自転車のパーツは個性的です。メジャーなサドルやペダルからマイナーなBBやディレイラーハンガーまでイロイロです。さらに虫ゴム、ヤグラみたいな日本独自の呼び名もあります。
また、各自転車ブランドがテキトーにわんわん新規格を出しちゃいますから、同じ部位のパーツの互換性や統一性はほんまにまちまちです。カオスで多彩です。
ギョーカイ関係者、とくに整備をするエンド小売販売店はこの状況をたびたび嘆きます。
「ねじ切り・・・」
「OSヘッドセット・・・」
「外装ケーブル・・・」
てため息交じりの悲鳴が津々浦々で聞こえます。
でも、個人的には各ブランドの新規格の乱立はおもしろいものです。リアルパズルゲームです。このおもしろさは自作PCの組み立てによく似ます。趣味にはGOOD! 仕事にはBAD!です。
じゃあ、ぼくがDIYカスタムのなかで出会ったマイナーな自転車パーツをざらっと紹介しましょう。みなさんはどれだけ答えられるう?
マイナー自転車パーツ10選
ボトムブラケット
マイナー部門のメジャー賞はボトムブラケットです。通称BBです。自転車カスタム初心者に立ちはだかる最初の壁です。
一般人はめったにお目にかかりません。けっこうなチャリ好きも手間を嫌って、人任せにしちゃいます。
ライド派とカスタム派の分かれ目がこのBBのメンテです。年一専門工具の調達の最初の一歩でもあります。BBを制するものがDIYを制します。
そして、このBBは乱立規格の王者です。ねじ切り、プレスフィット、ねじ+圧入、BSA、ITA、PF30、bb30、bb86、bb92、386 EVO、bbright、アメリカンBB、ユーロBB、スパニッシュBB、エキセントリックBB…etcetc
最近の注目株はThreadFit T47ですかね。クリスキングとかがします。ねじ切り+圧入のハイブリッド式です。DHのメタルフレームとかが対象ですかねー。
BBの交換はまだしもですが、フレーム組み立てからBBを調達するのはたいへんです。
わん
はい、わんです。カタカナ表記はワンです。漢字は碗、英語はCupです。続けて読むと『わんかっぷ』、つまり、大関です。
実物です。
これはヘッドセットの下わんです。上のは上わんです。おわん型のパーツはことごとく「わん」と呼ばれます。
これは圧入BBの右わんと左わんです。
タケノコバネ
タケノコバネはクリックリリースの一部です。
クイックリリースのシャフトのエンドの内側に入ります。レバー側とキャップ側に1つずつ、計2個です。
このタケノコバネの役目はクイックリリースの両エンドの押し出しです。このバネがないと、エンド部分が外に押し出されません。
結果、フレームエンドとフォークエンドからのホイールの着脱が一手間になります。重要なサポート役です。
欠点は強度と失踪癖です。見ての通りの細いバネです。噛む・挟むでかんたんに変形します。そして、たまにビヨーンとどこかに失踪します。
オリーブ
オリーブは油圧ディスクブレーキのストッパーのようなものです。
オリーブの実みたいだからオリーブです。これは解放状態です。右の金ぴかはコネクターインサートです。右から滴るのはオリーブオイルでなく、DOTです。
ボルトをしめしめすると、固定状態になって、よりオリーブぽくなります。
バナナ
食い物つづきです。バナナはおやつに入りますか? いいえ、高栄養価のバナナはメインになりえます。おやつじゃありません。わーいわーい!
じゃあ、自転車のバナナは以下の画像にあります。
はい、その形状で正体が知れます。ぐいっとカーブしたインナーケーブルのガイドパイプです。Vブレーキのパーツの一部です。クロスバイクやミニベロでおなじみです。
で、クロスバイクやミニベロはよく外置き野ざらしにされます。じゃあ、バナナは遠からずこうなります。
さっびさび!
こいつはほんまに速攻でサビます。みすぼらしさがひとしおです。アルミのアルマイト系のやつを買いましょう。か、サビ止めを塗るか。
虫
一転、今度は虫です。これは俗称スラングです。虫ゴムの『虫』の部分です。
ものはこちらです。
タイヤチューブやチューブレスリムのバルブのバルブコアのことです。これの俗称が『虫』です。自動車やオートバイのタイヤバルブのコアもこう称されます。
その『虫』に被せるゴムが虫ゴムです。虫ゴムはこれです。
英式バルブの逆流防止用のかませです。この画像のように穴が空くと、交換時期です。100円ショップで調達しましょう。
虫ゴムの正式名称は虫ゴムみたいです、ははは。
スパイダー
虫のつぎはスパイダーです。また、続き物だあ? いえいえ、クモはノー昆虫ですからあ! でも、古典的解釈では完全に虫です。漢字が蜘蛛ですもの。虫ではないけど、蟲ではあります。
スパイダーないしスパイダーアームはクランクの一部です。
蜘蛛てよりヒトデに見えますが、リングの土台がスパイダーと称されます。これはセパレート型です。このモデルの専用品です。六角ボルトでしめしめします。
レデューサー
レデューサーないしリデューサーです。
リアサスの取り付け穴に嵌めるスペーサーです。これがレデューサーです。このなかの受け部のブッシュみたいなパーツはDUです。これはマニアックすぎるか~。
MTBブームがネット普及前のことですから、オフロード系機材の情報ははたっと少なくなります。ロード機材のログは腐るほど有り余りますけど。
キーエクスパンダー
キーエクスパンダーはとあるパーツの正式名称です。ものです。
はい、カーボンコラム用のマルチプレッシャーアンカーです。が、『マルチプレッシャーアンカー』は商品名であって、パーツ名じゃありません。KUWAHARAかHIRAMEの商標です、たしか。
海外で探すときにはKey expanderやtop cap compressorで検索しましょう。
ちなみに金属コラムに圧入するのスターファングルナットはStar fangled nutです。過去系のfangledが正解です。
XDドライバー
「XDドライバー!」
と勇者王檜山ボイスで熱く叫んでしまいそうなパーツの正体はアメリカSRAM発のフリーボディのことです。
通常のShimano/SRAMのフリーとはぜんぜん違います。シマノの小径車向けコンポ『カプレオ』の独自フリーがこれに似ます。さきっぽがオフセットして、小さくなる。
この形状のおかげでトップギアを11Tより小さくできます。最小は社外品の9Tです。SRAM純正ののXD用のカセットは全部10T~です
ぼく的には8Tや7Tもありです。11Tと9Tではギア比が20%も違います。ほぼ二枚分です。もう別物です。
ジャイロ
ジャイロ・ツェペリはネアポリス生まれの鉄球使いです。ジョジョ第7部の主人公のひとりです。第2部のシーザー・ツェペリの一巡後の宇宙の生まれ変わりです。
で、自転車パーツのジャイロはBMXの特殊なリアブレーキシステムのことです。トリックでハンドルを何回もぐるぐる回せるのはこのジャイロシステムのおかげです。
構造的には・・・文章で説明するのはまあまあたいへんです。断面イメージ図で。中央の半透明がフォークコラムです。4個あるのはブレーキケーブル、ピンクがジャイロの本体です。
ジャイロの上側のプレートはノンブレーキではフリー状態です。ハンドル・ステム連動でくるくる回ります。
で、右図のようにブレーキがかかると、上プレートが仮ワイヤーに引っ張られて固定、下プレートと地続きの中筒が上プレートに引っ張られて固定、下プレートが本ワイヤーを引っ張ってブレーキキャリパーを引きます。
実際のパーツの構成は上下プレートと中プレートの3ピースです。中プレートが一体型ですから、正味4ピース、4枚重ねです。なかなかヤヤコシイ機構です。