あこがれのロードバイクがうちにやって来た!

うきうきでこのマシーンにまたがって1時間、はたまた30分、いやいや15分でもう来るか? あの異変が?
そう、楽しいサイクリングが苦行へと変わります。
お尻が痛い・・・
自転車第一関門 尻の痛み
鋭い痛み、鈍い痺れ、漠然とした違和感。ペダルを回すたびに顔をしかめ、サドルの上でさらなる地獄の責め苦に耐える。それがロードバイク初心者の通過儀礼です。
「サドルが高すぎるのか?」
「パンツ?」
「そもそもこの肉体がこの器具に向かない?」
尻の痛みから自転車性存在理由疑念発生まで、これは完全なるあるあるです。
根本的な解決方法は存在しません。緩和とごまかしがせいぜいです。そして、その気休めさえが「慣れろ」の根性論では成立しません。
自転車の尻の痛みは物理と姿勢のミスマッチの結果です。
痛みの正体
自転車のお尻の痛みは二系統に分かれます。
一つ目は「坐骨の痛み」です。座骨はお尻の下のゴリゴリの骨です。これの痛みはシンプルに圧の一点集中のたまものです。
体重で座骨をサドルにぎゅうぎゅう押し付けると、痛みやストレスを感じる。当たり前です。
二つ目は「軟部組織の痛み」です。こちらはさらに深刻です。股間、尿道、会陰部。これらはゴリゴリの骨ではありません。居酒屋のお通しを思い出しましょう。コリコリです。
ここのしびれや痛みは危険信号です。神経と欠陥の危機のアラートだ。実際、自転車乗りのデリケートゾーンの発病率は一般人より大です。
で、初心者の多くはこの二つを混合して、『尻の痛み』で片づけてしまいます。
特効薬はサドルよりパンツ
初心者は自転車本体、自転車パーツには金を掛けても、ウェアには財布を絞ります。しかし、ここが盲点です。
良い部品、高い自転車、高級パーツは競技寄りです。ことさらにロードバイクのギアはそうです。価格が快適性には反映されない。
むしろ、高級機材はパフォーマンスや機能に特化して、よりピーキーに、タイトに、ハードになります。
たとえば、カーボンサドルは軽量ですが、座り心地はただのカッチカチの板です。

これに全体重で鎖骨や股間を押し付けて、何時間と自転車を漕げば、当然のごとく痛みやストレスを感じます。異変を感じないのは逆に正常ではありません。
で、ライダーはクッション性をどこで確保するか? ふかふかサドルカバー? いえ、カバーはずれます。絶対にずれます。
正解はパンツです。
パンツ=クッション
サイクリングパンツ、ショーツはただの服ではありません。ギアです。軍手がただの手袋でないのと同じく。
ただの手袋に滑り止めのボツボツがありますか?

サイクリングパンツは硬いサドルから尻を守る機能付きのギアです。
ここにお金をかけましょう。定番のメーカーものPearl Izumi、Castelli、Assosなどの自転車ウェア専業のパンツを選ぶ。
「ただのスポンジ入りパンツに1万円?!」
しかし、その1万円があなたを地獄から救います。しかも、サドルより当たり外れ、好みと相性のマッチングが容易です。
サドル沼からの脱出
「1万円のサイクリングパンツを履いても、まだ尻の痛み地獄から抜けられません!」
はい、そこでサドルの交換が視野に入ります。しかしながら、サドルのマッチングはウェアの選定より難儀です。
定番?
細身?
穴あき?
エルゴノミックス?
3D?
固め?
カーボン?
皮?
個人的にサドルの選定はシューズのフィッティング並みの難しさです。ぼくのランシューのベストはBROOKS Ghostですが、サドルのそれはBrooksではありません。

サドル選びのポイント
サドル選びで最も重要なのは「幅」です。お尻の大きさではありません。「坐骨の幅」です。くしくもシューズ選びのポイントもまた「幅」ですが。
実際、サドル選びとシューズ選びの手間と手順は非常によく似ます。
大半の人々は自分の足のサイズを答えられるが、幅、ワイズを答えられない。それでシューズを合わそうとします。
が、足は三次元ではありませんか? 三角形の底辺だけで面積を出せます?

尻はより深刻です。自分のヒップサイズを答えられる人はそういません。それを固い板にどかどか押し付けて、「痛い! 合わない!」と嘆くのは必然です。
尻のサイズの測り方
ワイズロードのようなスポーツ自転車専門店には専用のケツサイズ測定システムがあります。
が、座骨幅の自己測定はDIYで可能です。必要なものは
- ダンボール
です。これを床に広げて、座って、凹みを付けます。センターtoセンターが座骨の幅です。
座骨幅プラス20mm
一般的に坐骨幅プラス20mm程度のサドル幅がおすすめサイズです。自転車店のスタッフの第一提案もだいたいこれになります。まずは物理だ。
3Dプリンタ製とかエルゴノミクスはその次です。

サドル幅が狭すぎると、座骨が座面から外れて股間に食い込みます。リアル三角木馬の完成です。
サドル幅が広すぎると、内太ももが擦れます。スポーツバイクのサドルにすこし乗ってから、ママチャリのふかふかサドルに乗ると、これを一発で理解できます。
サドルの形状
サドルの形状はライダーの乗り方やスタイルに寄ります。
骨盤を立てて乗る→後ろが広くて平らなやつ
骨盤を深く倒して前傾する→ショートノーズ、穴あき
最近のトレンドはショートノーズです。サドルの前側を短く詰めて、股間の圧迫を最小限に抑えます。ご想像の通りに男子により恩恵があります。
ポジションとか乗り方
パーツやウェアの購入は素材集めでしかありません。新品のシューズの靴紐はあなたの足にぴったりでしょうか? いえ、そんなことはありません。
自転車のセッティングを正しくするのは靴紐のゆるみや靴下のよじれを直すようなものです。ストレスフリーなスイートスポットがあります。
サドルの高さ
サドルの高さはセッティングの要です。
MTBでは可変シートポストが標準化して、サドル高の調整は過去のものになりましたが、ロードバイクではこれは事前の大事な儀式です。

サドルが高すぎると、ペダルが離れ、踏み込みが浅くなります。で、これを補おうとすると、身体を少し傾けて、骨盤を左右に揺らさずにいられません。ロッキングです。
ご想像の通りにこれはサドルとお尻の摩擦を生み、股擦れの原因になります。
逆にサドルが低すぎると、ペダルが近づき、ケツがサドルにがっつりハマり、圧力が分散しません。膝も過剰に曲がってしまい、間接が悲鳴を上げます。
サドルの角度(チルト)
サドル角の基本は水平です。SpecializedのコマンドポストやAENOMALYスイッチグレードみたいな可変システムはありますが、これらはドロッパーほど普及しません。

が、股間の痺れを感じるなら、ほんの1度か2度、鼻先(ノーズ)を下げましょう。
サドルを固定するヤグラからノーズの先端までが15cmであれば、1度の調整は約2.8mmの変化になります。
変化は微細に見えますが、セッティングの3mmは明確なサイズチェンジです。靴下のよじれや靴擦れも数ミリの世界のことです。砂粒一粒も違和感になりえますし。
実際、ぼくはMTBのハンドルをフィーリングでカットしますが、だいたい73mmとかになります。72mmでなく74mmでなく、奇数で出る。つまり、1mmでフィーリングは変わる。
サドルの距離
サドルの距離、これはサドルからステムやハンドルまでの長さのことです。リーチに関わります。
サドルが後ろに下がりすぎると、ハンドルが遠ざかります。で、腕が伸びて、骨盤が過剰に前傾します。
これらはミリ単位のパズルです。ジグソーパズルは嵌らないところには絶対に嵌りませんが、自転車乗りは融通を利かせて、枠=自転車に嵌れます。

しかし、そのポジションは不自然ですから、尻、膝、手、首に無理が生じます。で、体重をがっちり支える尻が割を食い、悲劇の受難者になります。
クリーム塗る
摩擦、衣擦れの痛みには特効薬があります。その名はシャモアクリームです。長距離ライダーの必需品です。
内容は植物由来の天然油ベースのオーガニックな潤滑剤です。モーガンブルーのやつが定番です。
ちなみにChamoisはヨーロッパの山羊の名前です。英語ではシャミーです。はて、山羊クリーム?
昔のサイクリングパッドやサドルは山羊の革製でした。で、天然革は水洗いでバリバリになります。じゃあ、お手入れに何を使う?
はい、このシャモアクリームの出番です。そもそも山羊革お手入れ用です。全く間違いでない。さて、山羊革に効くものが人間革に効くか?
まあ、そんなに変わりませんか。土台が動物ですし。
あと、サドルメーカーの多くはイタリア系ですが、イタリアは革靴の聖地です。歴史と製法とお手入れが共通するのも必然です。



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