Shimanoがついに新型XTRを発表しました。オフロードの最上位のグループセットが南大阪の釣具屋さんのはじめての12速コンポになります。おめでとう、脱11速!
一時期、Dura Aceのマイナーチェンジのながれとシマノのマイペースぷりから万が一の11速継続路線が関係者各位でざわざわ危惧されましたが、めでたくXTRが12速になりました。
おおきに、シマノはん!
XTR M9100のおさらい
今回のXTRのアップデは大方の予想と希望のとおりです。12速、フロントシングル、トップ小ギア、超ワイドレシオ、BOOST、ダイレクトマウント、4ピストンブレーキが順当に来ました。
てか、まるまるSRAMの後追いじゃねーか!
ながらく追われる立場だったシマノが追う立場になるのはひさびさのことです。SRAM vs Shimanoのシェアとイニシアチブの奪い合いがますますヒートアップします。
ちなみに新型XTR M9100の概要です。
- 基本は1×12速 2×11はオプション
- トップギアが10Tに
- 最大10-51Tのメガレシオカセット
- ダイレクトマウントクランク
- 4ピストンブレーキ追加
- 24mmシャフトは継続
- BOOST対応
- Super BOOST+も視野に
- DTフレンドリー
- ローンチに電動は見当たらない
- ドロッパーポストレバー
- ラチェットが新設計Scylenceでしずかハブ!
- フリーボディが専用品HG+に!!
- 完組XTRホイールがない!!!
- ビジュアルがシマノぽくない!!!!!!
黒字の項目は順当です。ピンクが予想外です。Di2の消滅と完組ホイールの撤廃はおどろきです。で、総括は『クランクとハブの超アップデート』です。
とにかく、これでようやく変速御三家の12速が出そろいます。また、準レギュラーのmicroShiftはシマノの下位互換です。元ネタの12速化にともなって、12速の製品を順次に投入しましょう。
2020年デュラエースの前にXT
とすると、11速のカウントダウンの音がひたひたと忍び寄ります。FIFA W杯 2018 ロシア大会が終われば、つぎのマイルストーンのSH-R9200までのリミットは二年を切ります。
てか、もう東京オリンピックじゃねーか! おもてなし
しかしながら、シマノの二つ目の12速コンポの栄冠は次期デュラエースの上にはかがやきません。R9200 12sコンポはシマノの三番目か4番目の12速コンポになりましょう。
最上位シリーズのアップデの翌年には2ndグレードのリニューアルが来ます。で、2019年は第二位のMTBコンポShimano DEORE XT-M8100(仮)と新型Tiagra R6000(仮)のターンです。
TIAGRA R6000は10速をキープします。これが11速化してしまうと、10速のロードコンポがN/Aになってしまいますから。
XT M8100はふつうに12速化します。XTの下には3rdグレードのSLXがあります。11速はもう二年ばかし健在です。
・・・て、こんなふうにできたてほやほやの新型XTR M9100はイマジネーションないし妄想をかきたてます。
世間の本命はXT
ロードコンポのデュラエースは大人気御礼です。ねこもしゃくしも「デュラ! ヂュラ! ヅラ! ハフハフハフ!」て条件反射的にはしゃぎます。
フルセットを買えないパンピーの庶民は安価なBBをデュラエース化して、「うちのチャリがデュラになった!」てなみだぐましい努力をします。
少し前にシマノ純正グリスの『デュラグリス』は名前の改定で『プレミアムグリス』になりまして、売り上げをがくんと落としました。
デュラエースのブランディングと偶像化はそのようなレベルです。これは最高峰スピニングリールのステラシリーズと共通します。
ちなみにステラのキャッチコピーは『良質な巻き心地』です。モデルチェンジのたびに数十パーセントの巻き心地UP!が起こります。
シンクロシフトが持ち腐れる
うらはらにオフロードコンポのXTRの人気はビミョーです。機械式、Di2、いずれがぱっとしません。
MTBのトレンドは圧倒的に1xフロントシングルです。で、このスタイルの提唱者はアメリカの自転車パーツメーカーのSRAM社です。
機械式12速、BOOST、超軽量パーツ、メガワイドレシオetc…今日のMTBのイニシアチブは完全にスラムの手の内にあります。
極論、シカゴのSRAMはフロントシングル屋さんで、サカイのShimanoはフロントマルチ屋さんです。電動Di2のうりのひとつがセミオートマ変速の『シンクロシフト』です。
このシステムのおかげでフロントとリアのメカが半自動的にベターなギア比に切り替わります。はんざつなシフトの操作がすっきりします。
しかしながら、シンクロシフトでシンクロするフロントディレイラーが最近のMTBにはまれです。そもそもFD台座付きのフレームが少数派です。
この太さのシートチューブにバンドタイプが付くか?
ミドルグレード以上のフレーム、完成車、いずれがフロントシングルばかりです。2xや3xはすでに『特別』な変速システムになります。
ジャンル的にはクロスカントリーやトレイルの一部の車体がフロントマルチを採用します。が、これもあえての選択、通好みのにおいが色濃くただよいます。
山では無力なレッテル
そんなわけでシマノのおはこのフロント変速やDi2の威光がオフロードシーンでは半減します。そして、最上位の付加価値、質感、ステータス、見栄などは自然の前ではちっぽけなものです。
よごれやガリは日常茶飯事ですし、木や岩のHIT!やCRASH!!での一発KOすらがめずらしいはなしじゃありません。最上位モデルの軽さはもろさの裏返しです。
てことで、ガシガシ使えるDEORE XTやSLXの方がちまたでは人気です。さらに本流のSRAMのパーツのが人気です。GX EAGLEのセットを使えば、5万で12速化できちゃいますし。
それから、旧XTR 9000のクランクが世にまれなダサさでした。むき出しのスパイダーアームのビジュアルがこんなざまです
この致命的なルックスのおかげで気軽に1xモードにできません。最も高位のクランクが最も醜悪だ、て悲しい事実がぼくとXTRの思い出です。
XTやSLXはこんなじゃありません。シマノらしいふつうのビジュアルです。なぜかXTRだけがこのていたらくです。2014年の販売時に1xのいきおいを見誤ったか?
E-bikeはXT
XTのもうひとつの注目点はE-bikeとの親和性です。シマノは電動アシストユニットのSTEPSで電動スポーツバイク市場のシェアをうかがいます。
このヨーロッパ版STEPSのドライブはXTグレードになります。シマノのE-bikeのチャートにXTRの9000台の型番は見当たりません。8000と6000です。
この電動アシストユニット用のクランクセットはFC-E8000です。リアディレイラーはM8000系=現行XTになります。
E-bikeの種目化は着々と進みますが、現時点でこの分野は完全にホビーです。最上位=競技用のXTRは無用の長物です。
かりに来年以降にE-bikeの公式レースがはじまれば、ボトムアップの後出し補完でXTRグレードのSTEPSコンポはありえます。同時に電動12速復活! です。
おまけにE-bikeのライバルはSRAMでなくて、電動工具屋のBoschや発動機屋のYAMAHA、電池屋のパナソニックとかです。そうそうたるモノづくり企業がライバルです。
最終的には軽量小型のバッテリーユニットと快適便利なソフトウェアとクールなコンパネを作れるところが勝ち残りましょう。
シマノはどうでしょうか? アクションカメラのソフトの評判や純正パワーメーターの出荷遅れ、Di2の管理アプリやPCソフトの出来をはためから見聞きすると・・・
うーん、コメントに困ります、ははは。
くだんのようにXTRのローンチの発表にはDi2が見当たりません。シンクロシフトが売りになりませんから。オフロードのDi2は電動アシスト専用の変速システムになるかも。
世間の注目はSRAM EAGLE eTapの方です。あと、eTapとDi2の技術提携のはなしがちらほら出ます。でも、どっちがソフトを統合するよ?
機能差はなし、リングがコンパチに
新型XTR M9100はほんとの本気のフルモデルチェンジです。変速数が上がりましたし、スパイダーアームが失せましたし、1xがデフォルトになりましたし、フリーボディが変わりました。
新型XTの機能面はこれに従います。変速のなめらかさはどんぐりの背比べでしょう。そこはもう重要な争点ではありません。
けんちょなちがいは質感、重量、価格、原産国です。日本製のXTRはたしかにてっかてかです。ピカールでゴシゴシ磨いても、こんなテカテカツヤツヤの鏡面仕上げにはできません。
一方、純粋な形状の差別化はかんたんじゃありません。リングとスパイダーなしのアームのルックスはほんとにザ・棒です。
ロゴと面取りでアクセントを作るのがせいぜいです。しかも、シマノは白黒のカラバリしかしません。たまーに差し色で金色が入ります。
むしろ、リングのアーム部分の肉抜きの方がビジュアル面には貢献します。
今度のShimanoのリングの固定方式は新型の専用のロックリングとマウントです。シマノ純正のリングのみがOKです。
でも、シマノのナローワイド技術が未知数です。製品画像の歯先のふんいきは本家のSRAMのレベルには至りません。ナローワイドのオーラがない。
上記のabsoluteBlackやWolftoothの対応に期待しましょう。この二社のナローワイドは甲乙つけがたしです。
で、おそらくXTR以降のシマノクランクのダイレクトマウントの形状は統一化されます。
「XTRとXTとSLXのリングの互換性がない!」
てのがお笑い草になります、きっと。M9000のリングは専用品だったなあ・・・アームの4つのカバーさえがばらばらの形状だった、パズルか。
さらば、完組ホイール!
XTRのいちばんのサプライズは完組ホイールの撤廃です。オフィシャルのチャートに”WH”の型番が見当たりません。海外メディアにもホイールの情報は皆無です。
オンロードのシマノ完組ホイールは人気です。鉄下駄RS010、旧アルテグラホイール、デュラエースC24は話題によく上ります。
他方、オフロードのシマノホイールは超マイナーです。完成車にはほぼ付かない。海外ストアのCRCやJenson USAのバイクを見ても、”Shimano”の文字を見つけられません。
オフロードの完組の定番はDT SWISS、MAVIC、REYNOLDS、STAN’S、SPANK、INDUSTRY NINE、RACEFACE、WTB、e*thirteenなどです。Shimanoはランク外です。
現時点でオフロードの完組ホイールの人気ベスト1はDT SWISSです。リム、ハブ、スポークの総合力が高得点です。手ごろなBOOSTホイールからレース用のフラッグシップまで揃います。
シマノは完組ホイールを販売しますけど、本質的には堺のしにせのハブ屋さんです。リムやスポークは外注です、REYNOLDSとかSAPIMとか。
で、ひとおもいに完組ホイールを止めて、本業のハブを全力でアップデートする。これはロードホイールの型番の意味不明な改定やグレードの分裂よりはるかに好印象です。
スラムがすでに『MTBのフロントメカ作りません』宣言をします。シマノさえがこのくらいの英断をしないと、激動のオフロードシーンに付いていけません。
そんなわけでDEORE XT WH-M8100の芽ははやばや潰えました、ちーん。さらば、オフロードのシマノ完組ホイール! これからは手組の時代です。
でも、新型のハブとフリーボディは相当な革命です。ラチェットの静音化は個人的に高ポイントです。
DEORE XT FC-M8100のクランク予想図
さて、しめに次期DEORE XTクランクの予想図を描きましょう。新型XTR FC-M9100のビジュアルと旧XT SH-M8000を参考にして、イメージをふくらませます。
えーい!
はい、マットなのっぺりしたアルミののべぼうが生まれました。平面図では区別化がさらにむずかしくなります。正直、ダイレクトマウントクランクのビジュアルはリングによりけりです。
ためしにabsoluteBlack風のリングをセットしましょうか。えーい!
ほおら、一気にはなやかさが増しました。絶対にこの形のシマノダイレクトマウント用リングは出ますよ。absoluteBlackのアイコン的デザインですから。
で、これを見てから旧XTRのカバーなしモードをかえりみると、トレンドの移り変わりを感じずにいられません。てか、XTR 9000のクランクはふつうに黒歴史です、ははは。
そして、ありがとう、さようなら、フロントメカ。