100%チャレンジはYouTubeの動画撮影と同時並行です。むしろ、この記事はそちらのノベライズだ。おかげで時間と距離とバッテリーの残量が詳細に残ります。
- 実走距離11kmの武庫川河川敷西側で残67%
- 実走距離16.6kmの夙川駅前で残60%
- 実走距離19.8kmの芦屋川土手で51%
距離はGoogleマップベースで、多少の迂回や寄り道を含みます。
猪名川の公園のところでオープニングを撮りましたが、そこで「折り返しは芦屋くらいかな~」とぽろっと発言しました。結果、見立ての通りでご満悦です。
このまま神戸明石まで行って、「ここで電池が切れた! 帰れま10!」はネタ的にはありですが、体力的にはなしです。
100均でバイクカバーを買って電車で帰る? 明石駅の乗り場はたしか2階です。階段がもう嫌だわ。
ということで、芦屋川の交差点で必殺の二段階右折を発動し、国道2号線で大阪方面へ折り返します。
バッテリー切れからの奇跡の走行
さて、前半の燃費ではカタログスペックの55kmの達成は無理です。しかし、前述の理由で帰路はバッテリーには優しくなります、六甲颪に颯爽と。
しかしながら、特定小型原付は最高時速20kmで頭打ちになりますから、自転車みたいに速くなりません。追い風のママチャリにはギリ競り負けます。
他方、電池は長持ちします。OPを撮影したおおぞら広場で18%、ほぼ帰宅の38km地点で14%です。
何故かアプリの数値が20%以下に落ちてから、燃費が異常に良くなりました。終盤のコスパは900m/1%です。
なんで? 電池が温まったから? それか、バッテリー切れを防ぐためにディスプレーやアプリの表示と実際のバッテリ残量をあえて同期しない配慮でしょうか?
実際、アプリの電池残量が0%になっても、4km強の走行が可能でした。
ここが十三病院前です。ここから十三駅前→国道176号線→庄内駅前=4.7kmです。
あと、バッテリーはばつんとOFFになりません。じわじわパワーが減って、速度が遅くなり、フルスロットルが10km以下になります。
結局、庄内駅前でゴールとしましたが、帰宅まで車体のディスプレーは生存しました。
電動キックボードの正味の実走の結果
今回の実験ライドのルートです。
52.8kmでした。淀川区のうろうろは一回目の帰宅後のエクストラステージです。ここが意外に伸びて、50kmオーバーが現実化しました。
公称55km、実走53kmは合格点です。ぼくの予想は45kmでした。KS6 PROのカタログスペックは鯖読みではなかった!
本格派のYADEA KS6 PRO JPの実走データがこうです。軽量型はこれの半分になります。→電動キックボードのおすすめモデル 買ってはいけない商品の特徴
タイパはどうです?
実走の最中の画像と動画から現地時刻と走行時間が分かります。
- 一回目のおおぞら広場の動画の時刻12:03:35
- 二回目のおおぞら広場の15:25:29
ここから芦屋川の往復が約32km、武庫川と芦屋川で固定カメラの撮影がそれぞれで10分、すなわち正味の走行時間は32km/182分です。
このルートでこの時間はほんとにいつもの街乗り自転車ペースと変わりません。電動アシストのおばちゃんがライドの相方です。
こちらは信号待ちからのスタートダッシュで先行しますが、中間でじわじわ追い抜かれ、つぎの信号に仲良く引っ掛かります。阪神間の国道2号線あるあるです。
電動小型原付の速度は20kmで頭打ちしますから、『鬼漕ぎで次の信号をギリ越えてタイムを縮める』みたいな作戦は不可です。体力がものを言わない。遅刻は気合でどうにもならない。
平地では20km以上の速度は無理です。道中の下り坂で23km、24kmは何回かありました。それ以外はずーっと20kmです。
反面、安定感は抜群です。最初の数kmのペースで目的地への到着時間がだいたい分かります。
電動キックボードの走行距離のまとめ
特定小型原付の中では本格派のYADEA KS6 PRO JPのカタログスペックは55-60kmで、大阪-神戸間の実走+アルファは53kmでした。誤差4%は96点、超優等生です。
ぼくの実機はアプリの電池残量0%の状態からしばらく走りました。おそらく後半の粘り強さはバッテリーの表示を見る乗り手のを気持ちを焦らせないための工夫です。焦りと不安な事故の下ですし。
体力はサイクリングより圧倒的に楽ですし、巡行速度は非常に安定ですが、走行時間は早くなりません。ペダル自転車や電動ママチャリペースです。街乗りサイクリストのぼくが断言します。
電動キックボードで峠攻めの記事はこちらです。→電動キックボードの登坂性能をロードバイクと比較してみる